“勝負の時” パリオリンピックでメダル獲得を 三浦龍司

「勝負の時」

陸上男子3000メートル障害の日本記録保持者、三浦龍司選手。世界の舞台で、この種目における日本の歴史を次々と塗り替えている22歳です。大学2年生の19歳で出場した東京オリンピックでは日本選手初の入賞となる7位に入りました。
この春、大学を卒業した三浦選手は、2回目のオリンピックとなるパリ大会でのメダル獲得を目指して新たな1歩を踏み出しました。
(スポーツニュース部 記者 古堅厚人)

走力支える強じんなバネ

三浦選手が持つ、男子3000メートル障害の日本記録は8分9秒91。

3年前、19歳の時に初めて日本記録を更新すると去年までに4回、記録を塗り替えてきました。

細身の三浦選手の走りを支えているのが、強じんなバネです。

そのバネと股関節の可動域の広さによってストライドの広いダイナミックな走りが生まれています。

跳ぶための技術に特長が

三浦選手の特長は障害物を跳ぶ技術にあります。

3000メートル障害はスピードを出しながら90センチを超える障害を28回、水ごうを7回跳び越える過酷なレース。一般的に3000メートル障害では、障害の手前では走るスピードが落ちます。

しかし、三浦選手は持ち味のバネを生かすことで手前で加速しても、障害を跳び越えることができるといいます。

かつてはストライドとピッチを小刻みにして跳んでいましたが、その分のタイムロスが課題だったということで、順天堂大学に入ったあと、監督の助言を受けて跳び方を変えました。

障害との距離感をつかんで走りながら歩幅を合わせる感覚を磨いてきたといいます。

三浦龍司 選手
「障害に近づいてくると、やっぱりみんな減速するので逆に加速できると小さな差だが前に出られる優位性があり、いい循環になってくる。心理的な作用の面なども含めて加速するというやり方はよかった」

今春 新しい一歩踏み出す

箱根駅伝 1区で出場(2024年1月)

大学の陸上競技部では3000メートル障害だけでなく駅伝などにも出場し、4年生の時にはキャプテンを務めた三浦選手。

この春、大学を卒業して実業団に進みました。

節目の年に迎えるパリオリンピックではメダル獲得を果たし、新たな歴史を刻むことが目標です。

「大学を卒業して実業団の選手としてやっていく 第一歩の年だと思う。新しい陸上人生が始まる一歩目」

立ちはだかる強力な海外勢

ライバルとなるのは強力な海外勢です。

去年の世界選手権ではその高い壁に跳ね返されました。

世界選手権 男子3000m障害決勝(2023年8月)

決勝では残り2周まで上位集団につけていましたが、そこからペースを上げた海外選手に離されました。

世界選手権は6位入賞(2023年8月)

ゴール直前でも1人にかわされ6位。

ラストスパートに大きな差を感じたといいます。

「ラストのスピードやキレの部分が足りなかった。ラスト1000メートルの課題を克服して、メダルというところを目標にしていく」

目標のメダル獲得に向けて

そこでこの冬、三浦選手が取り組んだのが長距離の走り込みです。

月に600キロから700キロ走り込み、海外選手の揺さぶりに対応するためのスタミナを強化しました。

ラストスパートのキレにつなげようと瞬発力や体幹を鍛えるトレーニングにも力を入れてきました。

「基礎的なフィジカル的な部分を強化するところに焦点を当てている。ラストの爆発的な動きのヒントを得られるような何かを探している」

パリ五輪は“勝負の時”

ラストスパートに磨きをかけて「自分が納得できるような結果を出す」と挑むパリオリンピック。

三浦選手が新たな歴史を刻む絶好の舞台となりそうです。

「新たなステージの1歩目だが、勝負の時でもあると思うので、ここで1つ、今までにない収穫と成果を残していきたい。経験も積んでさまざまな練習も取り組みもしてきた中で迎えるので、自信を持って臨めるようにしたいし、あとは本当にやるだけかなと思っている」

◇◇取材こぼれ話◇◇

自分の性格を「マイペース」と分析し、海外の大会でも会場の雰囲気に飲まれることなく自分のスタイルで臨めるという三浦選手。

去年、大学近くの焼き肉店で陸上競技部の仲間と食事する様子を取材させてもらったときは、最上級生ながら肉やサラダを取り分けるなど気配り上手な一面も見せていました。

そんな三浦選手についてチームメートは「すごく謙虚で試合で勝った後も高ぶらない。陸上はもちろんすごいけど、人間性が尊敬できる」と、その魅力を語ってくれました。

(2024年3月26日「ニュースウオッチ9」で放送)

《基礎情報》三浦龍司 選手

東京五輪 7位入賞(2021年)

▽生年月日:2002年2月11日
▽出身:島根県
▽主な実績:
・東京五輪 7位入賞
・世界選手権2023年 6位入賞