大相撲初場所 横綱 照ノ富士が優勝 4場所ぶり9回目

大相撲初場所は千秋楽の28日、横綱・照ノ富士が13勝2敗で並んだ関脇・琴ノ若との優勝決定戦を制して、去年の夏場所以来となる4場所ぶり9回目の優勝を果たしました。

照ノ富士 琴ノ若との優勝決定戦制す

初場所は14日目を終えて照ノ富士と琴ノ若が2敗で並び、3敗で綱とりがかかっていた大関・霧島が追う展開となりました。

千秋楽の28日、先に取組のあった琴ノ若が平幕の翔猿と対戦し、素早い動きが持ち味の相手のまわしを取って「上手投げ」で勝って13勝2敗としました。

照ノ富士が霧島に勝利

続く結びの一番では照ノ富士が霧島に対して立ち合いから得意の右四つになり「寄り切り」で勝って、こちらも2敗を守ったため優勝決定戦が行われることになりました。

照ノ富士が琴ノ若との決定戦を制す

決定戦では照ノ富士がもろ差しを許しましたが、そのあと巧みに巻き替えて逆にもろ差しになり「寄り切り」で勝って9回目の優勝を果たしました。

照ノ富士は去年の夏場所で優勝したあと、腰のけがなどで続く名古屋場所を途中休場し、その後は2場所続けてすべて休場しました。

ただ、3場所ぶりの出場となった今場所は後半にかけて相手を四つに組み止める本来の相撲を見せるなど横綱の力を示しました。

照ノ富士「素直にうれしい」

9回目の優勝を果たした横綱・照ノ富士は「去年、優勝してからけががよくならなくて、休場が続いていた。心だけ折れないよう日々頑張ってきた。素直にうれしい」と喜びを語りました。

13勝2敗で並び優勝決定戦で戦った関脇・琴ノ若については「若い人たちが番付を上げてきているので、そういう子たちとやるのが楽しい。力をつけてきたと相撲をとっても感じるし、もっと鍛えて次の番付を目指してほしい」と期待を寄せていました。そして「あしたから来場所に向けてまた頑張る」と締めくくりました。

【解説】けがや糖尿病に苦しみながらもつかんだ9回目の優勝

3場所ぶりの出場で復活を印象づける優勝を果たした照ノ富士。9回目の栄光の裏にはけがに苦しみ万全ではない中で戦い続ける横綱の姿がありました。

横綱昇進前からひざのけがや糖尿病に苦しんできた照ノ富士ですが、最近は腰にも痛みを抱えるようになり、休場が増えました。横綱在位15場所で全休が5場所、途中休場もあわせると8場所で休場していて、去年、15日間相撲を取ったのはひざのけがから復帰し、優勝を果たした5月場所だけです。

ただ、その裏では出場に向けた調整を懸命に続けていました。去年の九州場所と冬巡業を休場したあとは痛めていた腰の治療に専念すると初場所前は出場をうかがって相撲を取る稽古を続けました。横綱審議委員会の稽古総見では大関・貴景勝と霧島、関脇・大栄翔と12番相撲を取るなど精力的に稽古する姿を見せました。

この時には番数を重ねるごとに息が上がり、ブランクを感じさせましたが初場所初日、新小結の宇良との一番では宇良の腕をかかえ、押し出しで勝利するなど序盤戦は4勝1敗でまとめました。

取組後、支度部屋での取材には息を切らしたまま応じ、手応えを口にすることはありませんでしたが中日8日目以降、取組を重ねるごとに少しずつ前向きなことばが聞けるようになりました。

8日目には「何とか白星をとっている感じ。万全の相撲を取りきれていない。何とか15日間取りきったら違う景色が見えてくるのかなと1日1日必死にやっている」と話すと、錦木を寄り切りで破った9日目には「久しぶりにしっくりきた」とようやく手応えをにじませました。

師匠の伊勢ヶ濱親方も、この錦木戦あたりから自分の相撲が取れるようになっていると評価し「場所前はけがの影響や治療もあって稽古がちょっと足りなかったけど、場所に入ってからの相撲が稽古になっている感じがする。3場所も休んでいたのが場所に慣れてきて、後半から良くなってきた」と話しました。

状態を上げながら迎えた終盤戦、横綱の力を示したのは13日目。次の大関候補の筆頭として期待されたこの時点で単独トップの琴ノ若との一番でした。立ち合い、琴ノ若に右は差されましたが、左は差させず、すぐに右を差して組み合う形をつくるとそこからは琴ノ若に何もさせず「寄り切り」で圧勝しました。

苦しみながら場所中に調子をあげた照ノ富士。けがとうまく折り合いながら横綱としての貫禄を示して目標とする2桁優勝まで、あと1回まで迫りました。

◆照ノ富士のこれまで

照ノ富士はモンゴル出身の32歳。来日後は強豪の鳥取城北高校に入学し、その後、間垣部屋に入門しました。平成23年5月の技量審査場所で若三勝のしこ名で初土俵を踏み、間垣部屋の閉鎖に伴って伊勢ヶ濱部屋に移籍したあと、しこ名を今の照ノ富士に改めました。

そして、身長1メートル92センチ、体重およそ180キロの体格を生かした力強い四つ相撲で順調に番付を上げ、平成26年の春場所で新入幕を果たし、関脇だった平成27年夏場所に12勝3敗で初優勝しました。

初土俵から25場所目での優勝は、年6場所制となった昭和33年以降、幕下付け出しの力士を除いて歴代3位のスピード記録で、場所後に大関に昇進し、横綱候補として期待されました。

しかし、ひざのケガや糖尿病などで平成29年の名古屋場所から4場所連続で休場して大関の地位から陥落するとその後も休場が続き、いったんは序二段にまで番付を下げました。大関経験者が幕下以下に陥落するのは昭和以降では初めてのことでした。

その後はケガや病気の回復に伴って少しずつ稽古を再開して番付を上げ、前頭17枚目「幕尻」で幕内に復帰した4年前の7月場所にはおよそ5年ぶりとなる2回目の優勝を果たして復活を強く印象づけました。

さらに関脇だった3年前の春場所と、21場所ぶりに大関に復帰した夏場所で連続優勝を果たすと綱とりに挑んだ名古屋場所は千秋楽に横綱・白鵬との全勝対決に敗れはしたものの好成績を収めたことが評価されて場所後に第73代横綱に昇進しました。

新横綱として臨んだ秋場所と続く九州場所で連続優勝を果たした後は再びけがに苦しみ、おととしの秋場所でひざを痛めて途中休場すると両ひざを手術して4場所ぶりの出場となった去年の夏場所では8回目の優勝を果たしました。

続く名古屋場所では今度は腰椎の椎間板ヘルニアなどにより4日目から休場し、続く秋場所からの2場所は全休となったものの今場所は後半にかけて調子を上げました。特に四つに組み止めてからの相撲には安定感があり、13日目には単独トップを走っていた関脇・琴ノ若を力強く寄り切って横綱の力を示しました。

八角理事長「照ノ富士 体調が悪い中で立派だ」

日本相撲協会の八角理事長は優勝決定戦の末、9回目の優勝を果たした横綱・照ノ富士について「体調が悪い中、前回よりも今回の方が厳しかったと思う。これだけやって立派だ」と責任を果たした横綱を高く評価しました。

一方、敗れた関脇・琴ノ若については「うまく回り込んだが圧力負けをした。今場所はよくやったと思う。来場所も今場所のようにやってくれればいい」と期待をかけていました。

綱とりに挑み11勝4敗で今場所を終えた大関・霧島については「いい経験ができたのではないか。今場所はだめだったけど、諦めてはだめだ。頑張ってほしい」と奮起を促しました。

《千秋楽・中入り後の勝敗》

▽琴勝峰に宝富士は宝富士が「押し出し」。

▽友風に王鵬は王鵬が「送り出し」。

▽剣翔に武将山は剣翔が「はたき込み」。

▽阿武咲に佐田の海は阿武咲が「押し出し」で勝ちました。

▽玉鷲に新入幕の大の里は大の里が「引き落とし」で勝って11勝目。
大の里は初めての三賞・敢闘賞受賞です。

▽新入幕の島津海に明生は明生が「突き落とし」。
島津海は勝てば敢闘賞受賞でしたがなりませんでした。

▽御嶽海に遠藤は御嶽海が「突き落とし」で物言いがついた一番を制しました。

▽一山本に妙義龍は妙義龍が「押し出し」。

▽美ノ海に正代は美ノ海が「寄り切り」。

▽豪ノ山に隆の勝は隆の勝が「突き落とし」で物言いがついた一番を制しました。

▽平戸海に阿炎は平戸海が「はたき込み」で勝ち越しました。

▽翠富士に金峰山は金峰山が「突き出し」。

▽湘南乃海に熱海富士は湘南乃海が「寄り切り」。

▽若元春に錦木は若元春が「寄り切り」で10勝目です。
若元春は殊勲賞を受賞しました。

▽竜電に宇良は宇良が「伝え反り」で物言いがついた一番を制しました。

▽朝乃山に大栄翔は大栄翔が「引き落とし」で勝ちました。

▽琴ノ若に翔猿は琴ノ若が「上手投げ」で勝ちました。
琴ノ若は初めての技能賞受賞です。翔猿は負け越しました。

▽横綱・照ノ富士に大関・霧島は照ノ富士が「寄り切り」。

優勝決定戦では照ノ富士が「寄り切り」で琴ノ若に勝って9回目の優勝を果たしました。