【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(5月11日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる11日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、およびロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ゼレンスキー大統領 ロシア軍の攻撃 “事前に察知”

ゼレンスキー大統領は記者会見で「ロシアがこの方面で新たな攻勢を始めた。ウクライナは軍の部隊や大砲などで対抗した」と述べ、ロシア軍の攻撃を事前に察知して準備を整えていたと強調しました。

首都キーウの外交筋によりますと、ロシア軍のハルキウ州内への侵入は、おととし9月にウクライナ軍が州のほぼ全域をロシアから奪還して以降、初めてとみられるということです。

ロシア軍のハルキウ州侵入 “緩衝地帯の構築がねらいか”

ウクライナ東部のハルキウ州にロシア軍が北から国境を越えて侵入し、ウクライナ軍の参謀本部はNHKの取材に対し、ロシア軍の規模からすると第2の都市ハルキウの掌握ではなく、ウクライナ側からの砲撃などを防ぐための緩衝地帯の構築だという見方を示しました。

ハルキウ州の知事は10日、SNSでロシアとの国境に近い地域がロシア軍の大規模な砲撃を受け、2人が死亡するなどの被害が出たとした上で「敵はハルキウ州北部で新たな段階の作戦を開始した」と指摘しました。

この攻撃について、ウクライナ軍の参謀本部はNHKの取材に対し、ロシア軍の地上部隊が北から国境を越えてハルキウ州におよそ1キロ侵入したと明らかにしました。

その上で、今回のロシア軍の規模からすると、ねらいは第2の都市ハルキウの掌握ではなく、ウクライナからロシア領内への砲撃などを防ぐために、国境から10キロ程度の幅の緩衝地帯を設けることではないかとの見方を示しました。

ハルキウ州北部で「戦術的な足場」確保の見方も

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は10日の分析で今回の作戦でロシア軍がハルキウ州北部で「戦術的な足場」を確保したという見方を示し「ロシア軍はベルゴロド州との国境からウクライナ軍を押し返し、ハルキウ市を砲撃の射程内に収めるために部隊の進軍を目指す可能性が高い」と分析しています。

一方で「ロシア軍がハルキウ市を包囲し、占領するための全面攻撃を直ちに行うことは意味しない」としていてロシア軍がウクライナ東部の他の前線で進軍をねらううえで、ハルキウ州にウクライナ軍の部隊を引きつけさせる思惑もあると指摘しています。

米 軍事支援急ぐ考え

アメリカ・ホワイトハウスのカービー大統領補佐官は10日、記者団に対し、ウクライナ軍と同様の見方を示し「ロシアは国境沿いに緩衝地帯を構築しようと、今後、数週間で砲撃を激化させ、追加の部隊を投入する可能性がある」と指摘しました。

その上でウクライナに対して、およそ4億ドル、日本円にしておよそ620億円相当の軍事支援を新たに決定したとしています。

具体的には、アメリカ軍が備蓄している防空システム「パトリオット」のミサイルや砲弾などが含まれるということで、カービー補佐官は供与を急ぐ考えを示しました。

さらにカービー補佐官はロシア軍が防衛線を大幅に突破することはないとの見方も示し、「時間がたてばアメリカの支援が入り、ウクライナは2024年を通じて攻撃に耐えることができるようになるだろう」と述べました。

米 高機動ロケット砲システムも売却へ

およそ4億ドルの軍事支援とは別にアメリカ政府は10日、ウクライナに対し、高機動ロケット砲システム=ハイマース3基など、総額3000万ドル、日本円にしておよそ46億円相当の武器の売却を決め、議会に通知したと明らかにしました。

売却代金は、ドイツ政府がウクライナ政府の代わりに、負担するとしています。

ハイマースは、軍事車両にロケット弾の発射システムを搭載した兵器で、機動性と精密な攻撃力を兼ね備えているとされます。

アメリカ政府は、声明で「ウクライナの防衛力を高めることができる」としていて、ロシア軍がウクライナ東部ハルキウ州で攻撃を仕掛ける中、ウクライナへの軍事支援を急いでいます。