厚生労働省の新型コロナ専門家会合
“感染者ピークの可能性も 医療ひっ迫続くおそれ”

2022年2月9日

新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合が開かれ、感染は全国的には増加傾向が続いているものの、増加の速度は鈍化していて、今後、感染者数がピークを迎える可能性があると指摘しました。一方で、医療体制のひっ迫は当面続くおそれがあるとして、学校や介護福祉施設などでの対策強化やワクチンの追加接種の加速などを改めて呼びかけました。

専門家会合は、全国の感染状況についてはまだ増加傾向にあるとしたうえで、増加速度の鈍化傾向が続いていることや、まん延防止等重点措置が適用されている地域のうち、広島県、山口県、沖縄県など7つの県で感染者数が減少傾向か上げ止まりとなっていることや、ほかにも減少の兆しが見えている地域があることなどから「今後、新規感染者数がピークを迎える可能性がある」と指摘しました。

ただ、検査体制のひっ迫などで公表されるデータが実態と異なっている可能性に注意が必要だとしました。

また、療養者数や重症者数、それに亡くなる人の数についても増加が続いているとし、オミクロン株の感染が先行して拡大した沖縄県では、現在すべての年代で感染者が減少しているものの、感染者が減り始めてから入院患者が減少に転じるまで2週間程度の遅れがあったと指摘しました。

感染者の年代別の割合は、全国では、20代が減少する一方、10歳未満と60代が増加していて、多くの地域でこのあと若い世代を中心に新規感染者数が減少しても、当面は医療体制のひっ迫が続き、高齢の重症患者が増えて重症病床もひっ迫するおそれがあるとしました。

さらに、救急搬送の現場ではコロナ疑い以外の搬送も増加していて、搬送が困難なケースが2021年夏の「第5波」を上回る状況にあるとして、特に救急医療に大きな負荷がかかっているとしました。

このほか、オミクロン株の一種で感染力がさらに高いと指摘されている「BA.2」と呼ばれる系統のウイルスについては、国内でも検出されていることから、今後、この系統に置き換わり、感染が再び増加に転じる可能性にも注意が必要だとしました。

そして、必要な対策として専門家会合は、オミクロン株の特性を踏まえることの重要性を強調し、

▽感染が広がっている場面とされる学校や保育所、福祉施設、職場などでの対策を進め、

▽高齢者などへのワクチンの追加接種をさらに加速化することや、高齢者以外にも接種の前倒しを行うこと、

▽1つの密でも避け、外出の際には混雑した場所や感染リスクの高い場面を避けるほか、不織布マスクの正しい着用や手指の消毒、換気など、改めて基本的な感染対策を徹底するよう呼びかけました。

脇田座長「高齢者への広がりをいかに抑えるかが重要」

厚生労働省の専門家会合のあと開かれた記者会見で、脇田隆字座長は「今回の感染拡大は、はじめは若者で広がり、子どもや高齢者に広がって、まだ拡大が続いている。特に重症化リスクのある高齢者に広がると、重症者、死亡者数の増加につながるため、高齢者への広がりをいかに抑えていくかが重要になる。高齢者の感染は介護福祉施設で起きているので、こうした施設で高齢者へのワクチンの追加接種を速やかに進め、職員には積極的に検査して、万が一感染した場合は早めの医療を提供することが大事だ。緊急事態宣言などさらに強い措置をとるより、それぞれの場所に応じた対策を徹底し、重症者、死者を減らしていくことが重要だ」と話していました。

また、感染力がさらに高いと指摘される「BA.2」と呼ばれる系統のオミクロン株については「国内では『BA.2』に置き換わっているというデータはまだなく、置き換わりが進んでいる状況ではないという認識だ。会合では今の感染のピークが近づきつつあるかもしれないという議論があったが『BA.2』に置き換わると、再び感染者数が増加するおそれもあるため、監視を行うとともに感染状況の推移を見ていく必要がある」と話していました。

後藤厚労相 “東京・大阪の1000床増設 確実に人材確保”

後藤厚生労働大臣は厚生労働省の専門家会合で「岸田総理大臣と東京都知事・大阪府知事が会談し、国と東京都・大阪府が協力し、相互に補完し合って臨時の医療施設を合計1000床、共同で増設することにした」と述べました。

そのうえで「東京都・大阪府が宿泊療養施設を転換することなどにより設置・運営を担当し、最大の課題である人材確保については国が全面的に支援し、全国の公的・公立病院などから看護師派遣を調整する」と述べ、確実に人材を確保するため、公立の病院などに対し、法律に基づいて看護師などの派遣を要求する考えを明らかにしました。

1週間の新規感染者数 減少の地域あるも ほとんどは拡大続く

厚生労働省の専門家会合で示された資料によりますと、2月8日までの1週間の新規感染者数は、全国では前の週と比べて1.19倍と増加のペースは下がり、減少している地域がある一方、ほとんどの地域ではまだ拡大が続いています。

まん延防止等重点措置が適用されている地域のうち、
▼広島県では2月8日までの1週間の新規感染者数は前の週に比べて0.81倍、
▼山口県は0.85倍、
▼島根県は0.89倍、
▼熊本県は0.85倍、
▼宮崎県は0.86倍、
▼沖縄県は0.67倍と、
減少しているほか、
▼長崎県は0.91倍、
▼群馬県は0.99倍、
▼新潟県と長野県、香川県は1.02倍と、
ほぼ横ばいとなっています。

そのほかの地域では、ペースは下がっているところが多いものの、増加が続いていて、
首都圏の1都3県では、
▼東京都で1.21倍、
▼神奈川県で1.22倍、
▼千葉県で1.37倍、
▼埼玉県で1.38倍、
関西の2府1県では、
▼大阪府と京都府で1.15倍、
▼兵庫県で1.30倍、
東海3県では、
▼愛知県で1.13倍、
▼岐阜県で1.11倍、
▼三重県で1.27倍となっています。

このほか、
▼北海道で1.30倍、
▼青森県で1.18倍、
▼山形県で1.30倍、
▼福島県で1.28倍、
▼茨城県で1.56倍、
▼栃木県で1.31倍、
▼石川県で1.20倍、
▼静岡県で1.17倍、
▼和歌山県で1.13倍、
▼岡山県で1.22倍、
▼福岡県で1.17倍、
▼佐賀県で1.20倍、
▼大分県で1.09倍、
▼鹿児島県で1.06倍となっています。
現在の感染状況を人口10万人当たりの直近1週間の感染者数で見ると、
▼東京都が最も多く925.60人、

次いで、
▼大阪府が871.17人、
▼兵庫県が714.31人、
▼京都府が689.19人、
▼福岡県が642.43人、
などとなっていて、全国では504.89人と過去最多となっています。