厚生労働省の新型コロナ専門家会合
“東京の感染再拡大 強く懸念”
新型コロナ 専門家会合

2021年6月30日

新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合が開かれ、減少傾向が続いてきた全国の新規感染者数が横ばいから微増になったと分析しました。特に東京都では増加に転じ、感染の再拡大が強く懸念されるとして、飲食の場などでの対策の徹底が必要だと訴えました。

6月30日の専門家会合では、緊急事態宣言が解除された各地の感染状況などについて分析が行われ、減少傾向が続いていた全国の感染状況は横ばいから微増になったとしました。

地域別に見ると、全国で唯一、緊急事態宣言が出されている沖縄県では減少が続いているものの、10万人あたりの感染者数は依然として高い水準にあり、さらに夜間の人出が増加が続いて感染者数が減少するスピードが鈍化していると指摘しました。

一方で、新規感染者数が増加に転じているのが、先週、緊急事態宣言が解除された東京都や埼玉県などで、千葉県や神奈川県も横ばいから微増となっていて、「感染の再拡大が強く懸念される」としています。

特に東京都では、10万人あたりの直近1週間の感染者数が感染状況が最も深刻な「ステージ4」の目安となる、およそ25人となっていて、10代から30代の感染が多く、緊急事態宣言の解除後1週間で夜間の人出が18%増加し、埼玉県、千葉県、神奈川県でも、酒類の提供が可能になった夕方の人出が顕著に増加していると分析しています。

また、感染力が強いと指摘されるインドで確認された変異ウイルス「デルタ株」のクラスターが発生し、この変異ウイルスが占める割合が東京都では3割程度になっていると見られ、今後、置き換わりが進むとして注視する必要があるとしています。

専門家会合は、これまでの緊急事態宣言の解除後にはすぐに人出が増加して感染の再拡大が起きたほか、「デルタ株」の影響でさらに早く拡大する可能性もあり特に東京都で強く懸念されるとしています。

今後必要な対策について専門家会合は、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が解除となった地域の多くで人出が急増していて、夜遅くまで酒の提供を行う飲食店やマスク無しの会食も散見されるとして、飲食の場面への感染対策を強化していくことが重要だと訴えています。

また、ワクチン接種が高齢者を中心に進み、重症者数や死亡者数は減少傾向が続いているが、今後、感染者数が急増すれば重症者用の病床より先に入院病床がひっ迫するという予測もあるとして、「感染拡大の予兆があれば機動的な介入で急拡大を抑えることが必要だ」と強調しました。

そのうえで、感染のリスクが高い場所や感染経路に着目して、戦略的にワクチン接種を進めるとともに、若い世代などへのワクチンに対する懸念や不安を払拭(ふっしょく)することが必要だと指摘しました。

田村厚労相 「滞留人口増 解決しないと」

田村厚生労働大臣は、専門家会合の冒頭「全国の新規感染者数は横ばいから微増に転じていて、大変危惧している。沖縄では減少傾向が継続しているが、夜間の滞留人口が増加し始めている。また、大阪は下げ止まりか、横ばいという状況で、人流が増加しているところが見られる」と説明しました。

一方、東京の状況については「緊急事態宣言解除後の夜間の滞留人口が18%増加し、深夜帯も急増していて、日々の新規感染者数の増加につながっていることが予想される。午後8時以降は飲食店が閉まっているはずにもかかわらず、滞留人口が増えているということを解決しないと、感染拡大は防げないのではないか」と指摘しました。

そのうえで「東京は、若干ではあるが入院者が増え、病床の使用率が上がってきていて、重症者も若干増えてきている。これがどのような状況になるのか、どう対処していくかについて、評価や分析をお願いしたい」と述べました。

脇田座長「拡大スピード早くなることも見込んだ対策を」

専門家会合のあとの記者会見で、脇田隆字座長は「東京都ではすでにある程度感染拡大が進みつつあり、今後の感染状況の予測や人流などのデータや、今までの感染拡大の第3波や第4波の経過を見ても、かなり早い時期に対策を打っていくことが必要ではないかという議論があった。対策を打ってから拡大が抑えられるにはどうしてもある程度の期間が必要になってくる。インドで確認された変異ウイルス『デルタ株』の影響で感染拡大のスピードが早くなることも見込んで対策を考慮していく必要がある」と話しました。

また、ワクチン接種が進む効果で今後は、重症者数が増加しないのではないかという指摘があることについて、脇田座長は「接種しない人は一定数いて、感染が拡大すれば、未接種の高齢者に感染が及び、そこから重症者が出てくる。また、今はワクチン接種が進んでいるので重症病症より先に入院病床がひっ迫してくる可能性がある。入院が必要な人が入院できなくなって重症者が出てくるという悪循環が生じ、結果的に重症者が増えてくるという議論があった。『新規感染者が増えても大丈夫』ということは言えず、どれくらい感染者が増えれば重症者が増えるか予測しつつ、必要な提言をしていきたい」と話しています。