NEW2021年07月14日

変わるか?“横並び”銀行の振込手数料

ずっと変わらなかった銀行の振込手数料。
銀行どうしがシステム上でお金をやりとりする際の手数料が引き下げられることが決まったのを受けて、わたしたち利用者がATMやネットバンキングで振り込みをする場合の振込手数料も値下げされることになりました。しかし、大手銀行3行の間では、値下げ幅は若干の違いにとどまりました。
今後、“横並び”は変わるのでしょうか?教えて!

銀行の振込手数料って、値下げされるのですか?

はい、すでに大手銀行が値下げを発表しました。

今回の値下げは、「全銀ネット」と呼ばれる共通のシステムを使った銀行どうしの送金の手数料が引き下げられることにともなったものです。この銀行間手数料は、40年以上も見直しが行われていませんでした。

しかし、公正取引委員会から利用者にとってのコスト高につながっていると指摘されたことを受けて、値下げされることが決まりました。ことし10月1日からは、送金額にかかわらず一律に62円になります。

消費税抜きの引き下げ幅は、送金額が
▽3万円未満の場合は55円、
▽3万円以上の場合は100円です。

これに伴って、各銀行が設定する振込手数料も見直しが進められてきました。

具体的にはいくらになるのですか?

これまでに大手3行が値下げを発表しました。

値下げ幅は、振り込む金額が
▽3万円未満の場合で55円~70円、
▽3万円以上で110円~120円。

これには消費税分が含まれるので、銀行間手数料の引き下げ幅にほぼ沿った形です。

大手3行の値下げが出そろったことで、今後は地方銀行などにも値下げの動きが広がると見られます。

確かに、若干の違いはあるものの、値下げ幅はほぼ横並びという印象です。スマホ決済など新しいサービスも登場している中で、振込手数料も金融機関によってもっと違いが出てきてもいいような気がしますが?

実は、今回の引き下げにあたって、各銀行では営業戦略に基づいた抜本的な見直しも検討していました。

例えば、比較的コストがかかる店頭での手数料を引き上げる一方で、利用が増えているネットバンキングの手数料をより引き下げるといった「メリハリ」をつけるといった案も出ていたんです。

しかし、今回は値下げのきっかけが、銀行間手数料の引き下げというどの銀行にも共通する要因であることから、あまねく利用者がメリットを受けられるようにするべきだという方針となり、その結果としてほとんど横並びの値下げとなりました。

手数料が下がるのは歓迎ですが、少し物足りない感じもします。もう値下げは打ち止めなんですか?

ある大手銀行の幹部は、「今回の引き下げはステップ1に過ぎない」と話しています。

振込手数料を含むサービス面で、金融機関が独自色を打ち出すのは、むしろこれからと言えそうです。

各銀行はここ数年、新たに紙の通帳を発行する際に手数料を設けたり、長期間入出金されていない口座に対して手数料を設けるなど、段階的な見直しを進めています。

背景には、長引く超低金利政策の副作用で、銀行が本業の貸し出しなどで収益を上げにくくなっていることがあります。各銀行は収益を生み出すためには、コスト削減も求められていますが、今後はその手段として「デジタル化」や「効率化」を進めていく方針です。ネットバンキングの振込手数料を引き下げるといったことにとどまらず、管理するための費用がかさむ店舗やATMの統廃合なども含めて、銀行のサービスのあり方全体の見直しが進むことが想定されます。