どうなる「社長の個人保証」

「個人保証」とは、中小企業が金融機関から融資を受ける際に、経営者が連帯保証人になることです。中小企業にとってはぜい弱な信用を補完できるというメリットがある一方で経営者個人の財産が取り立ての対象となり、生活に支障をきたすリスクもあります。金融庁はこの個人保証の制度を見直す方向で検討を進めています。どんな制度になるのか、金融庁担当の真方健太朗記者教えて!

個人保証にはメリットとデメリットの両面があるとのことですね。
個人保証は「経営者保証」とも呼ばれますが、個人と会社の資産を一体として扱っている中小企業も多い中で、会社の財産と個人の財産を一体として弁済を担保する仕組みです。
金融機関にとっては安心して融資ができるメリットがありますが課題も指摘されてきました。
例えば、経営者がリスクをおそれて新規事業を始めるのをためらったり、事業を引き継ぐ後継者がなかなか見つからなかったりする要因になるとも言われています。
またベンチャー企業の創業を妨げるという指摘もあります。


個人保証の制度はどう変わるのでしょうか?
政府は、10月にとりまとめた経済対策の中で「個人保証に依存しない融資慣行の確立に向けた施策を年内に取りまとめる」という方針を掲げました。
その背景には、まだ多くの金融機関が個人保証に頼った融資を行っていることがあります。
金融庁によりますと個人保証による融資の割合は次のようになっています。
個人保証による新規融資の割合(2021年度)
・政府系金融機関平均 53%
・民間金融機関平均 70%
・信用保証協会平均 71%


依然として個人保証に依存する融資が多いということですね。
そうなんです。
こうした現状を受けて、金融庁は金融機関を監督する基準となる指針を年内に改正します。
その柱として検討されているのが、金融機関が個人保証を求める場合に、経営者に対してその理由を説明するよう義務づけるという仕組みです。
また、個人保証が不要になる条件を経営者に示すことも求め、来年度から適用する方針です。
金融機関に対して、安易に個人保証に頼らず企業のビジネスモデルや将来性を判断した融資を促すことがねらいです。


金融機関は今回の見直しをどう思っているのですか?
都内の信用金庫の関係者は、今回の見直しについて次のように話していました。
「現実問題として個人保証を急に減らすことは難しい。ただ中小企業の後継者不足が深刻化する中、事業承継の妨げになっているのは事実だ。個別の企業の事情に寄り添いながら融資を行っていきたい」
一方、金融庁は今回の個人保証の見直しに加えて、会社の事業の将来性に対して担保を設定し融資する新たな仕組みを作ることも検討し、中小企業への融資のあり方を大きく変えようとしています。
鈴木金融担当大臣も参議院の委員会の中で次のように述べています。
「金融機関による安易な個人保証に依存した融資が抑制されるとともに、小規模事業者の納得感も深まることを期待している」
過度な個人保証が中小企業の経営者の重荷となっているという指摘も出ていただけに、活発な起業や事業承継につながるか今後の議論に注目です。

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