原油高騰 進む円安「悪い円安」って何?

いま円相場が値下がりしています。1ドル=114円台前半となり、3年ぶりの「円安ドル高」の水準となっています。ただ、今回の円の値下がりは、「悪い円安」という指摘も出ています。”悪い”ってどういうこと?為替市場の動向を取材している渡邊功記者教えて!
円安が急速に進んでいますね。
渡邊記者

そうですね。円相場はドルに対して、1か月前は1ドル109円台だったのが、いまは114円台で、およそ5円も値下がりしました。
ニュースで、「悪い円安」ということばを聞きました。円安に「良い」「悪い」ってあるんですか?
渡邊記者
為替相場が動く時には、メリットもデメリットもあります。
まずはメリットから。円安が進む場合は、製品の輸出を主体とする企業にとっては、海外での価格競争力が高まります。
このため、採算が向上したり、円建ての売り上げが増えるので業績が押し上げられたりするメリットがあります。
例えば、国内のある大手自動車メーカーでは、企業が想定するレートと比べて、1円の円安だと、本業のもうけを示す営業利益が100億円単位で押し上げられる計算になるんです。
では、円安のデメリットは?
渡邊記者

通常ドルで取り引きしている原材料などを輸入する際のコストがかさむことです。
現在は、国際的な原油価格が高騰しているほか、金属などさまざまな原材料も値上がりしています。
こうした中で、円安が進むと、輸入コストの上昇に拍車がかかり、企業業績を圧迫することにつながります。
またガソリンや灯油などの値上がりにもつながるので、家計への影響も心配です。
それが「悪い円安」?
渡邊記者
そうですね。新型コロナの感染拡大がようやく落ち着き、いよいよ景気回復に向かおうというタイミングで、原材料高と円安が同時に進むことは、企業業績の回復や消費拡大の足を引っ張りかねません。
円安のメリットより、デメリットの方が大きくなるのではないか。そういう意味で、今の状況が「悪い円安」だという指摘も出ているんです。
確かに、賃金があまり増えない中で、物価だけ上がるのは厳しいです。円安は今後も続くのですか?
渡邊記者
いまの円安の背景にあるのは、金融政策の違いから生じる「日米の金利差」がさらに広がっていくのではないかという見方です。

アメリカでは景気回復を受けて、中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会がコロナ対応として続けてきた金融緩和を縮小していく方針を示しています。
このため、アメリカの金利は中長期的に上がっていく見通しです。
実際にアメリカの長期金利はすでに上昇傾向にあり、1.5%程度となっています(10月18日時点)。
それに対して、日本は超低金利ですね。
渡邊記者
そうですね。日銀は「2%の物価目標」の達成に向けて、いまの大規模な金融緩和を継続する方針を示しています。

このため、しばらく長期金利をゼロ%程度に抑える政策が維持される見通しです。
金利がほとんどつかない円を売って、より高い利回りが見込めるドルを買う動きにつながっているわけです。
さらに、このところ急ピッチで進む円安の要因のひとつには、原油価格などの高騰に伴い、日本企業が取引に必要とするドルが増え、ドルの需要が高まっているということもあります。
円安にはさまざまな要因があるんですね。
渡邊記者
そうですね。今後の円相場がどうなるかは、日米の経済情勢や金融政策、それに資源価格の動向などに大きく左右されることになりそうです。
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