第2回「デジタル時代のNHK懇談会」議事録

■開催日時:平成17年7月14日(木)午前10時から12時

■場 所 :NHK放送センター5階特別会議室

■出席者
懇談会委員(五十音順、敬称略)
家本賢太郎、江川紹子、音 好宏、梶原 拓、金澤 薫、小林陽太郎、
笹森 清、新開玉子、辻井重男(座長)、永井美奈子、長谷部恭男(座長代行)、
山内純子、山内豊彦、吉岡 忍 (14名)
NHK側
会長 橋本元一、副会長 永井多惠子、
理事 原田豊彦、畠山博治、小林良介、中川潤一、小野直路、石村英二郎、西山博一、
総合企画室〔経営計画〕局長 望月雅文、担当局長 平賀徹男 

■議事次第
1.開会
2.論点整理と今後の議論の進め方【資料1,2】
3.「公共放送の特質と存在理由」(長谷部座長代行説明)【資料3】
4.公共放送の使命と役割について(意見交換)
5.閉会

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1.開会

事務局  第2回の懇談会を始めます。大変お忙しい中どうもありがとうございます。ご欠席は日本障害者協議会の藤井克徳委員と、早稲田大学の山野目章夫委員です。所用のためご欠席ということです。それでは座長、進行をお願いいたします。

辻井座長  第2回の「デジタル時代のNHK懇談会」を始めます。前回ご欠席されました、全国知事会前会長の梶原委員がご出席いただいているのでご挨拶いただきたいと思います。

梶原委員  梶原でございます。

2.論点整理と今後の議論の進め方(資料1.2)

辻井座長  お手元にある資料1は第1回の懇談会での各委員のご発言を整理したものです。事務局から説明お願いいたします。

事務局  「各委員の問題意識」という紙があります、ご発言を整理しましたが、基本的には論点整理になっていると思いますので、そういうつもりでご説明いたします。
 まず「公共放送とは何か」という本質論について議論をすべきだというご意見がありました。その中では、「NHKの役割」ということで、たとえば民放ではないNHKの性格をもっと明確にしていくべきだとか、あるいは公共放送の役割等を根本に遡ることが大事である。あるいは公共放送は、やること、やらなくていいことには哲学が必要だというご意見がございました。「政治との距離」は、いくつかご意見がありました。あるいはBBCとの比較で、「公共放送とは何か」が見えてくるのではないかというご意見もありました。
 次ページで、「NHKを取り巻く状況はどう変化しているのか」、NHKは生活の変化や視聴者の意識の変化にどう対応していくのか、という問題意識。 「デジタル化の進展」ということで、映像がIPに載ってどんどん家に届く時代、電波の役割をどう調整するのか、別々なのか。そういう議論をすべきだ。あるいは「デジタル技術を生かした放送」として、サーバー型放送なども考えられている。NHKの技術研究所を視察してはどうかというご意見もありました。
 3ページ目は、「NHKはどうあるべきか、公共放送のあり方とは」。まず「受信料制度」についてはいくつかご意見がありました。1つは受信料制度が時代にマッチしているのか、様々な議論がある。あるいは最後4つめですが、現行の受信料制度の制度的前提や運用実態などについて認識を共有し、今後の改善を検討するべき事項について、議論を発展すべきである。
 受信料制度とは別に、受信料体系ということで、世帯ごとという徴収単位が人々の生活に合っているのかどうかというご意見、あるいは予算承認などの仕組み、NHKの体質ということについてもご意見をいただきました。
 4ページ目、受信料不払いについては、法律に基づいてきちっと対応すべきだというご意見、NHKの体制については、中央集権体制を改めて、地域密着の姿勢を示し、視聴者が“マイNHK”の意識を持てるようにするべきだ。 それからNHKの事業運営についてはいくつかのご意見がありました。開かれたNHK、透明性の高いNHKを作るために、視聴者一人ひとりに説明していく仕掛けを議論すべきだ。上と下、経営者と部下が一体にならないと、いいアピールはできないというご意見。一方で、メディアはあまり一丸とならないほうがいいというご意見もありました。改革と言うと、組織が息苦しくなって、番組が面白くなくなる、いじくらない勇気も必要だというご意見。また、労使関係を大事にすべきだ、NHKの、特に若い人の声というものをきちんと理解すべきだ、などのご意見がありました。
 次は5ページ。“規制改革・民間開放推進会議”は外部の委員会ですが、それとNHK関係の委員会である「改革・新生委員会」「NHK“約束”評価委員会」などの、さまざまな議論について知らせてほしいというご意見。あるいは議事の進め方ということについてもご意見をいただきました。
 各委員の問題意識ということで整理しましたが、大きく言うと、「公共放送とは何か」という本質を議論すべきだということと、受信料について受信料体系ということもさることながら、「受信料制度」についても議論すべきだというご意見が多かったと思います。

辻井座長  ありがとうございました。だいたいこんなところでよろしいですね。
 こういった皆様の問題意識を整理したうえで、私と事務局とで、12月までのスケジュール案を考えてみました。それが資料2です。事務局から説明をお願いします。

事務局  第2回からということで整理しました。「公共放送の本質について」、2〜3回議論すべきだという議論が大方のご意見だったと思います。この案では第2回から第4回までを「公共放送のあり方」に、あてております。 そのなかで、公共放送の特質と、本来なぜ公共放送があるのか、その使命と役割という、大きなところから出発して、第3回は「公共放送のガバナンス」、先程ありました「政治との距離」も含まれてくると思います。第4回は「公共放送の財源」という議論があって、第5回、第6回あたりで「受信料について」。「体系」ということに限らず「制度」についても議論すべきだというご意見がありましたので、そういうことだろうと整理をしております。
 その中から「検討課題の整理」に入って行って、第8回以降ははっきり書いていませんが、議論を深めて5月のまとめにたどり着きたいという大きな流れです。
 NHK側の希望ですが、NHKは今、「改革・新生」ということで取り組んでいまして、9月にNHKの「新生プラン」を公表しようと考えています。 さらに来年1月にはNHKの新しい「経営ビジョン」を公表しようと考えていますので、そういうスケジュールで、もしお許しいただければ、9月のところでは「新生プラン」について、12月は1月の公表の前ということで「新経営ビジョン」についてもご意見をいただければということで、第2回から第7回はこういうことで、第8回以降はまた議論の流れを見てということで、今後の進め方の案とさせていただきました。

辻井座長  それでは「今後の進め方」についてご意見いただけますか。

小林委員  今、伺った中で、9月の「NHK新生プラン」と12月の「新経営ビジョン」というのは、原案的なものを、懇談会の意見を聞こうということで、ある程度「新生プラン」はできあがっていて、ファイナルチェックみたいなことを、どうだろうかということで、出て来るのですか、どういうことでしょうか。

事務局  9月のいつ公表するかというのも決まっていませんので、今後の議論の進め方次第ですが、できれば「新生プラン」についても、「新経営ビジョン」についても、特に「新経営ビジョン」については1月公表と考えていますので、事前にご意見を伺いたい。
 その骨子が9月の「新生プラン」になりますが、骨子ですから「ビジョン」のようなきちんと論理的に整合したものではありませんが、できれば事前にしたいという気持ちはあります。一方で、早く公表したいということもあり、しかし、第3回を開く予定の8月3日にはお示しできないということがあって、気持ちは事前にご意見を伺いたいのですが、「プラン」については、ひょっとしたら公表したものについてご説明することになるかもしれませんが、それはあくまで来年1月のビジョンの骨子ということになりますので、いただいたご意見も含めて、来年1月のビジョンを策定したいと考えています。

小林委員  二つとも大変ご苦労されていると思いますが、少なくとも懇談会としては、第1回の懇談会で皆さんからご意見が出て、そういった基本的な「新生プラン」が骨子であれば、ビジョンに向かって、ああいった問題に触れないで「新生プラン」が出てくるというのは考えられないわけですから、もしも「新生プラン」に少しでも間に合うように懇談会が議論を進めようということであれば、あるいは、今、公共放送のあり方を中心に3回やることについては、波長が合っていない。
 特に、「新生プラン」の目玉が何かわかりませんが、少なくともそれについては早めに懇談会の意見をまとめないと、「新生プラン」ができて骨子ができてから、方向が出てくることについて、あとから懇談会でやるというのは、間延びするというか、波長が合わない感じがします。むしろ「新生プラン」の中身がどうとか、大体こんな中身でいこうと思っていることくらいを伺えば、それまでの今日を含めて8月と9月に何を議論するかということが、もう少しわかってくるのではないかという気がしますが。

辻井座長  口頭で、ある程度こんな議論をしているとか、8月3日に説明していただければと思いますが、いかがですか。

事務局  皆さんそういうご意見でしたら、そういう方向で進めることを検討させていただきます。

橋本会長  考え方の基本について、皆さんのご意見を賜りながら、このプランも作ってまいりたいと思います。よろしくお願いします。

辻井座長  今日は約70分時間を取り、皆さんに公共放送の存在意義について議論していただきたい。その前に長谷部先生から、20分くらい、議論がフォーカスするように、論点をお話いただく予定になっています。次回は、臨機応変という感じで、出た話題によって若干変更するかもしれませんが、とりあえずは、「公共放送のガバナンス」ということを予定しています。

梶原委員  前回欠席したので、今の小林さんのお話に関連して申し上げたいのですが、このスケジュールは、仮置きということにしておかないと、相互に関連するテーマです。分割して議論できるものではない。

辻井座長  それは当然そうですが。

梶原委員  特に受信料は、11月にやることになっていますが、公共放送の存在意義とうらはらの問題です。しかも、一番深刻な問題は、受信料の不払い問題です。私ども生活の現場にいますからよくわかりますが、受信料不払いの問題は大変深刻です。若干、小康状態を保っているかもしれませんけれど、できれば払いたくないという人がほとんどです。
 これは何か事が起こったら一触即発で、公共放送の存在意義といったややこしいことを議論をしているうちに、受信料がなくなれば、おおもとがなくなってしまう。だからターゲットは受信料をいかに払ってもらうかということに絞っていかないと。だから6回目、11月に受信料問題なんてことは、およそピントが外れていると思います。
 公共放送はどういうことかというと、私なりに考えると、受信者あってのNHKですから、受信者の、受信者による、受信者のためのNHKということに尽きると思います。哲学的に「公共放送は何か」と議論をしても永遠のテーマです。
 ですから、当面の緊急課題が受信料問題であるということを前提に、受信者を中心にいかにNHKをサポートしてもらうか、ということに論点を集中しないと、この懇談会はまったく意味がなくなってしまう。 そういう考え方で生活の現場の感触から申し上げると、私自身は「公共放送を考える会」という市民委員会をこの間立ち上げました。一昨日、秋田県にも講演に行って市民委員会を作りなさいと話してきましたが、全国的に「公共放送を考える会」という市民委員会をどんどん作っていこうと思っています。
 声なき声の良識者の声を顕在化させないと、一部、特定の勢力に引っ張られる。そういうところに解決策があるのではないかと思います。
 前回、欠席したのでもう少し申し上げると、デジタル技術を活用するかという点については、受信者とNHKとのインタラクティブ、双方向のやり取りができるということになったことが一番大事なところだと思います。
 今までは、結局、受信者代表は誰もいないから国会議員にやらせようということでやらせてきたのですが、全く受信者の代弁をしていない。むしろ予算は国会の議決を要するので、国会議員に頭を下げて、NHKの幹部は行かなければならない。そういうところの根回しをしないと、予算も通らないということで、いろいろ問題になっていることが出てきているのです。
 デジタル技術を使えば、直接NHKが受信者とやりとりできるわけですから、世帯主の個人認証のようなことをやれば、株主総会をオンラインでできるわけです。受信料を払っている人たちが株主ですから。そうすると国会議員は要らないのです。ストレートに直接民主主義でオンラインで、NHKに意見を反映できるわけですから。そういうデジタル技術をどう使うかということで、受信者の協力を求めることに焦点を置かないと、いくら時間があっても足りないわけです。
 ですから、受信者中心で議論をしていくのだということを、私の意見として申し上げたいと思います。

辻井座長  わかりました。会長からいただいている諮問も、受信料体系、あるいは「制度」に踏み込むかということもありますが、もう一つは、「デジタル化時代の公共放送」という2本になっているわけです。この前は皆さんのご意見で、公共放送というものの存在についても、お互いに共通の認識を持つ。最大公約数的なものを確認したうえでやりましょうというご意見が多かったので、こういう整理をさせていただきましたが、少し短縮することは考えられるかもしれません。
 たとえば、これからご説明をいただくことを大体よしとすれば、確かに議論しても、いろんな意見が出てまとまらない点は多いと思いますから、できるだけその部分を圧縮してやるという方向で進めたいと思います。今日も公共放送については、これで共通認識が取れますということになれば、早速、梶原委員のおっしゃるような方向でやろうと思いますが。

笹森委員  遅れてきて話の顛末がわからない部分があるのですが、進め方の中で梶原委員がおっしゃったのは賛成です。その上で私は「急がなければいけないこと」と、「じっくり時間をかけて論議しなくてはならないこと」の、二つがあると思うのです。前回のときにも申し上げたのですが、この不祥事が昨年7月に起こって以降、何でこんなに受信料不払いが起きたかと言うと、「対応の拙さ」です。それに対してNHKに対するイメージがものすごく悪くなって不信感が募ったということです。それをまずどういうふうに一回止めておくのか。
 このことを先行させなくてはいけないのではないか。それは今まで起こったことによる受信者、国民に対するNHKとして対面の仕方の拙さと、メッセージの発信の仕方が非常にまずかったという部分をどう取り直すか。
 今の時点で、「こういうことをやったらどうか」ということが話としてあって、それからきっちり議論したうえで、「こういう体質に直しましょう」というのが次かなと思うのです。
 入っているかどうかわからないのですが、私は、不払いの一番のもとは、組合が調べたというのを出してもらったのですが、一番多いのは、不祥事が起きた際の役員の方々の責任の取り方で、顧問に残るというのがあって、バーンときたわけです。その上で退職金の問題があったわけです。これをまずどう整理するのかが一つ。その上で、政治との公平性について、本当に保たれているのかということに対する不信感。これが今の時点でどうなのかということも少し議論する必要があると思います。

辻井座長  ここですべてを議論することはできないし、今の「ガバナンス」というのも予定に入っていますが、経営委員会等でも議論されると思うのですが。本当は3時間ぐらいあって、2時間ぐらいたっぷり議論できて、第一部、第二部で、長期的な問題と、すぐさま対応する問題を分けるといいかもしれませんが、そうもなかなかいきません。他の経営委員会等との関連もあると思いますが。

橋本会長  顧問につけるかどうかというのは、私の権限でありまして、そういう形で、いわば事務的な感覚で行ってしまって、結果として非常に反省しているわけです。ただ、退職金の問題は、方向性を出すのはひとえに経営委員会の権限事項でありまして、事務的な調整作業は執行部がやりますが、経営委員会のご判断の議論で、やっていただくということで、現在はそちらのご意向を尊重しながらやっていることであります。ここは私の方から、「こうするのでこの議論を」ということまで、現在の権限として持ち得ないということをご説明しておきたいと思います。

梶原委員  経営委員会が審議すべき事項だとか、国会が審議すべきマターだからここでは議論しないというのはおかしいと思います。この懇談会自体が法律の根拠に基づかないあやふやなものです。だから逆に、経営委員会のマターであろうが何であろうが、どんどん意見は言うということにしないと、経営委員会がやることだからこっちは遠慮しますとか、そんなことをやっていたらだめですよ。

辻井座長  わかりました。

橋本会長  私の説明の趣旨は、私が退職金を出す、出さないは判断できないという事実について申し上げています。

辻井座長  話を戻しますと、公共放送の存在意義については、私も気になっているというか、今朝の新聞でも「規制改革・民間開放推進会議」の方で「二元体制の廃止」のような記事も出ていまして、この懇談会として、共通認識としてこういうことがありますよということは、記録に残すべきではないかと思いますので、今日はいろんなご意見が出ましたが、公共放送の存在意義について、ある程度絞って、次回からペースを速めて、受信料体系等に移るペースを早くしたいと思いますが、笹森委員も前回主張されましたように、ある程度スケジュールを作れというご意見がありましたので、作るときれいになり過ぎるかもしれませんが、今日は、本論に入ろうと思いますがよろしいでしょうか。
 では、そういうことで長谷部座長代行から論点整理をお願いしたいと思います。

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