サッカー女子W杯 なでしこジャパン 初戦へ「慎重かつ大胆に」

サッカー女子のワールドカップ、1次リーグで22日、初戦を迎える日本代表「なでしこジャパン」が、ニュージーランドで前日練習を行いました。公式会見に臨んだ池田太監督は「慎重かつ大胆に戦い、しっかり勝ち点を奪いたい」と抱負を述べました。

NHKでは22日の「なでしこジャパン」の初戦をBS1で中継でお伝えする予定です。

前日練習で初戦に備える

世界ランキング11位で9大会連続9回目のワールドカップ出場となる「なでしこジャパン」は、1次リーグの初戦で日本時間の22日午後4時から世界77位のザンビアと対戦します。

15日に日本をたった日本代表は、ニュージーランドのクライストチャーチで調整を続けたあと試合が行われるハミルトンに入り、21日、試合前日の練習を行いました。選手たちはリラックスした様子でランニングやストレッチをして、初戦に備えていました。

南半球のニュージーランドは季節が冬で、気温は12度ほどと夏の日本とは温度差があるため多くの選手が寒さ対策として長袖の練習着を着てコンディションを整えていました。

【試合前日 監督・選手の意気込みは】

池田監督「慎重かつ大胆に戦い しっかり勝ち点を」

初戦を前に公式会見が開かれ、池田太監督とディフェンダーの清水梨紗選手が出席しました。

池田監督はザンビア戦に向けて「しっかり準備ができ、あすの試合を迎えられる期待感でいっぱいだ。大会の初戦は常に大事になってくる。慎重かつ大胆に戦い、しっかり勝ち点を奪いたい」と抱負を述べました。

また、ザンビアの印象については「スピードのある選手がいるので、われわれのディフェンスラインとゴールキーパーの間のスペースをどうケアするか、意識を共有している。攻撃の部分でどうよさを出せるのか考えて準備してきた」と話していました。

また、攻撃的な役割を担う清水選手は「一番大事なのは先制点だと思っている。どんなに苦しくても得点が入ると守備も攻撃も落ち着くので得点にこだわっていきたい。チーム全員で勝つという気持ちを見せていきたい」と話していました。

キャプテン熊谷紗希「集中して全力を尽くす」

「きのうの開幕戦を見て、いよいよ大会が始まるという思いがあり、わくわくしている。あすは簡単な試合ではないが、集中して全力を尽くす。ザンビア戦の準備は、しっかりしてきたつもりなので、自分たちのよさを出さないといけない。そして相手のよさを消しながら勝ちたい。苦しんでも勝ち点3を勝ち取る」

司令塔 長谷川唯「前回と違う成長した姿を」

「楽しみが大きいが、チームとして準備してきたことをしっかり出したい。この4年間で海外でのプレー経験を積んだので、前回と違う成長した姿を見せたい。ワールドカップという大きな舞台の初戦はすごく大事。気持ちのこもったプレーで必ず勝ちたい」

2回目のW杯 DF三宅史織「勝ちにこだわり しっかりプレー」

「『いよいよ始まる』という気持ちと、チームとして1つでも上にいきたいという気持ちで頑張っているのでチームに貢献したい。初戦は難しくなると思うのでいろんなことを想定して準備をしたい。勝ちにこだわり何をしないといけないのか考えて、しっかりプレーしたい」

三宅選手は、日本サッカー協会がエリート選手を育成するために設けた「JFAアカデミー福島」の出身で、東日本大震災のあと原発事故の影響で拠点を静岡県に移して活動していました。三宅選手は「静岡の人には大変お世話になったので、ピッチで活躍する姿を見せて喜んでもらいたい。いい報告ができるよう頑張りたい」と話していました。

19歳 MF藤野あおば「自分にできることを精いっぱい」

「開幕戦を見てわくわくした。不安要素は特になく、今の自分が出せることを出したい。早くあすが来ないかな、という気持ちだ。上の年代から自分たちのような若手まで年齢関係なくコミュニケーションが取れている。練習もオフの時間もいい雰囲気で過ごせている。初めてのワールドカップで何があるかわからないが、自分にできることを精いっぱいやる。積極性を出してチームにプラスになるよう頑張りたい」

【今大会に臨む「なでしこジャパン」は】

平均年齢は24.8歳 大黒柱は世界一知るベテラン

今大会に臨む「なでしこジャパン」のメンバー23人の平均年齢は、24.8歳。前回大会とほぼ変わりませんが、ワールドカップ経験者は9人と前回より3人増えました。

海外のクラブでプレーする選手も過去最多の9人。初出場の選手を見ると、育成年代のワールドカップで優勝を経験した選手も多くメンバー入りしています。

東京オリンピック後のおととし10月からチームを率いる池田太監督は、若さと国際大会の経験を兼ね備えたチームを編成しました。

熊谷紗希 主将

その中心となるのが4大会連続4回目の出場となるキャプテンの熊谷紗希選手です。ヨーロッパの強豪クラブで10年以上活躍するディフェンスの要で、今の代表メンバーでは2011年ドイツ大会の優勝を知る唯一の選手です。

熊谷選手は32歳とチームでただ1人の30代ですが、最年少では19歳の選手もいる今大会のなでしこジャパンを「何でも話し合える環境にしたい」と先輩、後輩かかわらずに意見を出す一体感をつくることに心を砕いてきました。

“奪う”をコンセプトに戦術磨く

戦術面でチーム一丸となって取り組んできたのが、“奪う”をコンセプトにしたアグレッシブなサッカーです。

ボールを保持して試合をコントロールする「なでしこジャパン」従来のパスサッカーを維持しつつ、状況によっては中盤より前でプレーする選手が積極的にプレッシャーをかけてボールを奪い、素早くカウンターを仕掛ける攻撃パターンも磨きをかけてきました。

その鍵となるのが池田監督が去年の秋に導入した「3-4-3」のフォーメーションです。

ディフェンダーを3人、ミッドフィルダーを4人、フォワードを3人並べた布陣で、従来の「4-4-2」から前線の選手を1人増やし、人数をかけて高い位置から相手にプレッシャーをかけられる形にしました。

ボールをつなごうとする相手に対し、連動した動きでボールを奪うことができるかがポイントになります。

また、スリーバックとなるディフェンスラインは、従来より1人少なくなりますが、自陣に攻め込まれた場合は中盤の両サイドの選手が下がって5人で守ります。

その分、中盤の両サイドを担う選手には運動量が求められます。

日本サッカー協会は今大会の目標をベスト4以上としていますが、大会が近づくにつれて池田監督や選手たちは「優勝を目指す」と話していて、ドイツ大会以来、12年ぶりの頂点を視野に入れてなでしこジャパンが22日初戦を迎えます。

社会へのメッセージ込めたキャプテンマーク

今回のワールドカップで、FIFA=国際サッカー連盟は、社会へのメッセージを込めたキャプテンマークを8種類用意しました。8種類のキャプテンマークは、FIFAがさまざまな社会問題や国際的な課題を広く知ってもらうため、国連などの機関と連携して用意しました。

すべて色違いで8つのメッセージが記されています。

▽性別や人種などで排除されずに生活できることを意味する「インクルージョン」
▽「先住民」
▽「ジェンダーの平等」
▽「平和」
▽「すべての人への教育」
▽「飢餓の撲滅」
▽「女性への暴力の根絶」
▽「サッカーを楽しむ」

熊谷は「ジェンダーの平等」のキャプテンマーク

日本代表の「なでしこジャパン」のキャプテン、熊谷紗希選手は「ジェンダーの平等」を訴える紫色のキャプテンマークを腕に巻くことを決めています。このキャプテンマークを選んだことについて熊谷選手は、NHKの取材に対し「大会までの間にチームのみんなでジェンダーについて考える機会を持っていた。この問題に向き合っていくという意味で選んだ」と話していました。