VRや人気キャラで 「今」に向き合う特攻隊施設

VRや人気キャラで現代に向き合う特攻隊施設(2018年8月14日 水戸局 照井隆文記者)

旧日本海軍のパイロット養成機関だった茨城県の筑波海軍航空隊からは、多くの若者が特攻隊員として戦地に向かい、命を落としました。
今も残る戦争の記憶を若い世代にどう伝えていくのか、若者たちの意識が変化する中で、その施設は議論に一石を投じています。

特攻隊の記憶を残す戦跡

茨城県笠間市にある筑波海軍航空隊記念館には、太平洋戦争の激戦地、ソロモン諸島で見つかったゼロ戦や、特攻隊員が両親に残した遺書など、戦争にまつわる数多くの資料が展示されています。

昭和13年にできた筑波海軍航空隊では、旧日本海軍の主力戦闘機、ゼロ戦を操縦するパイロットの養成などが行われてきました。

太平洋戦争末期には多くの若者が特攻隊員として戦地に送られ命を落としました。

航空隊司令部の建物は今もそのままの姿で保存され、貴重な戦跡として当時の面影を残しています。

戦跡は貴重な語り部

記念館の館長の金澤大介さんは特攻隊員たちが残した資料などを収集し、展示に力を入れてきました。

金澤大介さん:
「戦争体験者がいなくなってしまうタイムリミットが迫っているんじゃないかと考えるときに、こういう戦争関連の史跡が、戦争の語り部となるようなものになるのではないかと考えています」

司令部の建物を当時の姿のまま保存するため、ことし6月に記念館は改装され、戦争の記憶を伝える貴重な資料は、併設された建物で展示されています。

戦争を知らない若い世代には、ただ資料を集めて展示するだけでは届かないのではないかと感じていた金澤さんは、これまでにはない新しいアプローチ方法を考えました。

VRや擬人化のキャラグッズも

バーチャルリアリティーによって特殊なゴーグルをかけるとゼロ戦の操縦席から見える光景を体験できるという展示です。

案内役は、アニメのようなオリジナルのキャラクターが務めます。

さらに戦艦を擬人化した若者に人気のゲームにも注目し、グッズの販売なども行っています。

施設を訪れた子どもたちからは「おもしろかった」とか「もっとよく飛行機のことを知りたくなった」という声が聞かれました。

金澤大介さん:
「当時の様子を知らない、空気感がわからない子どもたちにとっては、展示はとても退屈なものとして映っていた。何を話しているのかわからないのか、飽きてしまっているようだった。年齢や理解力に合わせた伝え方があるのではないかと思っています」

戦争を知る世代はどう受け止める

こうした伝え方に対する受け止め方はさまざまです。

横浜市の松井方子さんは、筑波海軍航空隊の関係者などで作る会の会長を務めています。

父親の横山保さんはゼロ戦のパイロットで、昭和19年に部隊のナンバー2に当たる飛行長として着任し、多くの若者を特攻隊員として戦地に送り出しました。

施設を訪れると、松井さんが必ず足を運ぶ部屋があります。それは当時のまま残されている父親が使っていた「飛行長室」です。

かつて父親も見つめたであろう窓からの景色の先には滑走路があり、みずからの命令によって多くの若者が特攻隊員として飛び立っていきました。

松井さんは当時と同じ光景を前に、父親がどんな思いで特攻隊員を見守っていたのか思いをはせると言います。

若い命が奪われた悲惨な戦争の歴史を知るには、多くの人にこの場所を訪れてもらうことが大切だと考えています。

松井方子さん:
「漫画化されることに(元隊員の中には)違和感を覚える人もいると思う。命を賭けた方たちから見れば、いい感じはしないのかもしれないし、賛否両論あると思う。ただ私は、最初はとにかく親しみから来てもらえればいいと思っていて、それで見学の方が興味をもって来てくれればありがたい」

変化も見え始めた

施設にはこうした伝え方に反対や疑問の声も寄せられていますが、その一方で、アニメや映画がきっかけで訪れた若者たちの中には、元特攻隊員の体験を聞いたり、遺品を見たりすることで、変化も見え始めています。

若者が残したアンケートの記述です。

「映画のロケ地が目的で来ましたが、それ以上に実在した方たちの写真や遺品などを見ることができ、とてもよい時間が過ごせました」

「ゲームでもいいので興味を持つきっかけを作ることが重要だ」

金澤さんは、きっかけはともあれ、展示を見てもらえさえすれば、若い人たちに平和の大切さが伝わっていくと信じています。

金澤大介さん:
「ここは空気感、リアルがある。73年前の航空隊の方々が見ていた景色と、ほぼ同じ景色を見ることができる。バーチャルリアリティーを見た子どもたちにも、搭乗していたはずのゼロ戦のその後の残骸、戦争のリアルを感じてもらって、遊びだけでない考える要素を感じてもらえればと思います」

戦争で散った若い命が残していった思いを、どう次の世代に伝ていくのか、模索し向き合っていくことが、今を生きる私たちに課せられています。