厚生労働省の新型コロナ専門家会合
“感染者 今後も増加続く見込み”

2022年11月30日

新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合が開かれ、全国的に感染者数の増加の速度は比較的緩やかになっているものの、今後も増加が続くと見込まれると指摘しました。北海道など感染者数が増加した地域では亡くなる人の増加も見られていて、免疫を逃れやすいとされる変異ウイルスへの置き換わりや年末に向け、接触機会が増加することによる影響に注意が必要だとしています。

専門家会合は、現在の感染状況について全国的に増加が続いているものの、その速度は比較的緩やかになっていて、この夏の「第7波」のピークを上回った北海道では、直近で減少に転じているとしています。

ただ、首都圏や近畿、九州、沖縄では増加の幅が大きくなっているほか、北海道や長野県など、これまでに感染者数が大きく増加した地域では、亡くなる人の数の増加が見られるとしています。

今後の感染状況の短期的な予測では、地域差や不確実性はあるものの全国的に増加が続くと見込まれるとしていて、ワクチンや感染によって得られた免疫の減少や、より免疫を逃れやすいとされるオミクロン株の「BQ.1」などへの置き換わり、それに年末に向け接触機会が増加することなどによる影響に注意が必要だと指摘しました。

実際に夜間の繁華街の人出は多くの地域で増加傾向で、2021年の同じ時期を上回ったり、コロナが拡大する前の水準まで戻ったりしている地域があるとしています。

このため、専門家会合は、年内にオミクロン株対応のワクチン接種を終えるよう呼びかけ、自分で検査できる抗原検査キットの活用を進めるよう求めました。

さらに忘年会シーズンを迎えることを踏まえ、改めて

▼飲食はできるだけ少人数で、飲食時以外はマスクを着用すること
▼換気の徹底
▼症状があるときは外出を控えることといった
基本的な感染対策の再点検や徹底を求めました。

加藤厚労相 “新型コロナの扱い 見直しに向けた議論を”

加藤厚生労働大臣は、新型コロナ対策を助言する厚生労働省の専門家会合に出席し、新型コロナの感染症法上の扱いについて、季節性インフルエンザと同じ分類への引き下げも含め、見直しに向けた議論を進めるよう要請しました。

この中で加藤厚生労働大臣は「感染症法改正案の衆議院での審議で、新型コロナの感染症法上の位置づけを速やかに検討する規定が追加された。この修正を踏まえ、専門家の意見も聞きながら、最新のエビデンスに基づき、総合的に早期に議論を進めたいと考えている」と述べました。

そのうえで「新型コロナの病原性や感染力、変異の可能性についてどう評価するのか、どう考えていくのか、国民と理解を共有することが必要で、その基盤づくりが求められている。深掘りしたうえで、わかりやすい考え方を示してほしい」と述べ、見直しに向けた議論を進めるよう要請しました。

新規感染者数は全国で前週比1.15倍

厚生労働省の専門家会合で示された資料によりますと、11月29日までの1週間の新規感染者数は全国では前の週と比べて1.15倍と増加が続いています。

一方、人口当たりの感染者数が全国で最も多い状態が続いている北海道では、わずかに減少に転じています。

首都圏の1都3県では

▼東京都が1.21倍
▼神奈川県と埼玉県が1.16倍
▼千葉県が1.28倍と
増加が続いています。

関西では
▼大阪府が1.19倍
▼京都府が1.25倍
▼兵庫県が1.23倍

東海でも
▼愛知県が1.20倍
▼岐阜県が1.15倍
▼三重県が1.21倍と
増加が続いています。

また
▼高知県で1.39倍
▼滋賀県で1.36倍
▼沖縄県で1.33倍など46の都府県で増加している一方
▼北海道では0.92倍とわずかに減少しています。

人口10万当たりの直近1週間の感染者数は
▼北海道が1042.62人と全国で最も多く
▼宮城県が1026.85人
▼長野県が967.23人
▼福島県が925.56人などと
北海道や東北を中心とした地域で多くなっています。

また
▼東京都は539.52人
▼大阪府は387.70人
▼全国では563.62人となっています。

脇田座長「病気の姿自体の評価をしっかり行うべき」

厚生労働省の専門家会合のあと開かれた記者会見で脇田隆字座長は、現在の感染状況をめぐり、新たな変異ウイルスの『BQ.1』が検出される割合が増加していると、推定されていることについて「『BQ.1』の広がりやすさと、免疫をかいくぐる力の両方を合わせた増殖していく力は『BA.5』を少し上回り、感染者数の押し上げ要因になっていく。『BQ.1』に完全に置き換わるというよりは、複数の変異ウイルスが共存する状況が予想され、少し、状況は複雑かもしれない。感染の波がどのくらい高くなるのか考えるのは難しいが『第7波』のようにすんなり下がらないことは予想される」と述べました。

また、加藤厚生労働大臣が、新型コロナの感染症法上の扱いについて、季節性インフルエンザと同じ分類への引き下げも含め、見直しに向けた議論を進めるよう要請したことについて「数回前の会合でリスク評価の考え方をまとめ、ウイルスの伝播性、症状の重症度、医療へのインパクトを検討すべきだという考えを示した。それに沿って検討を進め、意見を取りまとめていきたい」と述べました。

そのうえで議論するべき点について「流行がオミクロン株中心になりかなり病態が変わってきているので、しっかりリスク評価するのが専門家会合の役割だと理解している。見直しに『賛成』か『反対』かではなく、新型コロナがどのような病気なのか、国民に正しく理解してもらえるよう私たちが答えていく。新型コロナは、呼吸器感染症というよりも、心血管疾患の合併症の影響が大きい循環器の病気になっているのではないかという意見もあり、今の病気の姿自体の評価をしっかり行うべきだ」と述べました。