NEW2023年07月14日

ビッグモーター「調査報告書」その内容は?

全国に中古車販売店や修理工場を展開する「ビッグモーター」。車を故意に傷つけて修理代を水増しし、損保3社に自動車保険の保険金を不正に請求していたことが明らかになり、大きな波紋を呼んでいます。今回、会社が設置した外部の調査委員会がまとめた50ページにわたる報告書を入手。そこには目を疑うような不正行為が指摘されていました。その内容とは。

報告書の詳しい内容とはどういうものですか?

修理費用を水増しして保険金を不正に請求するため、故意に車に傷をつけるような事例が横行していたことが明らかになりました。

具体例として以下のような行為が行われていたと指摘されています。

・ヘッドライトのカバーを割る
・ドライバーで車体をひっかいて傷をつける
・ろうそくやサンドペーパーなどを使って、車体に傷をつける
・ゴルフボールを靴下に入れて振り回し、車をたたいてひょうの被害で受けた傷の範囲を拡大させる

こうした車を傷つける行為は、刑法の器物損壊罪にもあたり、非常に悪質な行為だと指摘しています。

信じられないような内容ですね。

報告書で指摘されているのはこれだけではありません。

・リサイクル品を使って部品交換を行ったにもかかわらず、新品の部品を使ったとしていたケース
・発注、使用しなかった部品を発注、使用していたとしたケース
・実際には行わなかった作業を施工したとしていたケース

これらについては不適切な保険金請求ではあるとしていますが、業務過多に起因する確認不足によるものと考えられる、としています。

こうした不正行為は常態化していたのでしょうか?

調査報告書によりますと、サンプル調査の対象となった2717件のうち、44%にあたる1198件が「何らかの不適切な行為が行われた疑いがある案件」として検出されたといいます。

ただ、ヒアリングなどの追加調査は行っておらず、報告書では、これらのすべてで不適切な行為が行われたと確実に認定できるものではないとしています。

また、社内アンケートをとったところ、382人中のべ172人の従業員が、みずから不正な作業に関与したことがある、または自分以外の人が不正な作業を見聞きしたことがあると回答していました。

保険金を不正に請求された損保3社は、会社に対し、払いすぎた保険金の返還を求めていますが、依然、問題の全容はわかっていないとしています。

不正な保険金請求が行われた原因について、報告書はどういう見方をしているのですか。

まず、「不合理な目標値の設定」をあげています。

事故車両に対する修理工賃は、対象車両の損傷状況によって決まるものであるのに以前から、修理案件1件あたりの工賃と部品の粗利の合計金額について平均の目標値をノルマとして定め、工場長の会議などでその達成を強く求めていたといいます。

さらに、コーポレートガバナンスの機能不全とコンプライアンス意識が欠けていたことも不正の原因とされています。

ビッグモーターは、上場会社ではありませんが、会社法上の「大会社」にあたり、取締役会設置会社であることから、3か月に1回以上、取締役会を開催し、代表取締役や業務執行取締役が職務の状況を報告する義務があります。

しかし、会社法上の要件を満たす取締役会は開催されていなかったと指摘されています。

このため取締役会の議事録もないということです。

またコンプライアンス違反にあたる事例が発生したときに報告があがる仕組みも構築されていなかったとしています。

会社の内部管理体制に問題があったと指摘されているのですね。

報告書で何度もふれられているのがその企業体質です。

「経営陣にそのまま従い、そんたくするいびつな企業風土があった」と指摘されています。

この問題で、会社は、今月5日、ホームページで「事態を重く受け止め、外部専門家の助言を得ながら再発防止に取り組み企業体質の改善に努めてまいります。引き続き検証を行い、不適切な請求事案を確認した案件におきましては真摯に対応してまいります」とコメントしています。

ただ、会社は、外部の委員会による調査報告書は公表しておらず、不正をめぐる事実関係や顧客への対応などについて、説明責任を果たす必要があります。

今後の会社の対応が問われることとなります。