厚生労働省の新型コロナ専門家会合
コロナ新規感染者数
「一部で増加傾向可能性に注意」専門家会合

2023年3月8日

新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合が開かれ、新規感染者数は全国的には減少傾向で2022年夏の感染拡大前の水準を下回り、今後も横ばいの傾向が続くと見込まれると分析しました。ただ、年度替わりの行事などを通じて一部の地域では3月末にかけて増加傾向に転じる可能性があり、注意が必要だとしています。

専門家会合は、現在の感染状況について全国で減少傾向が続き、感染の第7波が始まる前の2022年夏の水準を下回る状況になっているとしています。

重症者数や亡くなる人の数も減少傾向が続いているとしています。

今後の感染状況について専門家会合は、全国的には横ばいの傾向が続くと見込まれる一方で、年度替わりの行事などを通じて一部の地域では3月末にかけて増加傾向に転じる可能性があるとしています。

また、鳥取県や宮崎県など4つの県では今週は前の週より増加傾向になっていて、この傾向が続くかどうか注意が必要で、さらにより免疫を逃れやすいとされる変異ウイルスの動向を監視し続けることが必要としています。

季節性のインフルエンザについては全国で前の週と比べて若干減少していて、例年の傾向を踏まえると減少傾向が続くと見込まれるものの、引き続き注意が必要だとしています。

専門家会合は、新型コロナの感染症法上の位置づけを「5類」に移行するまでの間も、高齢者や重症化リスクの高い人に適切な医療を提供するための医療体制の強化や重点化に取り組むことが必要だと指摘しています。

また、オミクロン株対応のワクチンの接種を呼びかけるとともに、引き続き、飲食はできるだけ少人数で、大声や長時間の滞在を避け会話の際はマスクを着用する、換気の徹底、症状があるときは外出を控えるといった、基本的な感染対策を徹底するよう呼びかけています。

“一人ひとりが感染症対策 認識する必要ある”

厚生労働省の専門家会合のあと開かれた記者会見で、脇田隆字座長は、専門家会合のメンバーが身近な感染対策についてまとめた新たな見解について、3年前に専門家会合が示した『新しい生活様式』のときから新たに分かってきたことが多いとして、「今後『ウィズコロナ』として、コロナとともにある生活をしていく中で、新たな習慣を専門家として取りまとめようと議論してきた」と述べました。

そのうえで、「コロナだけフォーカスするのではなく、一般的な感染症への対策をしっかり考える必要があることを一人ひとりが認識する必要がある。みずから感染症を予防することで、家族や親しい人たち、それに、社会を感染症から守ることができる。それが、高齢者や重症化リスクのある人に感染を及ぼさない配慮にもなる」と述べました。

また、足元の感染状況について、増加に転じているとは判断していないとしつつ、「増加傾向に今後転じる可能性があるという意見があった。変異ウイルスの状況が変わったり、年度末の年中行事で人と人との接触が増えたりする可能性がある。これまでも感染拡大のきっかけは正月や5月の大型連休、お盆など年中行事と関連していた」と述べ、今後の推移を注意して見ていく必要があるとの考えを示しました。

1週間の新規感染者数 前週比0.81倍 一部で増加も

厚生労働省の専門家会合で示された資料によりますと、7日までの1週間の新規感染者数は全国では前の週と比べて0.81倍と減少傾向が続いている一方、一部の地域では増加に転じています。

首都圏の1都3県では
▽東京都が0.89倍、
▽神奈川県が0.79倍、
▽埼玉県が0.85倍、
▽千葉県が0.87倍と減少が続いています。

関西では、
▽大阪府が0.77倍、
▽京都府が0.80倍、
▽兵庫県が0.69倍、
東海でも
▽愛知県が0.84倍、
▽岐阜県が0.80倍、
▽三重県が0.83倍などと減少しています。

一方で、
▽鳥取県が1.11倍、
▽宮崎県が1.08倍、
▽秋田県と沖縄県が1.03倍と4つの県で増加に転じています。

人口10万当たりの直近1週間の感染者数は
▽鳥取県が140.58人と全国で最も多く、
次いで
▽島根県が126.80人、
▽徳島県が105.62人となっていて、
▽東京都は39.44人、
▽大阪府は47.39人、
そして
▽全国では56.65人となっています。

5類移行後の医療機関などの新たな感染対策

3月8日の専門家会合では、会合のメンバーらがまとめた新型コロナの5類への移行にあわせた、医療機関や高齢者施設での感染対策についての新たな考え方を示した文書が提出されました。

この文書では、新型コロナが5類に移行しても流行が繰り返し起きることが想定されるとして、病気の人や高齢者など、重症化リスクの高い人が集まる医療機関や高齢者施設では、施設内で感染が広がらないよう感染対策を続けることが求められるとしたうえで、必要とされる対策を一問一答の形式で示しています。

このうち、マスクの必要性については、施設の職員も利用者も、日常的にマスクを着用することが望ましいとする一方、個室や、個人のベッドの上などでは、マスクを外して過ごすこともできるとしています。

また、訪問者との面会については、面会を制限することで、患者や入居者の体や心などが衰えてしまう可能性があると指摘し、家族などの訪問にあたっては、発熱やせきなどの症状がないことを確認したり、マスクを着用して、決められた場所で面会したりといった感染対策をとったうえで、過度な制限をかけないよう求めています。

また、医療や介護現場のスタッフが、旅行や外食を制限する必要があるかどうかについては、日常の感染リスクは家庭内を含め多様であることから、「制限すべきではない」としています。

そして、
▽感染が疑われる症状があれば仕事を休むこと
▽業務中でも疑わしいと感じたときは現場を離れ、症状と体温を確認すること
▽症状が続く間は、たとえ検査が陰性でも仕事を休むべきだとしています。

このほか文書では、
▽施設内での換気の方法
▽感染者の診療やケアを行う際の対策
▽感染者が確認された場合に、周囲の患者や入居者の検査や、隔離などのゾーニングをどの程度行うべきか、
などといった対策について、それぞれの考え方や具体策を含めて整理しています。

文書をまとめた1人で、専門家会合の脇田隆字座長は「文書は現場で疑問が生じやすい場面を想定して作成した。すぐに実行できる感染対策もあるので、今後も対策を継続するための指針として活用してほしい」と話しています。