スケボー 西矢椛 パリ五輪で連続金メダルへ“オリジナリティ”

東京オリンピックで初めて採用され、注目を集めたスケートボード。東京大会では男女合わせて4種目のうち、日本選手が3種目で金メダルを獲得し躍進しました。

その1人が女子ストリートの西矢椛選手。まだあどけなさの残る中学生が果たした快挙は「13歳、真夏の大冒険」というフレーズでも有名になりました。

あれから3年。
西矢選手は“自分にしかできない技”にこだわってオリンピック連覇を目指します。
(スポーツニュース部 記者 松山翔平)

金メダリストは高校生に

東京五輪で金メダル(2021年)

史上最年少の金メダル獲得から3年。

16歳の高校生になった西矢選手は今や日本のスケートボード界の顔とも言える存在に成長し、子どもたちにスケートボードを教える活動に積極的に参加しています。

西矢椛 選手
「子どもたちにとって、できないことをやるというのは未知のことなので、それを最初から教えることは、伝わらないことも多いし、すごく難しい。でも教えてできるようになったら、すごくうれしいし、スケボーに興味を持ってもらって、また一緒に滑れたらいいなと思う」

パリ五輪 “日本勢4人のしれつな代表争い”

西矢選手が連覇を目指すパリオリンピック。

その大舞台までの道のりは平坦ではありません。

スケートボードの代表選手は、対象となる国際大会で得られるポイントによって決まる世界ランキングで選ばれます。

各国や地域から1つの種目に出場できる選手は最大3人で、世界でも屈指のレベルにあるストリートの日本勢は、その枠をめぐり西矢選手を含む4人がしれつな争いを繰り広げています。

世界選手権 優勝の織田夢海選手と3位の西矢選手(2023年12月)

ライバルの1番手は世界ランキング3位で17歳の織田夢海選手です。

ボードを裏表に回す「キックフリップ」を使った技を得意とする織田選手は、去年12月の世界選手権で優勝するなど勢いがあります。

赤間凛音選手

そして、世界5位には西矢選手よりも年下の15歳、赤間凛音選手がつけています。

さらに、世界6位には東京オリンピックでともに戦い、銅メダルを獲得した中山楓奈選手も追っていて、選考大会の最後まで誰が代表に選ばれるのか、分からない状況です。

中山楓奈選手

ライバルとの争い “いい刺激も”

ライバルとの代表選考レースをリードする西矢選手は2024年2月の時点で世界ランキング1位。

オリンピックの選考対象となる大会では5戦中4戦で表彰台に立つなど、抜群の安定感を見せています。

年齢も近く、ふだんは仲が良いライバルたちとの争いについて西矢選手は前向きに受け止めています。

西矢椛 選手
「日本勢が常に上位にいるので、大変なところもあるけど、いい刺激をもらえている」

それでも「負けたくないのでは?」と尋ねると「その気持ちはあります」と負けず嫌いな一面ものぞかせました。

誰もやっていない技を

世界でも最もレベルの高い代表争いを勝ち抜くために、西矢選手が力を入れているのが「スイッチ」を使った技です。

西矢選手はふだんは左足を前にして滑る「レギュラースタンス」ですが、それを逆にして右足を前にして滑る「グーフィースタンス」にするのが「スイッチ」です。

左足が前「レギュラースタンス」

右足が前「グーフィースタンス」

利き足と逆のスタンスでは同じ技でも難度が一気に上がります。

男子で取り入れる選手は多いものの、女子で「スイッチ」で技を出せる選手は世界でもほとんどいません。

これを身につければ高得点が期待でき、何よりも西矢選手が目指している理想の滑りに近づくと考えているのです。

西矢椛 選手
「スイッチを練習し始めたのは、誰もやっていない技をやりたいから。技のバリエーションも増えるしいい影響があると思う」

貫く“オリジナリティ”

スケートボードという競技はオリンピックだけが重要視されるわけではありません。

Xゲームズなどオリンピックとは別に世界的に注目を集める大会があり、西矢選手は「ビデオパート」と呼ばれる自らの技を集めた映像作品をアメリカで作ることも大きな目標としています。

それでもパリオリンピックに対しては「滑りたいし、出たい舞台」と特別な思いを抱いています。

西矢椛 選手
「誰もやらない技をやるとか、誰も使わないコースを使うとか、人によって全くスタイルが違うのでそこを見てほしい。“オリジナリティ”のある技をどんどん作って、パリオリンピックまでに試していきたい」

西矢選手にとってのスケートボードは、あくまで自らのスタイルや個性を表現するもの。

変わらぬ信念を持ってそれを追求することが、10代でのオリンピック連覇という夢につながっています。

◇◇取材こぼれ話◇◇

西矢選手が2024年の目標にあげたのは、パリオリンピック出場のほかにもう1つありました。

それが「テストを頑張ること」

特に高校生になったときに、頑張りたいこととして話していたのが英会話です。

海外の選手とのコミュニケーションを取りたいという思いと、国際大会では優勝したら英語でインタビューを受けることもあるため「話せたらかっこいい。世界でいろいろな人と話したい」と勉強にも熱心に取り組んでいます。

ちなみにテストの点数は「英語“は”まあまあいい。あ、英語“も”です」と笑顔を見せていました。

《基礎情報》西矢椛 選手

▽生年月日:2007年8月30日生まれ
▽出身:大阪府
▽主な実績:
・東京五輪女子ストリート金メダル。
・世界選手権 2021年 銀メダル、2023年2月・12月 銅メダル