厚生労働省の新型コロナ専門家会合
「感染減少も医療体制厳しい局面続く
対策継続を」専門家会合

2021年9月8日

新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合が開かれ、現在の感染状況について、依然高い水準ではあるものの、ほぼすべての地域で減少が続いていると分析しました。その一方で、重症者数は過去最多の規模で医療体制の厳しい状況が継続しているとして、少なくとも一般医療が制限されないレベルまで感染状況を改善するため、必要な対策を続けるよう呼びかけました。

専門家会合は現在の全国の感染状況について、いまだに多くの地域でこれまでにない規模で感染者が発生する事態が続いているとしながら、ほぼすべての地域で減少していると分析しました。

その一方で、重症者数は過去最多の規模が続き、亡くなる人の数もワクチンの効果で過去の感染の波と比べると低い水準になっているものの、増加傾向で医療体制は厳しい局面が続いているとしています。

感染状況を地域別に見ると、東京都では感染者数が減少していますが、入院者数は20代から50代を中心に高止まりの状況で、人工呼吸器などを使用している重症者数は70代以上で増加傾向が見られるなどとしていて、救急医療など一般医療の制限が続いているとしています。

埼玉県、千葉県、神奈川県でも病床の使用率が高止まりし、神奈川県では、夜間の人出が増加に転じているとしています。沖縄県は減少傾向となっているものの、人口当たりの感染者数は全国で最も高い水準で、病床使用率は9割前後と医療体制は厳しい状況が続いているとしています。関西や中京圏でも感染者数は減少しているものの、大阪では夜間の人出の増加が続いていて感染の再拡大に注意が必要だとしています。

現在感染が減少している要因として、専門家会合は、多くの市民が感染対策に協力していること、ワクチン接種が現役世代を含めて進んできていること、緊急事態宣言などが出されている地域での人出の減少、それに医療ひっ迫などの情報が伝えられたことで行動変容が起きたことなどが考えられると分析しています。

しかし、学校の再開や連休もあるため、少なくとも一般の医療が制限されない状態になるまで感染状況を改善するために、対策を継続し、医療機関や保健所への支援の強化を続ける必要があると強調しました。さらに、今後対策の緩和を検討する場合は、感染の再拡大が早期に起きないよう段階的な緩和が必要で、中長期的には冬に向けて厳しい感染状況となる可能性もあり、ワクチン接種を進め、抗体カクテル療法を活用するなどの対策を進めるよう求めています。

そのうえで、専門家会合は引き続き「自分や家族の命を守るために必要な行動を」という表現で、すでにワクチンを接種した人も含めて外出をなるべく控え、混雑した場所など感染リスクが高い場所を避けるなど、個人でできる対策を取るよう呼びかけました。

田村厚労相「重症者数高止まり、死亡者もまだ増加傾向」

田村厚生労働大臣は、専門家会合の冒頭で「感染者数が減少傾向であることは間違いないが、重症者数は高止まりし、亡くなる人もまだ増加傾向にある。学校が始まり人々の行動が変わってきており、まだまだ要注意だ」と述べました。

そのうえで「新型コロナへの対応は長期戦となっており『コロナを中心に、一般医療を止め続ける』ということができなくなっているし、確保できる病床にも限度がある。また冬に大きな感染が起こることもありえるので、どのような形で一般医療とコロナの医療を両立していくのか考えなければならない時期に来ている」と述べました。

新規感染者数 前週比 全国で0.70倍

厚生労働省の専門家会合で示された資料によりますと、新規感染者数は7日までの1週間では、前の週と比べて、全国では0.70倍とほぼすべての地域で減少しています。

緊急事態宣言が出されている地域のうち、
首都圏の1都3県では
▽東京都で0.63倍、
▽埼玉県で0.62倍、
▽神奈川県で0.65倍、
▽千葉県で0.74倍、

関西では
▽大阪府で0.83倍、
▽京都府で0.77倍、
▽兵庫県で0.80倍、
▽滋賀県で0.72倍、

中京圏では
▽愛知県で0.86倍、
▽岐阜県で0.64倍、
▽三重県で0.50倍と
先週まで増加していた大阪府や愛知県などでも減少しています。

また、
▽北海道で0.57倍、
▽宮城県で0.55倍、
▽茨城県で0.85倍、
▽栃木県で0.68倍、
▽群馬県で0.51倍、
▽静岡県で0.60倍、
▽岡山県で0.67倍、
▽広島県で0.63倍、
▽福岡県で0.73倍、
▽沖縄県で0.74倍と
緊急事態宣言が出ているすべての地域で減少傾向となっています。

現在の感染状況を人口10万人当たりの直近1週間の感染者数で見ると、
▽沖縄県が212.11人、
▽大阪府が165.24人、
▽愛知県が144.00人、
▽千葉県が112.35人、
▽東京都が112.19人、
▽神奈川県が109.94人、
▽京都府が103.60人と、
7つの都府県で100人を超えていて、全国では81.38人と100人を下回りました。

感染状況が最も深刻な「ステージ4」の目安の25人を超えているのは、35の都道府県となっています。

主要な繁華街の人出データは

厚生労働省の専門家会合では、東京都医学総合研究所社会健康医学研究センターが、9月5日までの全国の主要な繁華街の人出のデータを示しました。

各自治体の主要な繁華街を対象に個人を特定しない形で得られた携帯電話の位置情報から、職場や自宅以外で15分以上滞在していた人の数を「滞留人口」として、500メートルメッシュで時間ごとに分析しています。

「首都圏」東京は夜間減少に 神奈川で増加 埼玉は昼間増加

東京都では、新宿や渋谷、六本木など7か所の繁華街のデータを基に分析しています。

夜間の滞留人口はお盆明けから2週連続で増加していましたが、直近1週間は減少に転じ、前の週から7.1%の減少となっています。

また、感染のリスクが高いとされる午後10時から深夜0時までの時間帯では前の週から9.3%の減少となっています。

昼間の滞留人口も、直近1週間は前の週から3.7%減少と小幅ながら減少しています。

千葉県では、夜間、昼間ともに滞留人口は直近1週間で減少しています。

神奈川県は、夜間、昼間ともに滞留人口は2週連続で増加し、緊急事態宣言が出される前の水準に戻っています。

埼玉県は夜間の滞留人口は減少を続けていて、2020年の1回目の緊急事態宣言の際の最低値ラインに達しています。

昼間の滞留人口は増加が続いています。

「関西」大阪は増加 兵庫は昼間で増加 京都は夜間減らず

大阪府では夜間、昼間ともに滞留人口はお盆明けから3週連続で増加しています。

宣言前の水準に戻りつつあり、今後の感染状況への影響が懸念されます。

兵庫県では夜間の滞留人口は3週連続で低い水準を維持しています。

昼間は直近1週間で増加し始めています。

京都府では夜間の滞留人口が、第4波の際の最低水準と比べると高い水準で推移していて、直近1週間では横ばいで推移しています。

「九州・沖縄」福岡と沖縄は夜間で減少も昼間は増加

福岡県では夜間の滞留人口が直近1週間で減少に転じています。

一方、昼間は増加しています。

沖縄県では夜間の滞留人口が再び減少に転じ、1回目の緊急事態宣言の際の最低値ラインに到達しています。

一方で、昼間の滞留人口は増加が続いています。

脇田座長「ワクチンの効果はデータからもはっきりしている」

厚生労働省の専門家会合のあと会見した脇田隆字座長は、感染者数が減少傾向になったことについて「東京都などで新規感染者数が急速に減少していて、その原因についてはきょうの議論でもさまざまな意見があった。感染を抑える要因としては、緊急事態宣言が出てから夜間の滞留人口が継続的に低下していたこと、ワクチン接種が進んだことの効果、それに季節的な要因などが考えられる。これまでは飲食店や学校から始まった感染が職場や家庭に入り、その後、病院や高齢者施設に広がることで長引くというパターンがあったが、ワクチン接種が進んだことで高齢者施設や病院でのクラスターが起きにくくなっている。今回は若い人の中心の感染拡大だったという議論があった」と話していました。

また、今後の見通しについて脇田座長は「9月に入り学校が再開したが、大学や専門学校の学生は行動範囲が広いため、大学などの再開は感染拡大の要因につながるとみられる。ワクチンを接種していない人が集まる大学や繁華街などの場所が感染リスクが高い場所となるので、そういう場所で感染を拡大させないことが重要になってくる。デルタ株は感染力が強いので、不織布マスクをしっかり着ける、3密を避ける、それとしっかりと換気をする、外出もなるべく減らすなどの基本的な対策を続けてほしい。また、ワクチンに効果があることはデータからもはっきりしているので、機会を見つけてワクチンを接種していただくことが重要だ」と話していました。