厚生労働省の新型コロナ専門家会合
「新規感染 減少緩やか
しばらく高いレベルで推移か」専門家会合

2022年3月9日

新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合が開かれ、全国の新規感染者数の減少は緩やかで、しばらくの間は高いレベルのまま推移することが予想され、軽症や中等症などの医療体制のひっ迫が続く可能性があると指摘しました。

ワクチンの追加接種を進めるとともに、多くの人が集まる機会が増える3月下旬の3連休や年度末に向け、感染対策の徹底を求めています。

専門家会合は、全国の感染状況についてすべての年代で減少が続いているものの減少のスピードは緩やかで、年代別にみると10代以下が占める割合の増加傾向が続き、高齢者が介護福祉施設で感染するケースが続いていると指摘しました。

そして、感染のレベルが比較的低かった地域で増加がみられるところもあるなど、全国的に少なくともしばらくの間は感染者数が高いレベルのまま推移することが予想されるとしています。

また、重症者数と亡くなる人の数は減少傾向になっているものの、当面、多くの地域で、軽症や中等症の医療体制のひっ迫や、高齢の重症者数の増加によって重症患者の病床使用率の高止まり傾向が続く可能性があるとしています。

今回の感染拡大で亡くなった人は80代以上が占める割合が高く、感染をきっかけに、もともとあった基礎疾患が悪化して亡くなるなど、コロナが直接の死因ではないケースも少なくないとしていて、専門家会合はコロナに感染していても基礎疾患の治療を続けられるようにするとともに、追加接種をさらに加速させることが必要だと指摘しています。

さらに、これまで行事など多くの人が集まる機会が増えると感染が拡大したことから、3月下旬の3連休や卒業式や春休みを迎える年度末に向けて、1つの密でも避け、外出の際には混雑した場所や感染リスクの高い場面を避けることや、不織布マスクの正しい着用や手指の消毒、換気といった感染対策を徹底することが必要だと強調しました。

後藤厚労相「年度末や新年度に向け感染防止策の徹底が必要」

後藤厚生労働大臣は、専門家会合で「多くの地域で新規感染者数の減少が継続しているが、比較的感染レベルが低かった地域では減少傾向が弱く、下げ止まりが見られたりと、感染状況に地域差が見られる。まん延防止等重点措置区域の適用が解除された地域の一部では横ばいや増加傾向となっている」と指摘しました。

そのうえで「これから年度末や新年度に向けて、卒業式や春休み、入学式や花見など、多くの人が集まる行事などが行われ、就職や進学の機会に移動が多くなる季節となる。これまで、このような機会をきっかけに感染が拡大したことから、感染防止策の徹底が必要だ」と述べました。

脇田座長「減少傾向は必ずしも顕著ではない」

厚生労働省の専門家会合のあと開かれた記者会見で、脇田隆字座長は現在の感染状況について「専門家の間では、今の実効再生産数は『0.9』と1を少し切っている程度で、減少傾向は必ずしも顕著ではないという認識だ。去年夏の『第5波』の際にはピークをこえてから減少のスピードが加速していったが、今回はそういう状況ではない。要因としては、小児や高齢者の感染がまだ続いていて、特に大都市圏では高齢者施設でのクラスターの発生が続いていることが考えられる。また、大都市圏は比較的減少傾向が続いているが、地方では下げどまりや再上昇が見られているので、これを感染の再拡大につなげないようなことが重要だ」と話していました。

また、感染の拡大が懸念されているオミクロン株の1つ「BA.2」については「きょうの会合では、全国のデータを使った分析で4月初めには『BA.2』がオミクロン株全体の7割程度まで置き換わる可能性が改めて示された。現在主流の『BA.1』に比べて感染力が1.2倍程度高いということなので、置き換わりが進むと感染者数全体が増加に転じるおそれがある。3月末から4月に向けてしっかり感染状況を見ていくことが求められる」と話していました。

新規感染者数 全国で減少傾向続く

厚生労働省の専門家会合で示された資料によりますと、3月8日までの1週間の新規感染者数は、全国では前の週と比べて0.90倍と減少傾向が続いています。

減少のペースは緩やかな状況が続いていて、まん延防止等重点措置が解除された地域や適用されていない地域を中心に、増加しているところも見られます。

3月6日に重点措置が延長された地域のうち、
首都圏の1都3県では、
▽東京都で0.88倍
▽神奈川県で0.97倍
▽埼玉県で0.90倍
▽千葉県で0.94倍

関西では、
▽大阪府で0.79倍
▽京都府で0.83倍
▽兵庫県で0.90倍

東海では、
▽愛知県で0.88倍
▽岐阜県で0.82倍と横ばいから減少となっています。

また、
▽北海道で0.82倍
▽栃木県で0.81倍
▽群馬県で0.96倍
▽石川県で0.91倍
▽静岡県で0.90倍
▽香川県で0.99倍と横ばいから減少となっています。

ただ、
▽青森県で1.09倍
▽茨城県で1.13倍
▽熊本県で1.11倍と前の週から増加しています。

また3月6日に重点措置が解除された地域では、
▽新潟県で0.82倍
▽長野県で0.99倍
▽三重県で0.93倍
▽和歌山県で0.80倍
▽岡山県で0.93倍
▽広島県で0.93倍
▽福岡県で0.88倍
▽長崎県で0.92倍
▽宮崎県で1.00倍
▽鹿児島県で0.89倍と横ばいから減少になっている一方、
▽福島県で1.18倍
▽高知県で1.08倍
▽佐賀県で1.01倍と前の週より増加しています。

このほか2月に重点措置が解除された地域のうち、
▽山形県で1.06倍
▽島根県で1.15倍
▽山口県で1.13倍
▽沖縄県で1.13倍と増加しているほか、

これまでに重点措置が適用されていない地域でも、
▽福井県で1.23倍
▽愛媛県で1.15倍などと増加しているところがあります。

現在の感染状況を人口10万当たりの直近1週間の感染者数でみると、
▽大阪府が最も多く506.67人
次いで
▽東京都が497.27人
▽奈良県が462.00人
▽神奈川県が451.85人などとなっていて、
▽全国では329.02人となっています。