【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(5月10日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる10日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、およびロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ゼレンスキー大統領「ロシアが新たな攻勢を始めた」

ロシア軍による東部ハルキウ州への攻撃について、ウクライナのゼレンスキー大統領は10日、記者会見で「ロシアがこの方面で新たな攻勢を始めた。ウクライナは軍の部隊や大砲などで対抗した」と述べ、ロシア軍の攻撃を事前に察知して準備を整えていたと強調しました。

そして、ウクライナ軍の部隊がロシア側の前進を食い止めたとしたうえで、現在も激しい戦闘が行われているとしています。

“ロシア軍 ハルキウに地上攻撃で新たな戦線” ウクライナ国防省

ウクライナの国防省は、ロシア軍が10日早朝、東部ハルキウ州で「われわれの防衛ラインを装甲車の部隊で突破しようとした」とSNSで明らかにしました。

現時点では、ロシア側の攻撃を撃退したものの、地上攻撃を受けて激しい戦闘が続いているとしています。

ロイター通信は、ウクライナ軍の高官の話として、ロシア軍は緩衝地帯を設けるため、ハルキウ州の北部にあるボフチャンシクの周辺で国境から1キロほどのところまで進軍したとして、「この攻撃は新たな戦線を開いた」と伝えています。

また、ハルキウ州のシネグボフ知事は10日、ロシア側がボフチャンシクに対して一晩中、ミサイルや砲撃などによる激しい攻撃を行ったほか、国境を越えようとしたものの撃退に成功したとSNSに投稿しました。

そのうえで、「ウクライナ軍は陣地を1メートルも失っていない」と強調し、ロシアとの国境沿いの地域に暮らす住民に対し、安全のため避難所にとどまるよう呼びかけました。

ハルキウ州は前線のある東部ドネツク州に隣接し、ウクライナ側は5月末にもロシア軍が攻勢をかける恐れがあると警戒していました。

“ロシア軍は国境から1キロ地点にいる” ウクライナ軍参謀本部

ウクライナ軍の参謀本部はNHKに対し、ロシア軍が北から国境を越えてハルキウ州内に入ったことを認めました。

ロシア軍は国境から1キロのところにいて、現在も戦闘が続いているとしています。

ロシア軍のねらいについてウクライナ軍の参謀本部は、ロシア領内への砲撃などを防ぐために、10キロ程度の幅の緩衝地帯を設けようとしているのではないかとの見方を示しました。

ハルキウ州の知事はこの攻撃で、これまでに州内で少なくとも2人が死亡し5人がけがをしたとSNSに投稿しています。

ウクライナ 警備局トップの解任発表

ゼレンスキー大統領は9日、大統領令を出し、要人の警護を担当する国家警備局のトップを解任すると発表しました。

理由は明らかにされていませんが、ウクライナでは5月、国家警備局の大佐2人が、ロシアの治安機関FSB=連邦保安庁に機密情報を漏らし、政府高官の暗殺計画に関わった国家反逆などの疑いで拘束されています。

ロシアが暗殺の対象にしていたのは、ゼレンスキー大統領のほか、ウクライナ国防省のブダノフ情報総局長などの政府高官だったとされていて、今回の解任はこの事件を受けた措置とみられています。

“ロシア軍 激しい攻撃もあまり前進できず” イギリス国防省

ウクライナではロシア軍による激しい攻撃が続いていて、第2の都市、東部ハルキウ市の市長は10日、ミサイルによる攻撃で子どもを含む2人がけがをし、26の建物が被害を受けたとしています。

また、イギリスの国防省は9日、激しい戦闘が続く東部ドネツク州の要衝の町、チャシウヤル周辺での攻撃が、4月は前の月より2倍増えたとの分析を発表しました。

その上で、攻撃の回数が大幅に増えたにもかかわらず、あまり前進できていないとして、ロシア軍はほぼ確実に大きな損失を出していると見られると指摘しています。

プーチン大統領 ミシュスチン首相の再任を提案

通算で5期目に入ったロシアのプーチン大統領が今後発足させる新たな内閣の首相について、ロシア議会のボロジン下院議長は10日、プーチン大統領がミシュスチン氏を再任する案を議会下院に提出したと明らかにしました。

首相を務めてきたミシュスチン氏は、経済政策などでプーチン大統領の信頼が厚いとみられていて、議会でも承認される見通しです。

また、ロシアのメディアは、ウクライナへの軍事侵攻が続く中、プーチン大統領は主要閣僚の多くは留任させるのではないかと伝えています。

ゼレンスキー大統領の会見中に防空警報 キーウ

ウクライナは、ロシアが戦勝記念日としている9日をヨーロッパの団結を記念する「ヨーロッパの日」としていて、この日、首都キーウにはヨーロッパ議会のメツォラ議長が訪れ、ゼレンスキー大統領と共同の会見を行いました。

会見のさなか、キーウ市内には防空警報が鳴り響き、ゼレンスキー大統領が「気分はどうですか」と問いかけると、メツォラ議長は「大丈夫です。大統領が言ったとおりきょうは『ヨーロッパの日』です。あなたたちが毎日どのような暮らしを強いられているかよく分かりました」と応じました。

このあとゼレンスキー大統領は戦勝記念日を祝うロシアについて「ナチスがいまパレードを行っている。これが彼らの平和に対する態度だ。これが現実だ」と改めて非難し会見を終えました。

プーチン大統領 戦勝記念日で核戦力について繰り返し言及

ロシアでは9日、第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利してから79年の記念日となり、首都モスクワで式典が行われました。

プーチン大統領は演説で「われわれの戦略部隊はいつでも戦闘準備ができている」と述べてロシア軍の核戦力に言及し、軍事パレードでは、核弾頭の搭載も可能な短距離弾道ミサイル「イスカンデル」なども登場しました。

また、プーチン大統領は記者団に対し、ロシア軍の戦術核兵器を扱う部隊が行う軍事演習について、ロシアの戦術核兵器が配備されているとする同盟国のベラルーシも参加して実施されると明らかにしました。

ウクライナ情勢を巡っては最大の支援国アメリカが軍事支援を再開したほか、今月、イギリスのキャメロン外相が「ウクライナにはイギリスの供与した兵器でロシア領内を攻撃する権利がある」と述べるなど、ロシアは、欧米側の言動に神経をとがらせているとみられます。

アメリカのメディア「ブルームバーグ」は「ロシアは再び核の脅しを始めた」と伝えるなど、プーチン大統領の一連の発言はこのところの欧米側の動きを踏まえた威嚇とみられます。