「病気のわが子の隣で」“付き添い入院” 病院の4割超が依頼

「子どものケアに追われて食事や睡眠もままならない」

入院中の子どもに親が付き添う「付き添い入院」で、親が厳しい環境での生活を強いられるケースが指摘されています。

こども家庭庁などが全国の医療機関を対象に調査を行ったところ、子どもが入院する際、家族に付き添いを求めている医療機関がおよそ4割にのぼることがわかりました。

意向に関わらず付き添い求められることも

「付き添い入院」をめぐっては、親の意向にかかわらず医療機関から付き添いを求められるケースがあるほか、子どものケアに追われて親が十分に食事や睡眠をとれないことなどが課題として指摘されています。

しかし、これまで付き添いに関する病院側の方針や取り組みなどは把握されていなかったことから、こども家庭庁などが実態を把握し改善につなげるため初めて調査しました。

調査は子どもの入院に対応している全国751の医療機関のうち、およそ半数となる349の施設から回答を得ました。

付き添いの申請書

それによりますと、子どもが入院する際の宿泊を伴う付き添いについて、「病状などを勘案した上で基本的に付き添いをお願いしている」と回答した医療機関が43.6%と最も多くなり、付き添いを依頼する条件は、
▼「入院する子どもが特定の年齢・月齢以下であること」が79%を占めました。

また、付き添いの環境を聞いたところ、
▼家族が病室で寝る場合、簡易ベッドなどの寝具を貸与しているのは85.2%にのぼりましたが、
▼食事はコンビニでの調達が80.9%で最も多く、家族向けに病院食を提供しているのは29%にとどまりました。

一方で、家族を支援するため外部の団体などと連携して食事を提供したり、家族が利用できる浴室を用意したりしている医療機関もあります。

こども家庭庁などはこうした取り組みの事例について自治体や医療機関に周知し、子どもの入院環境の改善につなげたいとしています。

【子どもが入院する際の付き添いについての方針】

子どもが入院する際の付き添いについて
▽「子どもの病状などを勘案したうえで、基本的に付き添いをお願いしている」が43.6%、
▽「付き添いの希望があった場合、原則すべての子どもに対して付き添いを許可している」が29.8%、
▽「付き添いの希望があった場合、特定の条件の子どもについては付き添いを許可している」が20.3%、
▽「基本的に付き添いは許可していない」が6.3%でした。

付き添いを依頼する条件(複数回答)
▽「特定の年齢・月齢以下であること」が79%
▽「医療的ケア児であること」が50.3%
▽「特定の疾患であること」が26.6%などとなっています。

一方で、家族が付き添うことが難しく、子どもの安全確保などが困難なために、結果的に入院に至らなかったり、ほかの医療機関への転院の調整するなどの対応をとったことがある医療機関は36.1%でした。

【睡眠環境】

左側にあるのが簡易ベッド

家族が病室内で就寝する場合の簡易ベッドなどの寝具の貸し出しについて
▽「行っている」が85.2%、
▽「行っていない」が14.8%でした。

寝具の貸し出しがない場合の家族の就寝方法(複数回答)
▽「子どもと同じベッドで寝ている」が74.5%、
▽「病室のソファーなど」が63.8%、
▽「家族が持ち込んだ簡易ベッド・寝袋など」が21.3%などとなっています。

【食事環境】

“付き添い入院”中の食事の様子

付き添う家族の食事環境について(複数回答)
▽「コンビニ」が80.9%で最も多く、
▽「レストラン・食堂」が44.8%、
▽「病院食」が29%、
▽「デリバリー」が7.1%、
▽「外部団体による支援」が4%で、
▽「その他」も32.1%となどとなっています。

 「その他」としては、家族からの差し入れや自宅からの持ち込み、キッチンカーなどの回答があったということです。

支援団体提供の弁当

【理想と課題・求める支援】

医療機関側の付き添いの理想の形について
▽「特定の条件の子どもについては、原則家族による付き添いをしてもらう形」が最も多く40.1%、
▽「原則すべての子どもに対して家族による付き添いをしてもらう形」が22.4%、
▽「希望制をとり、医療機関としての意向や方向性は示さない形」が20.9%、
▽「原則すべての子どもに対して医療機関の職員がすべての看護・ケアを行う形」が7.1%などとなっています。

「原則すべての子どもに対して家族による付き添いをしてもらう形」が理想である理由については、「子どもの精神的不安の解消を重視するため」が最も多くなりました。

付き添いの環境に関して医療機関が抱える課題や問題点として(複数回答)
▽「看護師・保育士などの専門職の人員不足」が80.5%、
▽「専門職以外の職種の人員不足」が36.8%、
▽「付き添いの支援を行うと採算が取れない」が14.9%、
▽「小児病棟自体が縮小傾向にあり、付き添いを支援する体制がとれない」が13.6%、
▽「医療機関の経営陣の理解が得られない」が7.4%などとなっています。

付き添う親の負担軽減に向けては、厚生労働省はことし6月の診療報酬改定で、病棟に保育士を2人以上配置したり、夜間を含め看護補助者を配置したりした場合に報酬を加算することにしているほか、付き添う親にベッドの貸し出しや食事の提供を行うなど、配慮を医療機関に求めています。

入院中の子どもへの付き添いに関する国の調査の検討委員を務め、子どもに付き添う親を支援する活動をしている支援団体の理事長は次のように話しています。

「NPO法人キープ・ママ・スマイリング」光原ゆき理事長
「付き添い入院についてこれまで把握できていなかった病院側の実態が定量的に把握できたことが1番大きなポイントだと思う。付き添う家族の環境が厳しいということを親側の実態だけで話しても対策の検討が難しかったと思うが、病院側の事情も見えたことで改善に向けて前に進む大きな一歩になると思う」

そのうえで、今後に向けては。

「親の付き添い環境がよくなるということは子どもの療養環境がよくなることにもつながると思うので、子どもを中心にその子どもが元気になるよう、国、病院、家族、支援団体が1つのチームとして改善に向けた取り組みを進めていきたい」