元将兵たちの「戦友会」に若い世代が増加?きっかけは

元将兵たちの「戦友会」に若い世代が増加?きっかけは(2020年9月11日 映像センター 早川きよカメラマン )

先の大戦に参加した元将兵などでつくる「戦友会」は、慰霊や戦争の記憶を後世に伝える活動を続けてきました。高齢化で会員数が減少するなかで、インターネットを活用した継続的な情報発信で若い世代の会員が増えている戦友会があります。

戦友会の活動を動画サイトに発信

戦場から生還した102歳の元衛生兵が、戦後初めて上官の墓参りに訪れた際の様子です。

元衛生兵が初めて上官の墓参り(2020年6月新潟新発田)

こちらは海外の戦場に残された遺骨を収集する動画の一コマ。

ガダルカナル島での遺骨収集(YouTubeより)

いずれもSNSや動画サイトで発信されたもので、投稿したのは戦友会のひとつ「全国ソロモン会」です。

会は南太平洋のビスマーク・ソロモン諸島に従軍した元将兵が、慰霊と遺骨収集を目的に昭和40年に設立しました。

「自然消滅」「解散」で減少続く戦友会、しかし

昭和40年 全国ソロモン会設立

「戦友会」は先の大戦に参加した元将兵などで作られた団体で、慰霊や戦争の記憶を後世に伝えるために、戦後まもなく全国各地で設立されました。

専門家によりますと「戦友会」は、各地で少なくとも5000団体があったとみられていますが、会員の高齢化で解散や自然消滅する会が相次いでいるということです。

「全国ソロモン会」も同様で、設立時に2800人余りだった会員も現在は約220人まで減っています。

しかしこの会の違う点はこの5年間、若い世代を中心に会員が増え続けていること。新たに加わった会員は約50人にのぼります。その多くは会が発信するSNSやインターネットをきっかけに入会しました。

31歳男性「きっかけは検索で」

去年入会した三輪勇太郎さん(31)もその1人です。

三輪さんの祖父は会の戦友たちと同じ戦場から帰還しましたが、三輪さんが高校生の時に祖父は亡くなりました。

小学3年生のときの三輪さんと祖父

三輪さんは祖父の戦争体験についてほとんど知りませんでしたが、去年、祖父がいた戦場の「ブーゲンビル島」をネットで検索してソロモン会のサイトを見ました。

そこには戦時中、武器や食料の補給もなく倒れていった将兵たちのことや、現地ではいまだに遺骨が置き去りにされていて、会が収容していることが書かれていました。

三輪勇太郎さん
「最初にホームページを見つけた時は、いろいろな活動の写真が載っているので『わあ、本当にこんなことをやっているんだ』という驚きと、こんな南の知らない島で亡くなって、そのままにされて75年がたち忘れられようとしているというのがショックでした」

「生まれてくる子どもにも伝えたい」

ソロモン会に入って戦場の様子をより詳しく知るようになると、生きのびた祖父はどんな思いで戦後を暮らしていたのか、知りたい気持ちが生まれてきました。母親の恭子さんとも、祖父について話すようになったそうです。

母親の三輪恭子さん(64)
「父が話していたことで、一番ショックだったのは『仲間の死体を踏んで自分が戻ってきた』というところだった。それでつらかったんだなと思って。戦友を亡くしてしまった分も、自分がこれから頑張って生きていくって事を父は選んだと思います」

三輪さんの妻はことし出産する予定です。生まれてくる子どもにも祖父の思いや、犠牲となった戦友のことを語り継いでいきたいと考えています。

三輪勇太郎さん
「多くの犠牲があったという歴史を忘れない。祖父が語らなかった経験に近づくことがこの活動を通じてできるのかなと思っています」

三輪さんの妻

「発信し続けることが大切」

インターネットで会の情報を発信しているのは、寺の住職で会の事務局をつとめる崎津寛光さん(48)です。

崎津さんは12年前に事務局を頼まれて以来、会が先細りしないようにと、SNSやインターネットでの情報発信に力を入れてきました。

若い世代のなかにも戦争に興味を持っている人はいると考え、その人たちが知りたい時に知ることができるよう、情報を発信し続けることが大切だと思っています。そして語り継ぐことで平和につながると訴えています。

崎津寛光さん
「あれだけの犠牲を払った戦争です。もう日本は2度と戦争はしない。(戦没者への)供養の気持ちからくる平和への思いが生まれてくると、私は信じています」

戦争の記憶を語り継ぐ新たなかたちに

戦後75年、戦争を経験した人たちが少なくなるなかで、戦争の記憶や平和への願いを語り継ぐ活動が先細ってしまうことが懸念されています。

そうした時代でも若い人たちに関心を持ってもらい、若い人たちを巻き込んで平和を願う人と人とのつながりを守り続けていくことはできる。全国ソロモン会の取り組みは、そうした新たな可能性を感じさせてくれています。

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