厚生労働省の新型コロナ専門家会合
“全国的に感染拡大” “変異ウイルス監視強化を”
専門家会合

2020年12月22日

新型コロナウイルスの対策について厚生労働省に助言する専門家の会合が開かれ、全国の感染状況について北海道以外では新たな感染者の明らかな減少が見られず、新たな地域での感染拡大も続き、全国的に感染が拡大していると分析しました。また、イギリスで感染が拡大している変異したウイルスについて感染力が強いという指摘があり、関係する国との往来や検査などについて、適切な対応を速やかに行うべきだと指摘しています。

会合では、全国の感染状況について新たな感染者の数は増加が続き、過去最多の水準となっていて、11月以降の対策にもかかわらず、首都圏では東京を中心に増加が続き、関西圏と中部圏では、明らかな減少は見られないとしています。

そして、「大都市圏から波及して新たな地域での感染拡大も続き、全国的に感染が拡大している」と分析しました。

このため、重症者や死亡者の増加が続き、対応を続けている医療機関や保健所の職員がすでに相当に疲弊しているほか、予定された手術や救急の受け入れの制限や、入院調整が困難になるケースなど通常医療への影響も見られていて、医療体制が弱まる年末年始が迫る中で、各地で感染者への迅速な対応や通常の医療との両立が困難な状況が懸念されるとしています。

そのうえで、東京での感染の継続や大都市圏での感染拡大が周辺や地方での感染にも影響しているため、大都市での感染を抑えなければ、地方での感染を抑えることも困難になると警告し、特に東京をはじめとした首都圏では、対策の強化が早急に求められるとしています。

また、年末年始に向けて忘年会や新年会を避けるとともに、年末年始の買い物も混雑を避けるなどして静かに過ごすよう求めています。

このほか、イギリスで感染が拡大している変異したウイルスについては「感染性が高いとの指摘があり、医療への負荷が危惧される」として、国内に持ち込まれることによる感染拡大を防ぐために、関係する国との往来のほか、検査やウイルスの監視体制について、適切な対応を速やかに行うべきだとしています。

脇田隆字 座長は、「感染力が強いウイルスが国内に侵入してしまえば、さらに速いスピードで感染が拡大するおそれがある。現時点でも医療体制がひっ迫している状況で、そのような事態になることは避けなければならず、国内への侵入をなるべく阻止する対策を取るのと同時に、国内に侵入していないか、監視する必要がある」と話しています。

国立感染症研究所 変異ウイルスの監視体制強化を推奨

イギリスで変異したウイルスの感染が拡大していることを受け、12月22日開かれた専門家の会合では国立感染症研究所から文書が示され、監視体制を強化することや必要に応じて、変異したウイルスが見つかっている国からの航空便の運航停止を検討することなどの対策を推奨するとしました。

国立感染症研究所が示した文書では、変異したウイルスの情報がまとめられ、イギリスでの解析では、これまでのウイルスよりも最大で70%、感染しやすくなっている可能性があるとしています。

症状への影響については、現時点で重症化しやすくなるというデータはないものの、変異したウイルスへの感染が確認された人の大部分が重症化の可能性が低い60歳未満のため評価には注意が必要だとしました。

また、ワクチンの有効性への影響は現時点では不明だとしています。

一方、日本の状況については感染しやすさに最も影響を与えると考えられる部分の遺伝子が変異したウイルスは見つかっていないとしましたが、これまでに国内で遺伝子解析ができているのは全体の1割程度に限られていることに注意が必要だと指摘しました。

変異したウイルスが日本に持ち込まれるリスクについては、現在、イギリスからの外国人の入国は原則禁止となっている上に、日本人などの入国も空港での検査と14日間の自宅待機が行われていることからリスクは低いとしました。

ただ、イギリス以外の国でも変異したウイルスが見つかっていることから、そこから持ち込まれるリスクは評価が難しいとしています。

そのうえで、国立感染症研究所が推奨する日本の対応として、変異株の監視体制を強化し、特に過去2週間にイギリスに渡航歴ある感染者については検体を提出してもらい遺伝子を解析すること、イギリスからの入国者の健康観察を行い、必要に応じて指定した施設での停留や航空便の運航停止も検討すること、そしてイギリス以外で変異株が見つかっている地域についても同様の措置を検討することを挙げています。