【6日詳細】イスラエル軍 ハマス幹部捜索へハンユニス攻勢か

パレスチナのガザ地区では、イスラエル軍が南部の中心都市ハンユニスに地上部隊を進め、これに対してイスラム組織ハマスが抵抗し、戦闘が繰り広げられています。

現地メディアは、ハンユニスにハマスの幹部が潜伏している可能性があるというイスラエル軍の見立てを伝えていて、地下のトンネル施設の捜索に向け攻勢を強めるものと見られます。

イスラエルやパレスチナに関する日本時間12月6日の動きを、随時更新でお伝えします。

岸田首相 イスラエルのネタニヤフ首相と電話で会談 衝突後初

岸田総理大臣は6日夜、イスラエルのネタニヤフ首相と電話で会談しました。

電話会談は、6日夜7時半すぎからおよそ20分間、行われました。

ガザ地区の情勢をめぐって、岸田総理大臣は先週、UAE=アラブ首長国連邦を訪問した際に、イスラエルのヘルツォグ大統領と会談し、国際法を順守すべきだとする日本の立場とともに、事態の早期沈静化などの重要性を伝えていて、ネタニヤフ首相にも同様の認識を示したものと見られます。

また、イスラエルと自立可能なパレスチナ国家が共存する「2国家解決」を支持する考えも伝えたものと見られます。

岸田総理大臣とネタニヤフ首相の電話会談は、ことし10月に、イスラエルとハマスの軍事衝突が始まって以降、初めてです。

ハマスが襲撃時に女性たちに集団で性的暴行加えたか

イスラエルとイスラム組織ハマスの一連の衝突のきっかけとなった10月7日のハマスによる大規模な襲撃について、複数のメディアは、イスラエル当局から提供された目撃者の証言などに基づき、ハマスが大勢の女性たちに集団での性的な暴行を加えたと伝えています。

このうちロイター通信は、イスラエルの警察に提供された動画として、ハマスによる性的な暴行を目撃したという人のインタビューを伝えています。

この中では、襲撃の現場となった音楽イベントの会場でハマスの複数の戦闘員が1人の女性に対して集団で暴行を加えていたと話しています。

イスラエルのネタニヤフ首相は5日、解放された人質の家族に面会したあと「これまでになくむごいレイプや性的暴行について聞いた」と発言しました。

また、アメリカのバイデン大統領は5日大統領選挙に向けた集会でこの問題に触れ「想像を絶する残酷な証言だ」としてハマスを非難しました。

複数の目撃者と面会したというイスラエルの専門家は、イギリスの公共放送BBCの取材に対して「ハマスは、過激派組織IS=イスラミックステートなどから、女性に対する攻撃を武器として使う方法を学んだようだ」と述べて、性的な暴行は戦闘の一部として行われたという見方を示しています。

一方、ハマスはイスラエル側が示している証言に対して「プロパガンダに過ぎず、事実に基づかない糾弾だ」などと主張し、性的な暴行を否定しています。

イスラエル軍 ハマス幹部捜索へ ハンユニスの攻勢強めるか

ガザ地区を実効支配するハマスへの軍事作戦を進めるイスラエル軍は6日、過去24時間でおよそ250回の空爆を行ったと発表しました。

一方のハマス側も、ハンユニスでの戦闘でイスラエル軍の車両24両を破壊し、兵士8人を死傷させたと主張し、激しい戦闘が繰り広げられているもようです。

イスラエルの有力メディアハーレツは、イスラエル軍のねらいについて「ハンユニスの地下トンネル施設にハマスのガザ地区の指導者、ヤヒヤ・シンワル氏をはじめ幹部が潜んでいる可能性があると見ている」と伝えていて、イスラエル軍は地下のトンネル施設の捜索に向け攻勢を強めるものと見られます。

こうした中、戦闘の犠牲になる市民が増えていて、ハンユニス市内の病院には6日、救急車が次々と到着し、子どもを含む多くの負傷者が搬送されています。

ラファに避難の住民増加 燃料がなく飲料水不足

イスラエル軍がガザ南部の中心都市、ハンユニスに部隊を進めるなか、より南にあるラファでは避難してくる住民の数が増え続けています。

ラファには海水を処理して淡水にする設備がありますが、必要な燃料が不足していて十分に稼働できず、住民に飲料水が行き渡らない事態になっています。

南部のラファで5日、撮影された映像では、子どもたちが空のペットボトルを抱えるなどして飲料水を求めて列を作り、何時間も待っている様子が映っています。

海水を処理して淡水にする設備のエンジニアは「最大の問題は、設備を稼働させるために必要な燃料の不足です。冬なので、ソーラーパネルで発電できる電力量は非常に限られ、長い間稼働することはできない。加えて、以前と比べて住民の数は倍になり状況は非常に厳しい」と話していました。

ガザ地区中部からハンユニスに避難し、さらに南のラファに来て、いまは路上で寝起きせざるをえないという男性は「子どもたちに水を飲ませるために、12、3キロ歩いてここにたどりついた。この惨状がいつまで続くのか」と訴えていました。

米中外相が電話会談 意思疎通の維持を確認

イスラエル・パレスチナ情勢をめぐり、アメリカのブリンケン国務長官と中国の王毅外相が6日、電話で意見を交わし、意思疎通を維持していくことを確認しました。

アメリカ国務省の発表によりますと、この中でブリンケン国務長官は「戦闘が拡大しないようすべての関係国などが取り組むことが不可欠だ」と指摘しました。

中国外務省によりますと、これについて王毅外相は「解決策の核心はパレスチナの建国の権利と自決権を尊重することだ」などと述べ、パレスチナ側に立った中国側の考えを強調しました。

中国外務省はブリンケン長官が「2国家共存」による解決に賛同したとしています。

電話会談では、紅海を航行していた商船がイエメンの反政府勢力フーシ派に相次いで攻撃されたことをめぐっても意見が交わされたということで、両者は意思疎通を維持していくことを確認しました。

ハンユニスで感染症がまん延 犠牲者増加の懸念

ガザ南部の中心都市、ハンユニスでは、避難民が増え続ける中、路上での生活を余儀なくされる人が増えています。道にはごみがあふれるなど、衛生環境が悪化していて、呼吸器系の感染症や、下痢などの症状を訴える人が増えているということです。

診療所に幼い娘を連れてきた母親は、「娘はせきや高熱で苦しんでいる。避難所の学校は過密状態で多くの子どもの間で感染症がまん延している」と話していました。

診療にあたった医師は、「飲み水も発電機を動かす電気も足りていない。戦闘が続く中で感染症のまん延は防ぎようがない」と話していました。

WHO=世界保健機関によりますと、ガザ地区内で稼働している病院は、これまでに36か所から18か所に半減し、なかには応急処置しか行えない病院や想定の2倍以上の患者を受け入れている病院もあるということです。

イスラエル軍がハンユニスの中心部に部隊を展開させたと明らかにし、戦闘による犠牲者が増える懸念が高まっていますが、WHOはガザ地区では多くの人が病気で命を落とすリスクも増しているとして、警鐘を鳴らしています。

イスラエル軍 ガザ地区南部の中心都市への空爆強める

イスラエル軍はイスラム組織ハマスへの軍事作戦を続け、特にガザ地区南部の中心都市ハンユニスへの空爆を強めています。

イスラエル軍の部隊の司令官は5日、SNSに、「われわれはハンユニスの中心部にいる」と投稿し、市内に部隊を進めたことを明らかにしました。

ガザ地区の保健当局によりますと、戦闘開始からこれまでの死者数はガザ地区で1万6248人にのぼっています。

こうした中、イスラエル軍の報道官はアメリカのCNNテレビのインタビューで、ガザ地区ではイスラエル軍がハマスの戦闘員1人を殺害するためにおおむね2人の民間人の犠牲が出ていると伝えられたことについて、「民間人を人間の盾として利用するテロ組織と軍との紛争においては、世界でも類をみない、非常にポジティブな比率だ」と述べ、一定程度の民間人の犠牲はやむをえないという考えを強調しました。

一方、ハマスの政治部門の幹部は5日夜、レバノンの首都ベイルートで会見し、「イスラエルが侵攻をやめないかぎり、交渉も人質の交換もない。人質の命に責任を負っているのはネタニヤフ首相だ」などと述べ、イスラエル側を批判しました。

アメリカの有力紙、ウォール・ストリート・ジャーナルは4日、イスラエル軍がハマスの地下トンネルに海水を注入することを検討していると伝えました。

アメリカ政府の当局者の話として伝えたところによりますと、イスラエル軍の目的は地下トンネルを破壊し、ハマスの戦闘員を排除するためだとしています。記事では、人質を解放する前にこの作戦に踏み切るかどうかははっきりしないとしています。

イスラム聖戦 ハンユニスでの戦闘の様子だとする映像公開

イスラム組織ハマスと連帯関係にあるパレスチナの武装組織イスラム聖戦は5日、ガザ地区南部のハンユニスでの戦闘の様子だとする映像を公開しました。

映像では戦闘員が建物に隠れながら銃を撃ったり、市街地を走り回る様子が確認できます。

また、ロケット砲や迫撃砲を使って攻撃している様子も映されています。

イスラム聖戦は映像が撮影された詳しい場所や時間を明らかにしていません。

イスラエル軍の部隊の司令官は5日、ハンユニスの中心部に部隊を進めたことを明らかにしていて、ハマスだけでなくイスラム聖戦も加わって戦闘が激化しているものとみられます。

避難を繰り返してきた人たち「どこに行けば」

イスラエル軍がガザ地区南部での地上侵攻を進め、ハンユニス周辺の住民に退避を通告するなか、退避先とされた南部ラファでは、避難を繰り返してきた人たちが苦しい生活を余儀なくされています。

NHKガザ事務所のサラーム・アブタホンカメラマンが4日、南部ラファの郊外で撮影した映像では、避難してきた大勢の人が道路脇にテントをたてて、家族が雨や寒さをしのげる場所を確保しようとしている様子が写っています。

なかには燃料不足で車が動かせないため、ロバの荷車に積めるだけの家財道具を積んで避難している人たちの姿もありました。

このうち、もともとはガザ市に住んでいて、避難先のハンユニスからより南のラファへと再度の避難を余儀なくされた男性の一家は、ラファ郊外の空き地でテントを組み立てていました。

持ち出せたのはなべやフライパンなど一部の家財道具だけで、男性は「避難していたハンユニスでもテントで生活をしていたが、ラファに行くように言われました。でも、このあとはどこに行けばいいのでしょう。もともとはガザ市にある難民キャンプの出身です。いまはそこの住民は誰も生きていないと思います。次はエジプトに行けとでも言うのでしょうか」と話していました。

また、別の男性は「もともとは北部のベイトラヒヤに住んでいましたが、避難していた南部の学校が攻撃を受け、ラファに避難してきました。どこにも安全な場所はありません。テントをたてているこの場所も荒れ地ですが、ほかに選択肢がないのです。避難所の学校もいっぱいで私たちに行くところはありません」と話していました。

各国で停戦呼びかけた日本のNGO「止めるための行動を」

各国を船でめぐって国際交流や平和活動を行っている日本のNGO「ピースボート」は、今回の武力衝突を受けてギリシャやトルコ、それにエジプトの港に立ち寄り、停戦を呼びかける活動を行いました。

6日、横浜港に船が帰港し、船体には「ガザでの殺りくをやめろ」と書かれた幅30メートルの横断幕が掲げられ、乗客たちが「今すぐ停戦を」などと声を上げていました。

このあと、アラブ諸国などの駐日代表や外交官らも参加して会見が開かれ、ピースボートの吉岡達也共同代表は「子どもたちを含めて多くの命が犠牲となっている今の状況は、地球上すべての人たちに責任がある問題であり、これを止めるために何ができるかを見つめ直し、行動していかないといけない」と訴えました。

パレスチナ暫定自治政府の駐日代表部のワリード・シアム代表は「連帯の思いを示してくれた団体や乗客の方々の行動に感謝したい。ガザで起きていることはイスラエルだけでなく、それを支持する国々の責任であり、イスラエルとパレスチナによる報復を繰り返さないために今こそこの戦いをやめないといけない」と話していました。