【大雨被害状況】各地で土砂崩れや土石流 安否不明も

福岡県と大分県に発表されていた大雨の特別警報は10日午後5時半ごろにすべて大雨警報に切り替えられました。ただ、各地で記録的な大雨となり、すでに川の氾濫や土石流などの土砂災害が相次いでいます。
川や斜面などからは離れ、引き続き安全を確保するようにしてください。

被害の状況を随時更新してお伝えします。

土石流に住宅巻き込まれる 1人死亡 福岡 久留米

久留米市によりますと、土石流が発生した久留米市田主丸町竹野では、三明寺地区の12世帯27人のうちこれまでに17人の無事が確認されたほか、10人が救助され、このうち心肺停止だった70代の男性1人の死亡が確認されたということです。

ほかに救助された9人のうち、▽20代と60代の女性2人が「重症」、▽30代と70代、それに80代の男女3人が「中等症」で、▽のこる4人は命に別状はなく、病院への搬送も行っていないということです。

警察や消防が、当時の詳しい状況を確認しています。

現場や周辺 県が指定した「土砂災害警戒区域」の内側に

国土交通省の「重ねるハザードマップ」によりますと、住宅7棟が土砂に巻き込まれた福岡県久留米市田主丸町の現場やその周辺は、土砂災害による被害で命に危険がおよぶおそれがあるとして、県が指定した「土砂災害警戒区域」の内側にあります。

土砂災害警戒区域には▽土石流、▽地すべり、▽崖崩れの3つの種類があり、現場は、「土石流」の警戒区域内でした。

福岡県 陸自に災害派遣を要請

記録的な大雨の影響で福岡県久留米市で土砂災害が発生したことを受けて、福岡県は10日午後2時4分、陸上自衛隊の第4師団に災害派遣を要請しました。土石流に複数の住宅が巻き込まれた久留米市田主丸町竹野で、人命救助などの活動にあたるということです。

専門家“大量土砂が相当な速さで一度に流れ下った”

福岡県久留米市で発生した土石流について、地盤工学が専門で土砂災害のメカニズムに詳しい、群馬大学の若井明彦教授は「限られた映像からではあるが、相当なパワーがなければ動かないような巨岩も民家のある場所まで流れ下っていて、大量の土砂が相当な速さで一度に流れ下ってきたと推定できる。また土石流の発生源と考えられる場所では斜面が崩壊しているような跡もみられ、勢いを増したおそれもある」と話していました。

また上空からの映像を見た九州大学大学院の笠間清伸教授は「山の斜面にいくつも表層崩壊の痕跡が見られることから、複数の場所で発生した土砂が谷に集まって、それが大量の雨水で一気に流れ下った可能性がある。現場には土砂をためる役割を果たす『砂防えん堤』が少なくとも2つ確認できたが、いずれも土砂でいっぱいになり、その脇からあふれるようにしてふだんは川ではない場所を土砂が流れ下っていた。想定を上回る大量の土砂が被害を拡大させた可能性がある」と指摘しました。また、救助活動に当たる消防隊員などの足元が泥におおわれている点について「現場の周辺は『泥質片岩』という粘り気のある地質だったと見られ、足元が粘土のような泥に覆われていて動きにくく、今後の救助活動や復旧活動に影響する可能性があるので注意が必要だ」と話していました。

岸田首相「人命第一 対応に万全を期す」

岸田総理大臣は総理大臣官邸で記者団に対し「一連の大雨で河川の氾濫や土砂災害などが相次いでいる。亡くなられた方のご冥福をお祈りし、すべての被災者にお見舞いを申し上げたい」と述べました。

そのうえで「政府としては災害の発生が懸念される段階から必要な態勢を構築し、国民に警戒を呼びかけているところだ。先ほど、松野官房長官と谷防災担当大臣を呼び、現地に入るなど早急に被害状況を把握すること、地方自治体と緊密に連携し、人命第一の方針のもと災害応急対応に全力で取り組むとともに住民の避難支援などの措置を徹底すること、国民に対し避難や大雨などに関する情報提供を適時、的確に行うよう指示を出した」と述べました。

一方、11日からのヨーロッパ訪問について「今夜も随時、報告を受けつつ、明朝、被害の状況を見極めた上で判断するが、いずれにしても政府としては人命第一で対応に万全を期していきたい」と述べました。

佐賀 唐津の住宅2棟に土砂流れ込む 3人と連絡とれず

消防によりますと10日朝6時15分ごろ、佐賀県唐津市浜玉町の平原地区の住民から「山が崩れた」と通報がありました。土砂は、近くの住宅2棟に流れ込みこのうち1棟に住む50代の男性と70代の男性、もう1棟に住む70代の女性のあわせて男女3人と連絡がとれなくなっているということです。

土砂崩れに巻き込まれた住宅の1階部分には土砂が流れ込み壁が壊された状態となっていて、現場では、消防隊員が行方がわからなくなっている住民を捜索していました。

土砂崩れが起きた山は大きくえぐられるように削られ、住宅の周辺には、山から流れてきた岩や折れた木が散乱していました。
また、近くを流れる川は茶色く濁った水が流れていました。

近くに住む70代の男性は「朝5時ごろ、雨も少し小降りになり、川の流れる量も少なくなったので落ち着いたかと思っていた。今になると上の方でせき止められていたのだと思う。そのあと一気に土砂や木が流れてきて、家も埋もれてしまった」と話していました。

また、60代の男性は「この辺はみんな顔見知りで、土砂に巻き込まれた家も知り合いなので安否がわからないと聞いて不安に思っている。朝方から急に降りだして、そこで崩れたのだと思う」と話していました。

別の60代の男性は「4年前の大雨の時も今回崩れた場所よりもっと上の方で土砂崩れがあったが、今回の方がひどい。これ以上ひどくならないでほしい」と話していました。

佐賀 唐津 女性1人救助もその後死亡確認

唐津市浜玉町では、住宅2棟に土砂が流れ込んで男女3人と連絡がとれなくなり、その後、女性1人が救助され心肺停止の状態で救助されましたが、警察によりますと、10日夜に死亡が確認されたということです。警察や消防は見つかっていない男性2人の捜索と救助を11日も続けることにしています。

現場や周辺は「土砂災害警戒区域」内か 国交省

国土交通省などによりますと3人と連絡が取れなくなっている唐津市浜玉町の現場やその周辺は、土砂災害による被害で命に危険がおよぶおそれがあるとして、都道府県が指定した「土砂災害警戒区域」内だとみられるということです。

「土砂災害警戒区域」には▽土石流、▽地すべり、▽崖崩れの、3つの種類があり、浜玉町の現場は「土石流」の警戒区域内だとみられるということです。

専門家「現場付近は崩れやすい“真砂土”か」

唐津市で起きた土砂災害について、東京農工大学の石川芳治名誉教授は「現場付近は地下のマグマが冷え固まってできる「花こう岩」かその1種の「花崗閃緑岩」が広く分布している。これらは雨や風にさらされて風化すると「真砂土」となり、水がしみこむと崩れやすい。ここ数日降り続いた雨によって地盤が緩んだところに、けさ線状降水帯が発生するなど雨が強まったことで一気に崩壊した可能性がある」と指摘し、「真砂土」は九州北部や中国地方などにも広く分布していて、過去には2014年の広島市の土砂災害や2017年の九州北部豪雨の土砂災害の現場などでも確認されています。

石川名誉教授は「佐賀県以外でも大きな土砂災害が起きてもおかしくない雨の降り方になっている。山の斜面に絶対に近づかず、安全な場所で過ごしてほしい」と話していました。

また土砂崩れが起きるメカニズムに詳しい九州大学大学院の水野秀明准教授は10日午後、国土交通省の派遣で佐賀県唐津市の土砂崩れの現場を訪れました。水野准教授によりますとドローンの映像などから崩れたのは、土砂が流れ込んだ住宅から直線距離で500メートルほどの地点で、山の表面が厚さ2メートルほどにわたって崩れる「表層崩壊」が起きたとみられるということです。山の表面の土などが雨水と一緒に早いスピードで流れ下り、今回の被害につながったとみられると話していました。

佐賀県 自衛隊に災害派遣を要請

佐賀県唐津市で大規模な土砂崩れが起きたことを受けて、佐賀県は10日、救助活動を迅速に進めるため、自衛隊に災害派遣を要請しました。

唐津市浜玉町では10日朝早く、土砂崩れが発生して住宅に土砂が流れ込み、消防によりますと70代の男女と50代の男性のあわせて3人と連絡がとれなくなっていて、警察や消防が捜索活動を続けています。

これを受けて、佐賀県は10日午後、救助活動を迅速に進めるため、陸上自衛隊に災害派遣を要請したことを明らかにしました。

福岡 広川町 溝に落ちた軽トラックから男性救助 死亡確認される

10日午後1時すぎ、福岡県広川町で、「車が溝に落ちている」と付近の住民から消防に通報があり、現場で車体が半分ほど水につかった軽トラックの中から70代の男性1人が救助されましたが、警察によりますと病院で死亡が確認されたということです。
警察が当時の詳しい状況を調べています。

島根 出雲 車を運転中に川に転落の男性 死亡確認

8日午後3時ごろ、島根県出雲市美野町で軽乗用車が伊野川に転落しました。

軽乗用車は増水した川に流され、9日、およそ600メートル下流の河口付近で引き揚げられましたが、車内に人はおらず、警察や消防などが運転していた男性を捜索していました。

こうした中、10日午前11時ごろ、車が見つかった河口からさらに3キロほど離れた松江市大垣町の宍道湖で、運転していた島根県出雲市美野町の常松信行さん(75)が見つかり、その後、死亡が確認されました。

警察によりますと常松さんは自宅につながる柵がない橋で軽乗用車をバックさせていたところ川に転落したとみられるということで、警察は転落したあと大雨で増水した川に流されたとみてさらに詳しい状況を調べています。

大分 中津 無人の軽自動車見つかる 行方不明女性は見つからず

大分県などによりますと10日午前7時24分、中津市耶馬溪町の山国川沿いを走る国道で車に乗った50代の女性が川に流されそうになっていると女性の親族から消防に通報がありました。

この親族はしばらくの間、女性と電話で連絡を取っていたということですが、午前8時15分ごろに連絡が途絶えたということです。

通報を受けて、警察や消防が現場付近を捜索したところ、午前11時20分ごろ、道路上に無人の白い軽自動車が見つかったということですが、女性は発見されず、捜索は日没でいったん打ち切られ、警察や消防は11日朝から車が見つかった付近から下流のエリアを中心に捜索を再開することにしています。

山口 防府 道路脇の斜面崩れ約50世帯孤立 復旧は11日以降

山口県によりますと10日午前8時半ごろ、防府市の向島で突然、道路脇の斜面が崩れ、流れ出た木々や土砂が県道をふさぎました。
このため、道路の先にある小田地区との行き来ができなくなり、およそ50世帯100人が孤立した状態となっています。

住民によりますと小田地区では土砂崩れのあと停電も起きていて、市の職員などが船で弁当や発電機を運んだり、消防団員が漁船で孤立した住民の支援に向かっていました。

県は重機を使って道路の木や土砂を撤去する作業を進めていて、10日中の復旧を目指していましたが、復旧は11日以降になる見通しです。

島に住む60代の男性は「高さ10メートルくらいが崩れた。地区には高齢者が多く体調管理が心配なのでなるべく早く復旧してほしい」と話していました。

中にはデイサービスに出かけたあと、自宅に戻れなくなった人もいて一時的に公民館に身を寄せていました。
避難した80代の女性は「60年以上住んでいるが、今回のような経験は初めてです。このまま復旧しなければこの施設でしばらくお世話になるかもしれません」と話していました。

大分 日田 県道脇の山の斜面崩れ約200人孤立

大分県によりますと、10日午前、日田市小野地区を通る県道脇の山の斜面が崩れて通行できない状態となっているため、地区のおよそ200人が孤立した状態になっているということです。

県などが詳しい状況を確認しています。

大分 鈴連町 殿町 源栄町の一部地域が孤立

大分県日田市によりますと小野地区を流れる小野川の水があふれて、鈴連町、殿町、それに源栄町の一部地域が孤立しているということです。

佐賀 神埼 長さ約50メートルの橋の一部崩落

佐賀県神埼市によりますと、大雨の影響で市内を流れる城原川にかかる長さおよそ50メートルの鯰河原橋の一部が崩落したということです。

けが人などは確認されておらず、この影響で孤立している住宅もないということです。

福岡 早良区「金屑川」の護岸崩れる

警察や消防によりますと、福岡市早良区の住宅街を流れる「金屑川」では、10日7時すぎ、川の護岸がおよそ20メートルにわたって崩れているのが確認されました。

現場では、道路が川の方に落ち込むように陥没していて、川では茶色く濁った水が勢いよく流れていました。

市の職員などがカラーコーンを設置して警戒にあたっていて、復旧作業は水位が下がってから行われる見通しだということです。

福岡 添田町の住宅に土砂が流れ込む 1人死亡

10日午前3時40分ごろ福岡県添田町庄の木造平屋建ての住宅に土砂が流れ込み、70代の夫婦が閉じ込められたと、消防に通報がありました。

消防によりますと、住宅に流れ込んだ土砂の中から午前4時すぎに74歳の夫が、午前5時すぎに77歳の妻がそれぞれ救出されましたが、妻は、その場で死亡が確認されたということです。

警察によりますと、夫は意識がある状態で病院に搬送され背中などに軽いけがをしているということです。

福岡 久留米 田んぼのあぜ道で男性1人死亡 川に流されたか

警察によりますと10日午後1時すぎ、福岡県久留米市荒木町荒木の田んぼのあぜ道で、40代から50代くらいの男性1人がうつ伏せの状態で倒れているのが見つかり、その場で死亡が確認されました。

現場からおよそ3キロ離れた久留米市藤山町では、10日午前、「人が川に流された」という目撃情報が警察などに寄せられていて、捜索にあたっていた警察官が川の下流側にあたる現場で男性を見つけたということです。

警察は、男性が川に流されて亡くなった可能性があるとみて、身元の確認などを進めています。

福岡 久留米 病院が浸水 患者約50人が上の階に避難

福岡県久留米市田主丸町の「田主丸中央病院」によりますと、病院内に雨水が入り込み、およそ10センチほど浸水しているということです。このため、入院患者およそ50人が上の階に避難しているということです。

病院は「患者の体調に変化はみられない」としています。

佐賀 富士町の住宅に土砂 高齢女性救助

警察によりますと、10日午前6時ごろ、佐賀市富士町で住宅1棟に土砂が流れこんで、高齢の女性が取り残されていたということですが、その後、午前8時ごろ女性は無事救助され、命に別状はないということです。

山口 下関市 住宅3棟が床下浸水

山口県下関市では新地町や吉見新町などであわせて3棟の住宅が床下まで水につかったということです。

また、警察によりますと、山陽小野田市奥万倉の県道232号線が土砂崩れによる倒木で通行止めになっています。

島根 大田 のり面が崩れ一時80戸余りで断水

島根県大田市五十猛町にある大浦団地では、9日、近くののり面が崩れて、一時、80戸余りで断水しました。

崩れたのは幅およそ20メートルの車7台が停められる駐車スペースに面したのり面です。
高さおよそ15メートルから土砂が擁壁や防護ネットを突き破って崩れ落ち、停めていた乗用車と軽乗用車あわせて2台が押しつぶされていました。

近所に住む70代の男性は、「洗面所で水が出ず、おかしいと思って戸を開けたら崩れた場所から水がバーッと出ていた。その前に電車が通るような大きな音がした」と話していました。

島根 出雲市 家庭菜園のハウス被害

今回の大雨で、島根県出雲市美談町にある出羽千賀夫さん(73)の住宅では、近くの川の水があふれて周囲が50センチほど水につかりました。

近くにある家庭菜園のハウスには土砂も流れ込み、栽培していたトマトやナスなどの生育に影響があったということです。

一方、自宅はおととしの大雨の際に床下浸水したことから、土のうを積んで対策を施していて、浸水などの被害はなかったということです。

出羽さんは、「大雨の際にはこの地区は水につかることはわかっていたが、トマトを食べるのを楽しみに育てていたので残念です」と話していました。

島根 出雲 一時孤立状態になった地区も

今回の大雨で出雲市大社町の鵜鷺地区は、土砂崩れなどのため、道路が通行止めとなり一時、孤立状態になりました。

地区の住民によりますと、浸水などの被害は見られないということですが、地区を流れる八千代川には流されてきた大きな流木や工事現場の資材が残ったままになっていました。

また、地区の目の前にある湾には川から流れてきた直径50センチ、長さおよそ3メートルのポリエチレン製のパイプが10個余り沈んでいて、10日は作業員がパイプを地上に引き揚げる作業を行っていました。

70代の漁業関係者の男性は「漁師にとってパイプはとても邪魔で、船がパイプに当たってしまうとプロペラが壊れてしまう可能性がある」と話していました。