【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(7月11日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる11日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、およびロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

キーウの小児病院で治療受けていた男の子1人が死亡

ロシア軍によるウクライナへの激しい攻撃が続いていて、ウクライナのリャシュコ保健相は、8日に行われた大規模なミサイル攻撃により、首都キーウの小児病院で治療を受けていた男の子1人が死亡したと発表しました。

ロシア 政府批判的な英語メディアを “好ましからざる団体”指定

国内でも締めつけを強化するロシアは10日、最高検察庁がロシアの有力な英語メディア「モスクワ・タイムズ」を「好ましからざる団体」に指定したと発表しました。

最高検察庁はその理由について「ロシア政府の信頼を失墜させることを目的としている」とした上で、「特別軍事作戦を実施する政府の信用を落としてきた」としています。

政府に批判的なことで知られる「モスクワ・タイムズ」は声明を発表し今後、ロシア国内での活動の禁止や記者が収監されるおそれがあるとした上で、「われわれは沈黙させられることを拒否する」と非難しています。

NATO首脳会議 最終日へ ロシア・中国など抑止へ連携深められるか

アメリカの首都ワシントンで3日間の日程で開かれているNATOの首脳会議は11日、最終日を迎え、日本の岸田総理大臣やウクライナのゼレンスキー大統領も参加して、協議が行われる予定です。

前日の10日の協議で加盟国の首脳らが採択した首脳宣言では、中国について、「ロシアによる侵攻の決定的に重要な支援者だ」と批判したうえで、中国に対し、軍事目的にも転用できる部品や原材料などをロシアに供給しないよう求めました。

また、北朝鮮とイランについては、「ロシアへ直接、弾薬や無人機などの軍事支援を行っており、ロシアによる侵攻をあおっている」として、厳しく非難しました。

最終日の協議では、ロシアや中国、北朝鮮、イランの行動を抑止するために、ヨーロッパとインド太平洋地域の連携を深めることができるかが焦点です。

ロシア側 “ウクライナの消滅かNATOの消滅かのいずれかになる”

NATOの首脳会議で10日に採択された首脳宣言では、NATO加盟に向けたウクライナの道筋は後戻りできないものだとして、将来の加盟を支持する立場を改めて示しました。

これに対して、ロシアの安全保障会議のメドベージェフ副議長はSNSに、「ウクライナの消滅かNATOの消滅かのいずれかになるよう、われわれはあらゆることをしなくてはならない」と述べ、強く反発しました。

中国側 “偏見 中傷 挑発に満ちている”

NATOの首脳宣言について、中国外務省の林剣報道官は11日の記者会見で、「アジア太平洋地域の緊張をあおるもので、冷戦時代の思考と好戦的なことばに満ちている。中国に言及した内容は偏見や中傷、そして挑発に満ちている」と述べて強く反発し、NATO側に抗議したことを明らかにしました。

その上で、「アメリカ側が何の根拠もなく『中国がロシアの防衛産業を支援している』という虚偽の情報を流し続けていることに、断固として反対する」と述べて、中国とロシアの間の貿易は通常のものだと主張しました。

攻撃受けたキーウの小児病院 2日後もがれきの撤去作業続く

ロシア軍が8日、ウクライナ各地に行った大規模なミサイル攻撃で首都キーウの小児病院では、2人が死亡しました。

攻撃から2日がたった10日、現場ではミサイルが直撃したとみられ、元の形が分からないほど大きく崩れた建物の周辺で重機を使ってがれきの撤去作業が行われていました。

水の運搬や資材の手配などのボランティア活動に参加した、生後6か月と、3歳の子どもがいるという母親は「数か月前、子どもと一緒にこの病院にいたので、本当に恐ろしいです。ロシアは子どもがここにいるということを知っていて、わざと攻撃したに違いない」としてロシアを強く非難しました。

攻撃を受けた病院に隣接する別の小児病院の中に入ると、入り口付近や廊下に医療機器が並べられたり、段ボールが積み上げられたりして、片づけ作業が進められていました。

病院の関係者によりますと、病棟の機能は失われ、患者の一部は他の病院に移されているということです。

また、手術室では、爆風や破片など攻撃の影響で窓のガラスが割れたため、木の板で覆う処置がとられていたほか、手術用の医療機器が被害の少なかった別の部屋などに移されていました。

病院の関係者によりますと、攻撃があった当時、手術室では赤ちゃんを含む子どもたちの手術が行われていたということです。

この病院の代表の医師は、「2日前に起こったことは私たちにとって惨事だ。どの程度の被害かはわからない」と述べ、復旧に向けた調査を進めていると話していました。

小児病院に対する攻撃をめぐってロシア側は、ロシア軍の攻撃によるものではないと主張しているのに対し、ウクライナ側は戦争犯罪だと非難を強めているほか、9日に開かれた国連安全保障理事会の緊急会合でも、各国から民間施設を狙った攻撃で国際人道法違反だとロシアを批判する声が相次いでいます。

NATO 首脳宣言を採択 結束強調とともにウクライナ支援強化を確認

ワシントンで開かれているNATO=北大西洋条約機構の首脳会議は10日、加盟国の首脳らによる協議が行われ、首脳宣言を採択しました。

この中で、「われわれは個人の自由や人権、民主主義、法による支配という価値観を共有することで結ばれている」として、ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、NATOは結束していると強調しました。

また、首脳らは、NATO加盟に向けたウクライナの道筋は後戻りできないものだとして、将来の加盟を支持する立場を改めて示しました。

ウクライナ支援をめぐっては、
▽NATOの役割を強化し、各国の兵器の供与やウクライナ軍兵士の訓練の調整を行うことや、
▽ロシアによる侵攻開始後NATO加盟国が行ってきた年間400億ユーロ、日本円にして、7兆円規模の軍事支援を来年も維持することで合意しました。

さらに、ウクライナの戦場で弾薬が不足してきたことなどを踏まえ、防衛産業の強化に取り組むことでも一致しました。

一方、7月8日、ウクライナの首都キーウの小児病院などが攻撃を受けたことについて、「われわれは最も強い言葉でロシアによる攻撃を非難する」として、ロシアに対し、速やかな戦闘の停止を求めました。

記者会見したNATOのストルテンベルグ事務総長は、「われわれの支援がより確かなもので、永続的であればあるほど、戦争を早く終わらせることができる」と述べ、ウクライナ支援の重要性を強調しました。

アメリカ オランダ デンマーク F16戦闘機供与を発表

アメリカとオランダ、デンマークの3か国の首脳は10日、共同声明を出し、ウクライナへの軍事支援の一環として、アメリカ製のF16戦闘機を供与すると発表しました。

声明によりますと、供与されるF16は、デンマークとオランダから移送手続きの途中で、この夏には、運用が開始されるとしています。F16についてことし1月の時点でオランダは少なくとも18機、デンマークは19機を供与すると表明していました。

F16は、ロシアによる侵攻が続くウクライナが制空権の確保のため欧米各国に供与を求めてきたもので、欧米の一部の国では、ウクライナ軍のパイロットなどへの訓練が進められています。

声明の中で、アメリカ、オランダ、デンマークの3か国の首脳は「われわれは、ロシアの侵略に対するウクライナの防衛力を支援するため、ともに調整を続けていく」としています。

ゼレンスキー大統領 “残忍なロシアからウクライナを守る助け”

アメリカとオランダ、デンマークの3か国がウクライナへアメリカ製のF16戦闘機を供与すると発表したことについて、ウクライナのゼレンスキー大統領は10日、「F16でウクライナ空軍を強化するという目標を達成するための具体的な手段を取ったことに感謝する」とSNSに投稿しました。

そのうえで、8日に起きたロシアによる首都キーウの小児病院への攻撃に触れ、「残忍なロシアの攻撃からウクライナの人々をさらに守るための助けになると確信している」として今回の支援の意義を強調しています。

そして、「ウクライナの防空能力を強化するため引き続きワシントンで取り組んでいく」として各国からのさらなる支援に期待を寄せています。

ノルウェーもウクライナにF16戦闘機を6機供与へ

ノルウェーのストーレ首相は10日、ウクライナにF16戦闘機を6機供与することを明らかにし、年内に供与を始める計画だとしました。

ストーレ首相は、「ロシアによる空からの攻撃はウクライナ国民に大きな苦痛と大規模な損害をもたらしている。防空システムと組み合わせることで、F16はウクライナの人たちを守る上で極めて重要な役割を果たすだろう」としています。