NEW2022年01月25日

おでんの季節に大根廃棄 なぜ?

寒さがこたえる毎日。熱々のおでんをふーふー言いながら食べたい季節ですよね。こうした冬の味覚に欠かせない野菜のひとつが大根です。「冬野菜の顔」ともいえる存在ですが、産地を訪れると大量の大根が廃棄されていました。

何が起きているのか。農林水産省を担当する川瀬直子記者、流通業界を担当する佐野裕美江記者、教えて!

冬の野菜といえば、なんといっても大根ですよね。

佐野記者

おでんの一品として「真っ先に注文するのは大根!」というファンも多いかと思います。

また、「ぶり大根」や「大根と鶏肉の煮物」、「けんちん汁」に大根の漬物など、和食メニューには欠かせない存在ですよね。

その大根、大量に廃棄されているってどういうことですか?

川瀬記者

関東の代表的な産地のひとつ、神奈川県三浦市の農家に取材に行ってきました。

宇田川喜昭さんの畑では、ちょうど大根の収穫作業が最盛期を迎えていました。

宇田川さんによると、ことしは秋以降の気温が高く日照時間や降水量も適切だったことから、例年に比べて出来はいいということです。

しかし、畑の一角には出荷できなくなった大根が大量に山積みされていました。

もったいない!なぜそのようなことに?

川瀬記者

供給過剰で値崩れするのを防ぐためにJAが出荷基準を厳しくし、泣く泣く基準に満たない大根を廃棄しているというのです。

大根の価格はどうなっているんですか?

川瀬記者

農林水産省が発表した1月17日の週の野菜の小売り価格(全国平均)では、大根は平年比で26%値下がりして1キロあたり143円。前の週と比べても6円値下がりしました。

価格が下落するのはなぜなのですか?

佐野記者

いろんな要因が重なっていると思います。

1つにはやはり新型コロナウイルスの感染拡大の影響です。

ことし秋には一時的に感染者数が減りましたが、それでも飲食店の営業は厳しく、おでんや鍋などに使われる野菜の需要も期待するほど伸びなかったようです。

総務省の統計によると、去年11月の1人あたりの大根の購入数量は、おととし11月より1割以上少なくなりました。

川瀬記者

さらにさきほど農家の宇田川さんが言っていたように、10月以降、気温が高く推移して適度に雨も降るなど、野菜の生育には好条件な気候でした。

需要は減っているのに、生産が順調だったことで、需給が崩れて価格が下落しました。

でも、取材を進めると要因はそれだけではないようなんです。

といいますと?

川瀬記者

大根にとっては秋以降、困難が続いています。

ひとつはサンマの不漁です。

サンマの塩焼きといえば、やっぱり大根おろしですよね!

佐野記者

そうなんです。

ところが秋の味覚、サンマの全国の水揚げ量は去年、3年連続で過去最低を更新しました。

前の年(2020年)と比べて38%も減少したんです。

主の料理であるサンマの数が減り、お供する大根の出番も減ってしまったのではないかと食品産業の関係者は推測していました。

なるほど…。確かにこの秋、サンマあまり食べなかったかも。

佐野記者

そして季節は秋から冬に。

おでんのシーズン到来で、本来なら大根も大活躍のはずが、飲食店の売り上げが期待ほどは伸びなかったことはお伝えしたとおりです。

さらにコンビニのおでんコーナーの数が減っていることも影響しているのではとの声も出ています。

以前はよく帰りがけにコンビニのおでんを買っていましたが、確かに最近、見かけなくなりましたよね。

佐野記者

セブン‐イレブンは、導入している店舗の割合は公表していませんが、コロナの感染拡大前と比べて大きな変化は見られないとしています。

一方、ローソンは、新型コロナウイルスの感染拡大前にあたる3年前には、全体の9割以上の店舗でおでんの販売をしていましたが、去年は4割程度と、販売する店舗の数が減少しています。

ファミリーマートは、かつてはすべての店舗を対象におでんの導入を推奨していましたが、おととし、通年でお店の判断に任せる“選択制”に切り替えたということです。

こうしたコンビニでのおでん販売の変化が大根の需給に影響しているのかどうか、因果関係は分かりませんが、大根の販路確保という意味では逆風のようです。

消費者としてはお手ごろな価格の野菜をたくさん食べたいですね。

川瀬記者

農林水産省は、野菜の消費を増やそうと野菜を使ったレシピをホームページで公開しています。

佐野記者

いろいろなモノの値段が上がってため息が出る方も多いかと思いますが、健康に良く、お財布にも優しい野菜をたくさん食べたいですね。