NEW2022年11月04日

牛乳が値上がりしたのに大量に余るかもって、どうして?

11月1日から牛乳やヨーグルトなどの乳製品が一斉に値上げされました。その一方で今後、年末にかけて「牛乳が大量に余ってしまい捨てられてしまうのではないか」という懸念が出ています。値上げされたのに余ってしまう。どうして?農林水産省担当の保井美聡記者、教えて!

牛乳って去年の年末も同じように余るかもしれないという話が出ていましたよね。今年もということですが、なぜなんですか?

その理由の1つに冬場は牛乳の消費量が落ち込むことがあります。

12月や1月は、冬休みで学校給食がないうえ家庭で牛乳を飲む機会が減ります。

しかし、牛は毎日お乳を搾らないと病気になってしまうため、搾る回数を調節することは難しく、冬場は牛乳が余りがちになるんです。

保井記者
保井記者

牛乳を保存しておくことはできないの?

消費が落ち込む時期は、乳業メーカーなどが生乳からバターや脱脂粉乳を多めに作って保存することで、余らないように工夫しています。

しかし、新型コロナの影響でバターや脱脂粉乳を使うお土産用のクッキーなどの売り上げが落ち込みました。

このため、乳業メーカーの需要も減り、脱脂粉乳の在庫は過去最高の水準に積み上がっているんです。

保井記者
保井記者

でも過去にお店にバターがないことが問題になりましたよね?

そうですね。

2014年ごろに「バター不足」が問題となりました。

このため、国は生乳の生産量を増やすための政策をとりました。

生乳の生産量は増え続けていて牛乳や乳製品の業界団体、「Jミルク」がことし9月末時点で示した最新の推計によりますと今年度の生産量は768万7000トンと前の年度から0.5%増える見通しです。

その一方で新型コロナの影響による外食需要の落ち込みなどで牛乳などの需要は減っています。

保井記者
保井記者

原料が余っているのに、なぜ牛乳や乳製品は値上がりするの?

背景には酪農家の厳しい経営があります。

急速な円安やロシアによるウクライナ侵攻で、エサとなる輸入とうもろこしの価格や燃料代が上がっていて、廃業する農家も出ています。

需給のバランスではなく、こうした生産コストの上昇が値上げの要因となっているのです。

そして、その値上げによってさらに消費が冷え込んでしまうのではないかと業界関係者は気を揉んでいます。

保井記者
保井記者

牛乳が余らないようにするために何か対策はとれないの?

生乳を余らせないためにどのような対策を考えているのか、「Jミルク」の内橋政敏専務理事に話を聞きました。

「需給バランスが崩れる可能性が高く、業界関係者としては混乱を生じないよう最大限の警戒をしています。酪農団体の中には、牛を食肉用として処分することで生乳の生産量を減らすよう呼びかけているところもあったり、メーカーでは、バターや脱脂粉乳といった保存性の高い乳製品を工場でたくさんつくれるよう、生産能力を最大化するための準備を進めたりしています」

保井記者
保井記者

牛乳の消費を増やそうという動きは出ているの?

今月3日、全国の酪農家でつくる団体が都内でイベントを開きました。

乳搾りの疑似体験をはじめ、乳牛にふれあってもらったり牛乳の栄養価をアピールしたりして、消費に結びつけようとしています。

さらにメーカーの間では、消費を後押ししようと、牛乳入りの新商品を発売する動きも相次いでいます。

保井記者
保井記者

今後の見通しはどうなの?

牛乳や乳製品の値上げによって消費がどこまで落ち込むのか見通すことは難しいため、業界では消費の動向を固唾をのんで見守っています。

牛は生まれてからお乳が絞れるようになるまで、およそ3年かかります。

生き物なので1年ごとに生産量を大きく変えることは難しく業界団体などは引き続き、牛乳や乳製品の消費拡大を呼びかけたいとしています。

今後も取材を続けていきたいと思います。

保井記者
保井記者