タワマン節税に新対策
富裕層などが相続・贈与の節税目的で超高層マンションの物件を購入する、いわゆる「タワマン節税」。国税庁は過度な節税を抑えるための対策を検討してきましたが、先日、議論の結果がまとまり、来年から新たな対策が適用される見通しとなりました。「タワマン節税」ってそもそも何?国税庁の対策とは?税制の取材を担当する横山太一記者、教えて!
そもそも「タワマン節税」ってなに?
タワーマンションなど戸数が多い物件の相続や贈与を受けた場合、1戸建てに比べて大幅に税負担が軽くなるケースがあります。
それを利用し、富裕層などが相続・贈与の節税目的で超高層の物件を購入するという動きが、「タワマン節税」として注目されたんです。
なんで戸数の多いマンションの方が税負担が軽くなるの?
その理由は、税額を決める根拠となる物件の「評価額」の計算方法にあります。
マンションなど不動産の「評価額」は、土地と「うわもの=建物」の価値で決まります。
このうち、土地は毎年1度公表される「路線価」を元に計算されますが、タワーマンションのように戸数が多い物件は、1戸あたりの土地の持ち分が小さくなります。
仮に同じ広さの土地に20戸が入るマンションを建てた場合と、40戸が入るマンションを建てた場合では、1戸あたりの持ち分の土地面積は当然、40戸のマンションの方が小さくなりますよね。
なるほど。持ち分の土地の広さが小さければその分、土地の評価額も安くなるよね。
さらに土地の持ち分を計算する際、「部屋が何階にあるか」は関係なく、広さに応じて均等に割っていきます。
しかし、一般的にタワーマンションは、「高層階」であればあるほど物件の価格が高くなります。
従って、高層階にある高額物件ほど税額を計算するための「評価額」と実際の購入価格との差が開き、節税効果が大きくなるんです。
今回なぜ、国税庁は新たな対策に乗り出すことにしたの?
1つのきっかけは、去年4月の最高裁判所の判決です。
訴えたのは、平成24年に父親からマンション2棟を相続した3人です。
「路線価」を元に税務申告をしたにもかかわらず、税務署から「不動産鑑定」の価格と大きな差があることなどを理由におよそ3億円の相続税を追徴課税されました。
3人は処分の取り消しを求めて訴えていましたが、最高裁の判決では「ほかの納税者との間で、看過しがたい不均衡を生じさせ、実質的な租税公平に反する」として訴えを退けました。
国税庁が、実態にもとづいて課税することを認めた形です。
この判決を踏まえて、国税庁がことし1月、有識者会議を設けて検討を続け、その結果を6月末に公表したんです。
「評価額」はどう変わるの?
より実勢に即した形で計算されるようになります。
国税庁がマンションの築年数や総階数、それに「何階に住んでいるか」といった情報をもとに、「市場価格」を計算します。
従来の手法で計算した「評価額」がこの「市場価格」の6割に満たなかった場合、「評価額」を一律で「市場価格」の6割に引き上げる仕組みです。
6割を超えている場合は、これまで通りの「評価額」にもとづいて税額を算定します。
この改正でタワーマンションの高層階など高額な物件ほど、「評価額」がこれまでよりも高くなり、相続税や贈与税の負担が増えると見込まれています。
新しい対策はいつから適用されるの?
国税庁は今後、パブリックコメントを経て、来年1月以降に、相続や贈与を受ける人から適用する見通しです。
課税の公平性を担保するのは重要なことですが、不動産の相続や贈与は人々の資産形成に深く関わる話だけに、国税庁には今後、増税につながる具体的なケースを示すなど、きめ細かな対応が求められます。
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