NEW2022年03月02日

ロシアへの制裁 中央銀行の“資産凍結”ってどういうこと?

日本政府は、1日、ウクライナに軍事侵攻するロシアへの制裁として、ロシア中央銀行が日本国内に持つ資産を凍結すると発表しました。中央銀行の資産凍結とは一体どういうことなのか?制裁としてどのような効果があるのか?経済部の山田裕規記者が解説します。

日本政府は、ロシア中央銀行の資産凍結を閣議了解したと聞きました。

ロシアの中央銀行って、そもそもどれくらいの資産があるの?

山田記者

ロシア中央銀行が公表しているリポートによると、外貨などの資産は2021年6月時点で5853億ドル、日本円で約67兆円(※1ドル=115円計算)となっています。

内訳をみると、最も多いのはユーロで32.3%、金は21.7%、ドルは16.4%、人民元は13.1%などとなっています。

そして、円は5.7%、金額にして約3兆8000億円にのぼります。

以前はもっとドルが多かったのですが、アメリカの影響を抑えるために、ユーロや人民元の割合を増やしたと言われています。

資産凍結ということですが、「凍結」ってどういうこと?

山田記者

ひと言で言えば、資産を自由に動かせなくするということです。

日本政府が発表した資産凍結は、具体的には、ロシア中銀が日本国内で行おうとする取り引きを許可制にする形で行います。

ロシア中銀が持つ円は、日銀に預けられています。

ロシア中銀が円を引き出そうとした場合、日銀は国の許可を得る必要がありますが、国が許可をしない。

このためロシア中央銀行は自分の持っている資産なのに自由に動かせない、つまり“凍結”された状態になるということなんです。

制裁する側はどういう効果をねらっているの?

山田記者

ルーブル紙幣

外国為替市場ではロシアが各国から経済制裁を受けることを見越して、ロシアの通貨ルーブルを売る動きが急速に強まっています。

このため、ロシア中央銀行は「外貨準備」を売って、ルーブルを買い支える市場介入に踏み切る姿勢を示していました。

しかし、資産凍結によって外貨を売れず、市場介入ができなくなればルーブル安に歯止めをかけられなくなって、ロシア国内のインフレが加速します。

アメリカもすでにロシア中銀の資産凍結を発表していて、日本も欧米などと連携して、ロシア経済に打撃を与えるねらいがあるんです。

制裁の効果は出ているんでしょうか?

山田記者

2月28日の外国為替市場では、ルーブルは一時、ドルに対して大幅に値下がりし、これまでの最安値を記録しました。

鈴木財務大臣は、1日の記者会見で「ロシアの中央銀行は、通貨ルーブルが大幅に下落する中、政策金利を9.5%から20%に引き上げた。加えて、ロシアの輸出企業に対して、貿易で得た売り上げの80%に相当する外貨を売却することを義務づけており、制裁の効果が上がっていることの裏返しと言える」と述べました。

思うように市場介入ができないため、企業に外貨を売らせているとみられますが、鈴木大臣は、そこまでしなければならないほど制裁が効いているという認識を示しています。

今後、ロシアとウクライナの間で停戦交渉が継続される見通しですが、こうした厳しい制裁が停戦の後押しになるのか注目されます。