2024年が明けた1月4日、新年の始動日。
江村選手は都内の練習場でトレードマークである金髪を束ねながら黙々と練習に励んでいました。
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“自分を信じて楽しむ”フェンシング 江村美咲 パリ五輪へ
新年に奉納した絵馬には「金メダルを日本に持って帰る」と記しました。
この夏のパリオリンピックを目指すフェンシング女子サーブルの江村美咲選手です。
身長1メートル70センチ、フットワークを生かしたロングアタックが武器。去年7月の世界選手権では日本選手初となる2連覇を果たし、世界にパリ大会の“金メダル候補”であることを強く印象づけました。
競技の本場であるフランスの地で、フェンシング日本女子史上初の金メダルに挑みます。
(スポーツニュース部 記者 今野朋寿)
“金髪フェンサー” 勝負の1年へ
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3月末まで続くパリオリンピックの出場権をかけた選考レース。凛とした表情からは緊張感が漂っていました。
世界王者として挑むパリ大会に向けて率直な思いを語りました。
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江村美咲選手
「東京オリンピックのときは完全にチャレンジャーの立場だったが、いまは金メダルを取らなきゃいけない立場に変わった。周りの期待も当時とは全然違って重圧を感じるときもあるが、変わらずチャレンジャーとして挑みたい」
初出場の東京大会以降、一気に世界の頂点に駆け上がった江村選手。急成長の理由を探ると2つのキーワードが浮かんできました。
『楽しむ』
『自分を信じる』
シンプルですが、江村選手が心から大切にしていることばです。
真剣勝負でも『楽しむ』
2021年7月、初めて出場した東京大会は個人戦で3回戦敗退、団体は5位と目標のメダルに手は届きませんでした。
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両親は元選手で、父の宏二さんはソウルオリンピックに出場したオリンピアン。江村選手にとってオリンピックは幼い頃から目指してきた特別な舞台で、すべてをかけて臨んだ大会での挫折は心に大きな穴を開けました。
江村選手
「全部出し切ったと思ったぶん、これ以上の伸びしろって何だろうって。もうこれ以上、何をすれば強くなれるのかなと、ずっと思っていた」
東京大会以降も続いた海外遠征で心身ともに疲れ、大好きだったフェンシングから気持ちが離れかけました。
そんなとき、フランス人のジェローム・グースコーチからかけられたことばが胸に突き刺さりました。
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『競技をもっと楽しもう』
自身を「負けず嫌いの完璧主義」と語る江村選手。真剣勝負を『楽しむ』ことは新たな感覚だったといいます。
このことばをきっかけに競技との向き合い方が変わります。
相手との駆け引きを楽しむようになり、それが技術の向上につながったのです。
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表彰台に上がる回数が増え、おととしの世界選手権では初の金メダルに輝きました。
江村選手
「それまでは生きるか死ぬかぐらいの気持ちでやっていた。うまくいかないと焦るし、イライラもする。楽しむという概念がなかった。そこにジェロームが来て『楽しんでもっと自由にいろいろ試していい』と言ってくれてから、すごく自由になった感じがする。もちろん勝ちたいのが前提にあるが、相手とのお互い120%本気のガチンコ勝負を楽しんでいる気持ちがあるときに強いなと思って、そこから楽しむことを大事にしている」
『自分を信じる』その理由は
世界王者になったあとの歩みは決して順風満帆だったわけではありません。
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追われる立場になったことでライバルたちに研究され、自身のけがも重なり、再び勝てない時期が続きました。
その壁を乗り越えるために導き出したのが2つ目のキーワード『自分を信じる』ということばです。
そこに込めた江村選手なりの思いがあります。
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江村選手
「足の調子がよくないとか、どこかに逃げ道を作っているなと気付いて。どんな結果であっても受け入れる覚悟だったり、傷つく覚悟を決めないと、最大のパフォーマンスは発揮できない。そのためには『自分を信じる』ことがすごく大切で、自分を信じると逃げ道がなくなって本気で勝ちにいける」
ジェロームコーチから教わった『楽しむ』という姿勢。
そしてみずから導き出した『自分を信じる』という覚悟。
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この2つのことばを支えに去年7月の世界選手権では接戦を勝ち抜いて2連覇を達成してみせました。
そばで支えるジェロームコーチは精神面での成長をたたえています。
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ジェローム・グース コーチ
「彼女はいま『自分はできるんだ』という感覚を持っている。どんなことも可能なんだ、自分が望みさえすればどんな目標でも達成できるんだという感覚だ。それはまた彼女がさらに高い目標を達成するための助けとなるだろう」
目指すは“金メダル ただ1つ”
ことしオリンピックが行われるのはフェンシングの本場、フランス。
会場は1900年のパリ万博の際に建てられた「グラン・パレ」で、熱狂的なファンの声援に囲まれるなか、試合が行われることが予想されます。
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『自分を信じて楽しむ』
そのことばを貫いた先に目標とする栄冠が待っています。
江村選手
「ワクワクもあり、緊張もある。自分を信じて楽しんで試合をやりきれば、悔いの残らない自分の120%が出せると思うし、金メダルを取れると信じているので、これがパリオリンピックに向けた一番大きな抱負。気持ちで絶対に相手に負けたくないし、ドンと構えて強気なプレーをしていきたいと思っているので、迷いなく楽しんで戦っている姿を見ていただけたらいいなと思う」
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◇◇取材こぼれ話◇◇
【常に新しいものにチャレンジ!】
去年の年末の12月29日。
つかの間のオフに江村選手が訪れたのは都内の美容室。
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東京オリンピックの翌年から気分転換として続けているのが髪のカラーリング。
いまではすっかり金髪がトレードマークとなり、2023年10月には全国の美容院組合が選ぶ「ベストヘア賞」も受賞している。
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勝負の1年に向けてこの日、選択したのは初めてというピンク色。
常に新しいものを取り入れる姿勢も光っている。
【初詣で向かったのは…】
初詣で訪れたのは東京 渋谷区の東郷平八郎をまつった「東郷神社」。
奉納した絵馬には「金メダルを日本に持って帰る」とパリ大会での目標を書き込んだ。
(1月25日 ニュースウオッチ9で放送)
《基礎情報》江村美咲選手
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▽生年月日:1998年11月20日生まれ
▽出身地:大分県
▽主な実績:
東京五輪女子サーブル個人3回戦
世界選手権2022・2023女子サーブル2連覇