体操 パリ五輪代表に宮田笙子 岸里奈など5人内定 杉原は逃す

パリオリンピックの代表選考を兼ねた体操のNHK杯は18日、女子の2日目の競技が行われ、宮田笙子選手が3連覇を果たしました。
この結果、宮田選手や、2位の岸里奈選手、3位の岡村真選手、4位の中村遥香選手、それに団体総合での貢献が期待される牛奥小羽選手の5人がパリオリンピックの代表に内定しました。
5人はいずれも初めてのオリンピック出場となります。

記事後半では5人の選手を詳しく紹介しています。

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宮田笙子 体操NHK杯 3連覇 五輪代表5人は全員初

体操のNHK杯は4月の全日本選手権の得点を持ち点に男女ともに2日間の演技で争われ、このうち女子は個人総合の上位4人と、団体総合で得点に貢献できる1人の合わせて5人がパリオリンピックの代表に内定します。

群馬県高崎市で行われている大会は18日、女子の2日目の競技が行われました。左足の太ももを痛めながらも16日の1日目を終えてトップに立った宮田選手は最初の得意の跳馬で高難度の「ユルチェンコ2回ひねり」を着地まできれいに決め、この種目トップの14.300をマークしました。

続く段違い平行棒は13.733、3種目目の平均台も13.300とケガの影響を感じさせない安定した演技を見せました。

最後のゆかは1日目に最後の着地で失敗がありましたが、18日は大きなミスなくまとめて12.966と、全日本選手権との合計得点を217.162として大会3連覇を果たしました。

▽2位は16歳の岸選手
▽3位は18歳の岡村真選手
▽4位は16歳の中村遥香選手で、
優勝した宮田選手とともにパリオリンピックの代表に内定しました。

このほか、団体総合で貢献が期待される19歳の牛奥小羽選手が代表に内定しました。5人の平均年齢は17.6歳で、いずれも初めてのオリンピック出場と、フレッシュな顔ぶれとなります。

5人目は牛奥小羽選手

3大会連続のオリンピック出場を目指した杉原愛子選手は5位で、代表内定を逃しました。

《女子 最終結果》

▽1.宮田 笙子 217.162 ★内定
▽2.岸 里奈 215.526 ★内定
▽3.岡村 真 213.994 ★内定
▽4.中村 遥香 212.130 ★内定
▽5.杉原 愛子 210.359
▽6.畠田 千愛 209.295
▽7.相馬 生 208.862
▽8.山田 千遥 208.195
▽9.牛奥 小羽 204.993 ★内定
▽10.棟田 琳音 204.830

《代表内定選手 談話》

宮田笙子「痛みある中 自分でもよく頑張ったと思う」

3連覇を果たし、パリオリンピックの代表に内定した宮田笙子選手は「3連覇できてうれしい気持ちはあるが、練習で痛めた左足の太ももにはやっぱり痛みがあり、全日本選手権と比べて演技ができなかったので悔しいが、自分でもよく頑張ったと思う」と話しました。
そして、パリ大会に向けて「思い切った演技ができるよう練習をしっかりして団体のメダルにつなげたい。一つ一つ積み重ねれば結果はついてくると思う。練習していく中で信頼関係をしっかり築いてオリンピックを迎えられれば」と話していました。

岸里奈「2位をキープできたのはよかった」

初めてのオリンピック出場を決めた16歳の岸里奈選手は「ほっとしている。平均台でミスがあって、そのあとのゆかも少し失敗があったのですごく悔しいが、最後まで粘り強く演技できて2位をキープできたのはよかった」と話し、表情を緩めました。
パリオリンピックに向けては「代表に入ったことで自分が日本に必要とされる選手になってきているという実感もわいてきた。団体のメダルを獲得することが1番の目標だが、その中で自分の演技を世界にアピールして個人のメダルも見えてきたらいいかなと思う」と話していました。

岡村真「美しい体操で世界を魅了したい」

得意の平均台でトップの得点をマークするなど、全体3位で代表入りを決めた18歳の岡村真選手は「先月の全日本選手権からきょうまで大きなミスがなく、自信になったしオリンピックの切符をつかむことができて今はほっとしている」と振り返りました。パリオリンピックに向けては「代表ということで責任もあると思うが、それを力に変えていけたらと思う。団体でメダルを取ることを目標にしたい。持ち味の手足の先まできれいな美しい体操で世界を魅了したい」と意気込んでいました。

中村遥香「いい誕生日も 悔しい気持ちのほうが強い」

16歳の誕生日に代表入りを決めた中村遥香選手は「代表に入るという目標を達成できたという意味では、いい誕生日になったと思うが、演技はうまくいかないことの方が多かったので、悔しい気持ちのほうが強い」と話しました。
パリオリンピックに向けては「きょうと同じような緊張感の中で演技をすることになると思うので今回緊張してできなかったところをしっかり修正したい。得意の段違い平行棒と平均台で自分らしい演技をして団体に貢献して、なおかつ個人でも世界で戦えるよう準備したい」と意気込みを示しました。

牛奥小羽「びっくりが大きすぎて ふわふわしている」

初めて代表に選ばれた牛奥小羽選手は「ねらってはいたが、びっくりが大きすぎてちょっとふわふわしている。オリンピックは、手の届かないところだと思っていたが、自分がやっとここまできたんだと思った」と笑顔で話していました。
そして、パリオリンピックに向けて「高さのある跳躍や足先のきれいさなどを磨いて、誰が見てもきれいな演技だと思ってもらえるよう挑めたらいいと思う。任されている跳馬で自分のやるべきことをしっかりとやって種目別で決勝に進みたい」と話していました。

《代表内定選手 紹介》

◇宮田笙子(みやた・しょうこ)選手

宮田笙子選手は、京都府出身の19歳。脚力と瞬発力を生かしたダイナミックな演技が持ち味で、得意の跳馬では高難度の「ユルチェンコ2回ひねり」、ゆかではH難度の大技で伸身2回宙返り1回ひねりの「チュソビチナ」など難度の高い技もこなします。

おととし、高校生では7年ぶりにNHK杯で優勝を果たし、初めて世界選手権の代表に選ばれると、種目別の平均台で銅メダルを獲得したほか、個人総合で8位に入りました。去年は全日本選手権のおよそ1か月前に右足の疲労骨折が判明し、けがに苦しみましたが、NHK杯では安定感のある演技を見せて2連覇を達成しました。

ことしは全日本選手権で初優勝を果たすなど初のオリンピック出場に向け、エースとしての力を示しています。宮田選手は去年の春、高校を卒業し、体操の強豪・順天堂大学に通っています。

◇岸里奈(きし・りな)選手

岸里奈選手は、埼玉県出身の16歳、高校2年生です。身長1メートル49センチと小柄ながら、柔軟性と脚力を武器に難度の高い技をこなします。得意種目の「ゆか」では、2回宙返り2回ひねりのH難度「シリバス」に挑戦し、技を磨いてきました。オリンピックの個人種目で日本の女子選手として初の銅メダルを獲得した村上茉愛さんが得意としていた大技です。

去年のNHK杯ではこの「シリバス」を着地までしっかり決めて世界選手権の代表入りを果たし、個人総合で日本勢トップの11位に入りました。

ことしは、アトランタオリンピック代表の豊島リサコーチと二人三脚で持ち味の手足の先まで伸びた「美しい体操」に磨きをかけてきました。4月の全日本選手権では、予選でミスが出ながらも決勝で得点を伸ばして2位に入り、初めてのオリンピック代表に近づきました。

◇岡村真(おかむら・まな)選手

岡村真選手は、三重県出身の18歳、大学1年生です。小学1年生で体操を始め、つま先まで伸びた美しい体操を持ち味で、芸術性の高さも評価されています。

去年、中国・杭州で開かれたアジア大会では、種目別の平均台で日本勢初の金メダル、個人総合で銀メダルを獲得しました。

4月の全日本選手権では得意の平均台で全体トップの得点をマークするなど、3位と僅か0.6余りの得点差で4位に入りました。

◇中村遥香(なかむら・はるか)選手

中村遥香選手は、大阪府出身の16歳、高校1年生です。1メートル43センチと小柄ながら、足のつま先まで伸びた美しい演技と技の正確性を持ち味に去年の世界ジュニア選手権の個人総合で金メダルを獲得しました。

中でも得意種目の「段違い平行棒」で、D難度の技を世界で初めて成功させて「ナカムラ」の名がついています。

4月の全日本選手権の決勝では、平均台で3位の得点をマークするなど4種目で安定した演技を見せ、3位に入りました。

◇牛奥小羽(うしおく・こはね)選手

牛奥小羽選手は、愛知県小牧市出身の19歳。体操の強豪、日本体育大学の2年生です。脚力の強さを武器に跳馬を得意種目とし、高さのある跳躍で去年、中国・杭州で開かれたアジア大会で、団体の3大会ぶりの銀メダル獲得に貢献しました。

4月の全日本選手権では予選、決勝ともに跳馬で14点台をマークしました。

メンバー全員が10代 メダル獲得の鍵は

体操女子の代表メンバーは全員が10代で、初めてのオリンピック出場、日本はこのメンバーで、60年ぶりの団体のメダル獲得を目指します。

日本体操協会の田中光女子強化本部長は、「若い力が入ったという印象を持っている。中村選手や岡村選手がミスを最小限に食い止めて力を出し切れたのが大きい。このメンバーであれば、メダル獲得ラインの合計165点を超える点数を獲得できる」とメンバーを評価しました。

そして、団体のメダル獲得の鍵になるというのが全日本選手権、NHK杯と一度もトップを譲らなかった宮田選手です。

田中 女子強化本部長
「けがで厳しい状況だと聞いていたが、ここできちんとやりきって最後トップ通過だというのは力がある選手だ。日本にとって宮田選手が機能してくれないとオリンピックで戦えない」

1週間前に左足を痛め、最後まで演技を通せるか不安を抱えて臨んだ宮田選手。それでも今大会をパリ大会の団体決勝と想定し臨んだといいます。

「エースとしてみんなのために演技をする」と落ち着いて自分の演技を出し切り、0.1でも得点を積み上げるよう意識したことが、他の選手を圧倒する演技につながったと、宮田選手は振り返ります。

宮田選手
「きれいな体操をする選手が、メダルを狙えると思う。19歳の私が最年長で経験が多い方だと思うが、その中で演技で信頼を得ていく、そういう練習を一緒に積み上げていきたい」

帯同補欠に選ばれた杉原愛子選手

そして、田中女子強化本部長が期待を寄せるのが帯同補欠に選ばれた杉原愛子選手です。10代の選手が多く国際大会の経験の少ないからこそ、杉原選手の役割は大きいといいます。

田中 女子強化本部長
「オリンピックも2度経験しているし、十分実力がある。みんなを引っ張っていってもらいたいし、観客に手を振ったり、審判や観客へのアピールもうまい。まだ日本に足りないところなので、そういったところで彼女が引っ張ってくれるんじゃないかと思う」

一歩届かなかった杉原愛子 再び五輪目指した理由

3大会連続のオリンピック出場を目指したものの、あと一歩届かなかった杉原愛子選手。おととし全日本種目別選手権を最後に競技の第一線から退き、去年再びパリオリンピックを目指して現役復帰しました。

その理由を尋ねると「体操をもっとメジャースポーツにしたいという思いがあるので、オリンピックという舞台で体操の魅力をたくさんの人に知ってもらい、盛り上げたい」と話した杉原選手。

練習に取り組みながら審判として大会に参加したほか、去年には、体操の普及活動に取り組む会社をみずから立ち上げました。代表選考に向けた過酷な練習に加え、社長業に、審判と3足のわらじを履いて臨んだNHK杯の1週間前には疲労から、発熱もあったといいます。

それでも、女子の1日目。持ち味の美しい体操を見せて5位につけました。

「自分のやってきたことを全力で出し切って心の底から楽しんで体操をすれば魅力も伝わる」と18日の大一番に臨んだ杉原選手。

2種目目の段違い平行棒で落下するミスが出たものの、最後のゆかは、手足の先まで伸びた姿勢に躍動感のある動きを見せたほか、後半に曲調が変わると観客の手拍子に合わせて華麗な演技を披露し、会場を沸かせていました。

終始、笑顔で、心の底から体操を楽しんでいる様子だった杉原選手。

惜しくも代表には選ばれませんでしたが、大会後には「結果としては、代表に選ばれなかったが、この舞台で一緒に戦えたのは誇りに思う。そこまでの道のりが私の中では大切だったので人事を尽くしてきたからこそ自分の演技に対して悔いはない」と涙ながらに話しました。

そして、パリオリンピックに補欠として帯同することが決まったことについて、こう力強く話しました。

「代表選手が一番いいパフォーマンスができるよう、メンタル面も含めてサポートできるよう自分の役割を果たしたい」