NEW2021年10月20日

転勤・単身赴任をなくします! 背景は?

今、転勤や単身赴任をなくそうという動きが大手企業の間で出ています。いったいなぜ?どうやって?10月20日の「ニュース シブ5時」で永野解説委員が解説しました。

阿部アナ

転勤が当たり前じゃなくなるかもしれないということなんですか?

永野解説委員

近い将来、そうなるかもしれません。

転勤や単身赴任は、会社勤めであれば「宿命」のように今はとらえられていますよね。

私も転勤は当然と思ってきた1人ですが、コロナ禍をきっかけに働き方が大きく見直される中で、転勤・単身赴任をやめる方針を打ち出す大企業が出てきました。

庭木アナ

どんなところでしょうか?

永野解説委員

代表的と言ってもよいのがNTTです。

キャプションです

9月末、澤田純社長がオンラインで行った記者会見で、
▽2022年度以降、働き方はリモートワークを基本とすること▽転勤や単身赴任を段階的になくしていくことを明らかにしました。

澤田社長、この場で「昭和のスタイルを続けるのはよくない。率先して変えることで世の中をリードしたい」と宣言しています。

国内におよそ18万人の従業員がいる巨大グループだけに、この発言は驚きをもって受け止められました。

阿部アナ

思い切った決断ですよね。

永野解説委員

こうした働き方改革の例はほかにもあります。

トヨタ自動車は、ことし8月から希望する社員を対象に、リモートワークを原則とする新たな制度を導入しました。

職場と自宅が遠く離れても、そのまま自宅に住み続けながら働くことが可能です。

富士通も国内のグループの従業員、およそ8万人を対象に、働き方は原則リモートワークという取り組みを進めています。

庭木アナ

コロナが背景にあるんですよね?

永野解説委員

そうですね。

感染が収束しても働き方は元に戻らない、戻すべきではないという、企業経営者の判断があります。

転勤は従業員が幅広い経験を積み、能力を伸ばすといった良い面もあります。

ただ、共働きの子育て世帯が増える中、本人と家族の負担になるのも事実です。

転勤をきっかけに子育てや介護が難しくなり、キャリアアップを諦めたり、退職を余儀なくされたりするケースも少なくありません。

また、若い世代を中心に「転勤したくない」という人が増えているとされ、人材確保の面からも、転勤や単身赴任によるデメリットをなるべくなくそうという動きが出ているんです。

阿部アナ

でも、NTTほどの大企業が転勤をどうやってやめるのでしょう?本当にできるんですか?

永野解説委員

澤田社長は実現に強い意欲を示しています。

具体的な制度設計はこれからですが、柱になるのが「サテライトオフィス」です。

自社の施設に加え、通信環境が整った建物の一室を借りるなどして、「地元の職場」とも言えるスペースを2022年度、全国に260拠点以上確保します。

自分の働く場所を、会社ではなく、従業員自身で選べるようにする姿を目指しているということです。

阿部アナ

実現できたとして、地域サービスが低下する心配は?

永野解説委員

その点については、組織のあり方を「東京一極集中型」から「地方分散型」に切り替えたいとしています。

その上で、農林水産業のデジタル化支援など、地域密着の取り組みにさらに力を入れると説明しています。

庭木アナ

ほかの企業にも広がりそうでしょうか?

永野解説委員

一気に広がるのは難しいかもしれませんが、NTTという巨大グループの先進的な取り組みだけに、ほかの企業にとっても、これまで手つかずだった雇用システムを見直すきっかけになりそうです。

ただ、せっかくの改革も、10月のNTTドコモの通信障害のような問題が起きれば、「本当に原則リモートワークで大丈夫?」と、不安視する声が出てきかねません。

利用者へのサービス水準も高めながらNTTの改革が進むこと、そして従業員の負担を減らそうとかじを切る企業がほかにも増えていくことを期待したいと思います。