「みんな国民は戦禍の中で死んでいくんですよ」
終戦から71年のことし、藤間宏夫さん(78)は戦争体験を子どもたちに伝える催しで、初めてみずからの経験を語りました。
両親や兄弟と一緒に暮らしていた藤間さんは、6歳のときに東京大空襲にあいました。一面、焼け野原になり、日本橋に近い藤間さんの自宅にも焼い弾が直撃しました。母親に手をひかれ、裸足で走って逃げた記憶は、藤間さんの心に今も鮮明に残っているといいます。
しかし、戦争を知らない世代には理解してもらえないと思い、自らの記憶にふたをしてきたといいいます。「あまりにもギャップがありすぎて今の方と話しても通じない。71年ですからね、絶対通じないなと思っていましたけど」と話していました。
その藤間さんの気持ちに変化が表れたのはことし1月に東京大空襲の資料の展示施設を訪れた時でした。
戦争体験を話す人が年々少なくなっていることを知りこのまま体験を語らずに生涯を終えるときっと後悔すると考えるようになったのです。
そして催しの当日。「焼夷弾というのは油ですから油が落ちて火がまかれて道路にも火がつくんです。順番につくんじゃない。火が走るんですよ。体中震えがとまらないですよ、がたがたがたがた」
自分の体験をきちんと受けとめてくれるのか、不安を抱えながら藤間さんは話を始めました。
藤間宏夫さん:
「日本は71年間平和できたんですよ。これはかけがえのないことですよね、僕らはこちらからさよならしちゃう年齢になりましたけど、なんていったって平和を守っていただきたい」
藤間さんの生々しい体験を聴いて次第に表情が真剣になっていった子どもたち。そのうちの1人は、「テレビなどで戦争のことを見てもあまり想像がつかなかったけれど、きょうのお話を聞いて戦争は二度と起こってほしくないと思いました」と話していました。
話し終えた後の藤間さんは「何年チャンスがあるか分かりませんが、僕の体験を伝えていば少しは平和に対して小さい子なりに認識を持ってもらえるんではないか」と手応えを感じていました。
戦争を体験した人は高齢化が進み今、戦争を知らない世代は全体の8割を超えています。
東京大空襲・戦災資料センターによりますと、藤間さんと同じようにことし初めて自分の戦争体験を語る人がほかにも2人いるということです。
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