民主党の重鎮、副大統領を経て大統領に

アメリカのジョー・バイデン大統領はアメリカ東部ペンシルベニア州出身の80歳。中流家庭に生まれたカトリック教徒で、子どものころはきつ音に悩み、鏡を見ながら話し方の練習をしていたことなどを明らかにしています。弁護士などを経て29歳で連邦議会の上院議員に初当選し、その後、2009年までの36年間東部デラウェア州選出の上院議員を務め、民主党中道派の重鎮として知られてきました。2009年に副大統領に就任してからは、外交分野や議会での経験が浅い当時のオバマ大統領を支え、在任中、2011年と2013年に来日しました。このうち2011年には東日本大震災の被災地を訪れて復興の現状を視察しています。2020年に行われた大統領選挙では、当時のトランプ大統領が国民の分断を深めたなどと批判し、結束と融和を訴えて当選。翌年、歴代の大統領としては最高齢の78歳で第46代大統領に就任しました。

【家族を亡くした悲しみ乗り越え…】
バイデン大統領は家族を不慮の事故や病気で亡くしています。上院議員に初当選したわずか1か月後、当時の妻と1歳の娘が交通事故で亡くなったほか、このとき助かった長男も2015年に脳腫瘍で46歳の若さで亡くなりました。バイデン大統領はこれまで演説でたびたび家族を失った悲しみを乗り越えたことに触れて人の痛みが理解できると述べています。また、がんによる死亡率を2047年までに半減するという目標を掲げ、検診の促進など対策に力を入れています。
【トランプ政策からの転換も国は分断したまま】
バイデン大統領は政権発足当初から気候変動対策を最優先課題の1つに掲げ、前のトランプ政権で離脱した温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」に復帰したほか、外交では国際協調路線を掲げて、トランプ前政権の「アメリカ第一主義」からの転換を図り、多くの国から歓迎されました。ところが、2021年夏のアフガニスタンからの軍の撤退をめぐる混乱をきっかけに支持率を落とし、その後も、記録的な物価上昇などを背景に支持率が低迷しています。2022年11月に行われた中間選挙では、議会下院で野党・共和党に多数派を奪われ、大統領の政党と議会の多数派の政党が異なるいわゆる「ねじれ」の状態になりました。
【中国やロシアに「民主主義」連携で対抗】

外交では「インド太平洋戦略」を政策の柱としていて、「最大の競合国」と位置づける中国に対抗するため、民主主義や法の支配といった価値観を共有する日本などの同盟国や友好国との連携の強化を重視しています。これまでに▼日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4か国でつくる「クアッド」の枠組みで首脳会合を開いたほか、▼日本など14か国が参加する新たな経済連携、IPEF=インド太平洋経済枠組みの交渉の開始を発表し、中国に対抗する姿勢を打ち出しています。また、ウクライナへの軍事侵攻を進めるロシアを「専制主義国家」と位置づけ、制裁を主導するとともに、ウクライナに対しては大規模な軍事支援を続けています。