集大成の五輪 そして“さらなる高みへ”バスケ男子 比江島慎

「バスケットボール人生の集大成になると思う」

バスケットボール男子の比江島慎選手は、ことしのパリオリンピックへの思いを尋ねられると、そう答えました。去年のワールドカップにチーム最年長として出場し、48年ぶりとなる自力でのオリンピック出場権獲得に大きく貢献したベテラン。オリンピック初勝利だけでなく、国内のバスケットボール人気のさらなる高まりも目指して、パリの舞台に臨もうとしています。
(宇都宮放送局キャスター 長井ゆめの)

“最後”の五輪への覚悟

比江島選手は「比江島ステップ」とも呼ばれる緩急を駆使したドリブル突破と、精度の高いスリーポイントシュートを武器に、去年のワールドカップでも日本の得点源の1人として活躍しました。

33歳で迎えるこの夏のパリオリンピックに、今はすべてを集中していると言います。

比江島慎 選手
「パリ五輪は2024年最大の目標であり、ほぼほぼ、僕の中では最後の大会になるだろうと思っています。本当にバスケットボール人生というか、僕の人生自体をバスケットボールに注いできたので。いろんなものを犠牲にもしてきたし。その集大成になると思うので、パリの位置づけというのは、自分の中ですごく大事にしています」

去年、日本が3勝をあげたワールドカップには計32チームが出場したのに対し、パリオリンピックに出場できるのは12チームのみ。

日本が開催国枠で出場した前回の東京大会は、予選リーグで3戦全敗でした。

東京五輪は3戦全敗 比江島選手も落胆(2021年)

そのコートに立っていた比江島選手は、世界一を争うオリンピックの厳しさを肌で感じています。

「五輪になると、NBA選手もピークをあわせて参加するというイメージもあるし、スポーツ界がいちばん盛り上がるというか、誰もが目指すべき大会になっていると思っています。そこでの1勝というのは、ワールドカップとは違う何かが見えるんじゃないかと楽しみな部分でもあるので、そこを経験してみたい」

今も進化を続ける33歳

再び日本代表に選ばれ、パリオリンピックで初勝利をあげるため、比江島選手は今、所属する宇都宮ブレックスで、すべてのプレーの精度を高めようとしています。

中でも力を入れているのが、ディフェンスです。

身長2メートル近くあり、体格もすぐれた世界のトップ選手を想定して、チームメイトの外国人選手たちを相手に、地道な練習に取り組んでいます。

「ブレックスでディフェンスを習得していなければ、間違いなく日本代表に選ばれていなかったと思っています。もちろんスリーポイントシュートが打てる選手が大前提だと思いますけど、日本代表ではやっぱりいちばんにディフェンスが求められるので」

さらに比江島選手が意識しているのが、日本代表の最年長として若手選手がプレーしやすい環境を作りながら、チームの士気を高めていくことです。

その手本としたのは、日本人初のNBAプレーヤー、田臥勇太選手でした。

手本としてきた田臥勇太選手(右)

比江島選手が日本代表に選ばれたばかりのころは、田臥選手が最年長として、日本のバスケットボールを支えていました。

今、同じ宇都宮ブレックスでプレーする中で、多くのことを学んできたと言います。

「自分がかつて何も考えずにプレーできていたのは、今、考えると最年長の田臥さんのおかげだったと思います。リーダーシップとか、ことばでチームを引っ張るところが、すばらしいんですよね。ルーズボールとかリバウンドに対する意識が人一倍強かったので、そこはまねしています。最年長がいちばんルーズボールを追いかけて、フロアにダイブしてという姿を見せると、やっぱり若手がついてきてくれるので」

バスケットボールを盛り上げたい

世間からベテランと呼ばれるようになった今もなお、成長を追い求める背景には、国内で高まっているバスケットボール人気への責任感があります。

48年ぶりの自力での五輪出場権獲得(2023年)

2012年から日本代表に選ばれてきた比江島選手は、日本が世界で勝てなかった苦しい時代を経験してきました。

3年前の東京オリンピックで女子が銀メダルを獲得し、男子は去年のワールドカップで、48年ぶりとなる自力でのオリンピック出場権を獲得。

国内のBリーグも大きな注目を浴びている今こそ、バスケットボール人気をさらに高めるチャンスだと考えています。

渡邊雄太選手と五輪出場決定を喜ぶ

「自分のバスケットボール選手としての夢じゃないですけど、バスケットボール界を盛り上げたいと思っていました。今、バスケットボールが盛り上がっている状況の中で、さらに五輪で成績を残すことによって、もっと人気が突き抜けると思っています。日本代表が盛り上がることが、いちばん人気が上がると僕は思っているので、パリで結果を出したい」

さらなる高みへ

インタビューの最後に、“みずからの集大成”と位置づけることしへの思いを、書いてもらいました。

比江島選手が迷わずに選んだことばは「さらなる高みへ」

1人の選手としてだけでなく、日本のバスケットボール界をも背負おうとするベテランとしての覚悟です。

比江島慎 選手
「現状に満足せず、いろんな意味で自分自身もさらに上を目指したいですし、日本バスケットボール界もさらに高みを目指すべきだと思いますし、それはやっぱり五輪の舞台で発揮されると思います。ブレックスとしても去年を超えたいですし、いろんな意味で高みにいけたらいいなと思います」

(2月14日「おはよう日本」で放送)

《基礎情報》比江島慎 選手

▽生年月日:1990年8月11日
▽身長/体重:191cm/88kg
▽出身地:福岡県
▽出身校:青山学院大
▽主な実績:
・東京五輪 日本代表
・W杯2023 日本代表