各省の注目・重要予算

ポイント

そのほか、各省庁が力を入れていく政策に関する予算です。


防衛に関する予算

ミサイル防衛能力の強化

防衛省は、防衛力の抜本的強化策の柱の1つであるミサイル防衛能力を強化する費用として1兆2477億円を計上しました。

このうち配備を断念した陸上設置型の迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」に代わりイージス・システム搭載艦2隻を建造する費用として3731億円を盛り込みました。

また探知や迎撃が難しいとされる「極超音速ミサイル」などを迎撃できる新型のミサイルを、アメリカと共同開発するための費用として757億円を盛り込んでいます。

弾薬庫の新設

防衛省は、自衛隊が戦いを継続する能力を確保するためとして、およそ10年後までに全国で弾薬庫130棟程度を新たに整備するとしていて、2024年度の予算案に関連の費用として124億円を盛り込みました。

防衛省によりますと、現時点で弾薬庫の新設が決まっているのは6府県の合わせて33棟で、内訳は青森県の大湊基地が6棟、京都府の祝園分屯地が8棟、大分市の大分分屯地が9棟、宮崎県のえびの駐屯地が2棟、鹿児島県の瀬戸内分屯地が3棟沖縄県の沖縄訓練場が5棟となっています。

大湊基地と大分分屯地のうちそれぞれ2棟については、「反撃能力」として使われる射程の長いミサイルも保管できる大型の弾薬庫だとしていて、大湊基地では2023年6月、大分分屯地では11月にそれぞれ工事が始まっています。

また祝園分屯地では、8棟の工事費用としておよそ102億円を計上していて2024年度中に土地の造成などに着手する可能性があるとしています。

このほか、弾薬庫の整備に適しているか調べるため、北海道の多田分屯地近文台分屯地沼田分屯地足寄分屯地日高分屯地白老駐屯地のほか京都府の舞鶴基地、広島県の呉基地、鹿児島県さつま町内の合わせて9か所で調査を行っているか、今後行うとしています。

防衛省はこのほかの設置場所については検討中だとしていて、「示すことができる情報については、関係自治体や住民にしっかりと説明をする」としています。

沖縄県内の自衛隊施設の整備費

防衛省は、2024年度予算案で沖縄県内の自衛隊施設の整備費用として473億円を盛り込み、那覇駐屯地で庁舎の整備をするほか、うるま市ではゴルフ場の跡地を取得し、新たな訓練場として整備することにしています。

このうち陸上自衛隊那覇駐屯地では、2027年度までに師団に改編される第15旅団の司令部庁舎の一部を地下に整備するための費用などとして141億円を計上しています。

また、陸上自衛隊石垣駐屯地では小銃の射撃場を整備する費用などとして104億円を盛り込んでいます。

さらにうるま市では、陸上自衛隊の訓練場を新たに整備するためとして、ゴルフ場の跡地、およそ20ヘクタールを取得します。第15旅団の師団への改編に伴って隊員数百人の普通科連隊が現在の1つから2つとなる見込みで、訓練回数も増加する可能性があるためとしています。

想定しているのは▽災害救助訓練や、▽戦闘訓練、▽地対空ミサイルや地対艦ミサイル部隊の展開訓練などで、ヘリコプターを使った訓練は、うるま市と相談したうえで決めたいとしています。

土地の取得費用については取得交渉に影響するとして明らかにしていません。このほか、那覇基地では海上自衛隊の航空機の整備場の整備費などとして13億円を計上しています。

海上保安庁の予算 過去最大に

海上保安庁は過去最大となる2611億円を計上しました。大型巡視船を新たに5隻造る費用、およそ129億円を盛り込んでいて、2027年度までに89隻体制とします。

また、大型無人航空機の運用拠点の移転にともなう費用や、2メートル程度の大型ドローンなど新技術の活用のための費用、自衛隊との連携強化のため、秘匿性の高い通信機器を開発する費用も盛り込んでいます。

住民税減税に伴う自治体減少分は国費で

地方自治体に配分する地方交付税は、今年度よりも3000億円多い18兆7000億円となっています。

また、政府の経済対策で生じる、住民税の減税に伴う自治体の減収分については自治体からの要望を踏まえ、地方特例交付金として全額国費で補填(ほてん)します。

さらに、地方交付税の財源の一部となっている所得税の減税についても、自治体に影響が出ないよう財源が確保されました。

食料の安定供給

農林水産省は、食料の安定供給に向けて、水田の転用を後押ししようと、輸入への依存度が高い小麦や大豆、飼料や、高収益が見込まれる野菜などの生産に取り組む農家を支援する交付金などの費用として、あわせて2905億円を盛り込みました。

行政サービスの充実

デジタル庁は、各省庁や地方自治体が使用するシステムの共通化や、マイナンバーカードの取得者向けの専用サイト「マイナポータル」の機能の拡充など、ネットワークの整備やオンラインによる行政サービスの充実を推進するための費用として、4803億円を盛り込みました。

所有者不明の土地の解消促進

所有者が分からないまま放置されている土地問題を解消するため2024年4月から相続する際の登記が義務化されることを受け、法務省は広報や相談体制を強化する費用などとして74億円を盛り込みました。

法テラスの体制強化

法務省は、旧統一教会の被害者救済や、生活に困窮しているひとり親世帯の支援などを充実させるため日本司法支援センター=法テラスの体制を強化する費用として325億円を計上しています。

休眠状態の宗教法人対策

文化庁は、活動実態がない休眠状態の宗教法人の対策や整理などを進めるため、宗務行政の推進に今年度の10倍近い3億4600万円を計上しました。

休眠状態の宗教法人を放置すると、第三者に法人格を取得され脱税や営利目的の行為に悪用されるおそれがあるとして、都道府県が行う実態調査や解散命令請求などの対策を支援する方針です。

このほか、宗務行政を行っている文化庁の宗務課に旧統一教会への対応などにあたる「宗教法人行政室」を新設し、課の定員も現在の8人から14人に増員されます。

復興庁 福島国際研究教育機構

復興庁は2023年4月、福島県浪江町に設立された「福島国際研究教育機構」で行う研究開発や施設整備などの費用として2023年度に比べて9億円多い154億円を計上しました。この中には、今後の本格的な研究開発に向けて計画の評価などを行うための調査費も新たに盛り込まれています。

特定帰還居住区域の除染やインフラ整備

復興庁は、福島県内になお残る309平方キロ余りの「帰還困難区域」のうち、帰還を望む住民の意向を受けて政府がことし新たに設けた「特定帰還居住区域」で除染やインフラ整備を進めるための費用として450億円を計上しました。

沖縄振興予算

内閣府は、沖縄振興予算として2023年度の当初予算に比べて1億円少ない2678億円を計上しました。沖縄県は政府に対し3000億円台を確保するよう求めていましたが、3年続けて下回る形となりました。

一方、県が使いみちを自由に決められる「一括交付金」は10年ぶりに増額され、2023年度より4億円多い763億円となっています。

外務省 偽情報対策などを強化

外務省は、OSA=(オーエスエー)という同志国の軍に防衛装備品を供与する取り組みについて、支援内容を拡充するため、今年度の2.5倍となる50億円を計上しました。

また、いわゆる偽情報対策として、SNSなどのモニタリングや分析、対外発信を強化する費用として9億2000万円、サイバー攻撃に対応するため、在外公館を含む外務省全体の情報セキュリティーを強化する費用として76億円を計上しています。

強度行動障害の支援強化

厚生労働省は、自分自身や周りの人を傷つけたり、ものを壊したりといった行動が頻繁にみられる「強度行動障害」のある人の支援を強化するため、4億3000万円を盛り込みました。

強度行動障害への対応方法について専門的な知識を持った「広域的支援人材」を新たに育成して来年度(R6)から都道府県の支援拠点などに配置します。

障害者が他の人を繰り返したたいてしまうなど、グループホームや入所施設などで支援が難しくなった場合に、現地に繰り返し足を運び、指導や助言を行います。