樹木が消失?道や拠点が出現…衛星画像に見るイスラエルの戦術

ガザ地区では、イスラエル軍によるガザ地区への激しい空爆と地上侵攻が、7日間の戦闘休止を挟んで続いています。
NHKはガザ地区の衛星画像を独自に入手。分析を進めていくと、イスラエル軍の軍事行動の一端が見えてきました。

ガザ地区はワディ・ガザと呼ばれる川で南北に分かれています。

NHKは、アメリカの企業プラネットからイスラエル軍がガザ地区最大の病院などへの攻撃を強めていた11月15日と16日の衛星画像と、戦闘が一時休止していた11月26日のガザ地区北部の衛星画像を入手し、それぞれを比較して分析。専門家とともに読み解きました。

なぜ?消えた樹木

住宅が密集するエリアでは、11月16日の画像では入り組んだ建物の間にある樹木が見られましたが、11月26日の画像では地面が見えていることが確認できます。

農地のような場所でも植物がなくなって「さら地」になっていました。さら地には植物が焼けた形跡はありません。

ガザ市の南側の農地のような場所でも植物がなくなっている様子が見てとれます。

【画像3】

衛星画像の分析では、そうした場所は11月中旬から下旬にかけてガザ地区北部の少なくとも68か所、合計で92ヘクタールに上ることが分かりました。

専門家「ハマスの戦闘員が隠れる場所 イスラエル軍が伐採か」

東京大学中東地域研究センター 鈴木啓之特任准教授
「ハマス側が公開した動画では、戦闘員が樹木に隠れてイスラエル軍を狙うようなものもあった。戦闘員が隠れる場所をなくし、イスラエルの歩兵部隊などの安全を確保するために、イスラエル軍がブルドーザーなどで伐採した可能性が高い。今後、ガザ地区の南部でも同じような動きが出てくると思う」

新たに道が出現 何のため?

次に11月26日と12月2日の画像を比較すると、画像の中央のあたり、ガザ地区北部の幹線道路のそばに新たに軍用車両が集まる拠点が設けられたことも確認できました。

ガザ地区を南北に貫く幹線道路のサラハディン通りのそばを撮影した画像では、11月26日にさら地だった場所が12月2日には広さ1ヘクタールほどの拠点になっていて、複数の車両や資材のようなものが置かれているのがわかります。

【画像5】

さらに、この拠点から画像の左上の海に向かって新たな道が延びています。

11月15日や16日の時点では、車両が通過したような線状の黒っぽい痕跡が地面についていた場所が、11月26日の段階ではくっきりとした道になって海岸までつながっています。

拠点や道路が設けられた場所は、ガザ地区を南北に分けるワディ・ガザと呼ばれる川の近くです。

鈴木啓之特任准教授
「イスラエル軍は道路を東西に設けることで南北に長いガザ地区の真ん中にくさびを打ち込み、人の流れを遮断した形になる。車両基地はちょうどこの道の真ん中近くに位置し、こうした施設は北部を包囲するために主に利用されるとみられる」

戦闘の焦点は南部へ 熱源データを分析

NASA(アメリカ航空宇宙局)は、森林火災など地表の熱源を人工衛星で観測していて、空爆・砲撃といった戦闘による熱源が検知されることがあります。

(10月7日~11月23日の累積データ)

NASAの人工衛星がとらえた熱源データでは、戦闘休止の期間中ガザ地区で観測されていなかった熱源が、今月1日のイスラエル軍の軍事作戦再開後に再び確認されています。

イスラエルとハマスの衝突が始まった10月7日以降は、
▼ガザ地区に近いイスラエル側のほか、
▼ガザ地区北部にある最大の都市ガザ市などで赤い点で示される熱源が多く確認されています。

ハマスによるイスラエル側への攻撃やイスラエル軍によるガザ地区への空爆などをとらえたものとみられ激しい戦闘の様子が浮き彫りになっています。

(12月1日~の累積データ)

一方、イスラエルとハマスが戦闘の休止で合意していた先月24日からの7日間は熱源は観測されていません。
ただ、イスラエル軍が軍事作戦の再開を発表した今月1日以降は、ガザ地区の北部に加えて一部は南部でも熱源が観測されています。

専門家「激しい戦闘は次第に南部へ移ると予想」

鈴木啓之特任准教授
「熱源が確認された場所は、イスラエル軍が軍事行動を展開している場所と重なりがあるように見える。戦闘再開後、ガザ市内への攻撃の手が緩んでいないと言える。今後、激しい戦闘は次第に南部に移っていくと予想される」