NEW2021年05月13日

デパートは休業中?営業中?

新型コロナウイルスの感染を抑えるため出されている緊急事態宣言で、東京や大阪ではデパートなど大型商業施設に対して「生活必需品の売り場」を除いて休業が要請されています。宣言は5月末までに延長されましたが、デパートの間では、このところ営業する売り場を広げる動きが目立っています。デパートは今、休業中?営業中?どうなっているのでしょうか。

緊急事態宣言で商業施設などに休業要請が出されましたが、営業しているところもありました。実態はどうなっているんでしょう?

4月25日に1都4県などを対象に出された緊急事態宣言は、期限が5月末まで延長され、愛知県や福岡県が新たに対象に加えられました。

4月に宣言を出した際に政府は「大型連休中の人出を抑えるため」として、床面積の合計が1000平方メートルを超える大型商業施設に対して休業を要請しました。

これを受けて、多くのデパートやショッピングモールが休業に入ったんです。

ただ、「生活必需品」の売り場は休業要請の対象外とされたため、デパート各社は、食料品や化粧品などに売り場を限定して営業してきました。

一方で、5月末までの期限延長にあたっては、政府は大型商業施設の営業について、休業の要請から「午後8時までの時短要請」に切り替えました。しかし、東京都と大阪府は対策を緩められる状態ではないとして、休業要請の継続を独自に決めたんです。これを受けて、デパート側も引き続き「生活必需品」に限って、営業を続けています。

「生活必需品」と言っても、いろいろありますよね?

実は、何が「生活必需品」に該当するのか、デパートによって判断がわかれています。

4月25日の宣言期間入り当初は、食料品や一部の化粧品など、かなり絞り込んでいました。しかし、5月12日の延長期間入りの前後から、各社はじわじわと営業フロアを拡大しています。

例えば高島屋は5月6日に都内の店舗で、靴やハンドバッグなどの売り場を再開したほか、12日からはリビングや子ども服なども営業を始めました。

三越伊勢丹ホールディングスも寝具などの売り場を再開したほか、郊外に立地している京王百貨店の聖蹟桜ヶ丘店は「日常的な買い物に使われる機会が多い」として、宝飾品以外のすべてのフロアを再開しました。

関西でも、例えば大阪 梅田の阪急うめだ本店で、食料品の売り場に加え、暑さ対策に必要だとして、帽子や日傘などの婦人雑貨や化粧品の売り場を営業再開しました。

休業すれば協力金が出るはずですが、なぜ営業再開を急ぐのでしょうか?

当初は商業施設の場合、休業した1店舗あたり1日20万円の協力金が支給されることになっていました。宣言の延長にあたって協力金は増額され、休業しているフロアを対象に1000平方メートルあたり20万円となりました。

都心のデパートは5万平方メートルから6万平方メートル前後。仮にすべての売り場を休業すれば、1日1000万円を超える計算となります。

しかし、都心のデパートの売り上げは、1日あたりでも億単位になります。増額されたとはいえ、売り上げを補うには協力金の規模はあまりにも不足しています。

さらに、休業が要請された5月は大型連休もあることからデパートにとってかきいれ時で、母の日といったギフトの需要もある上、夏物衣料が売れるシーズンでもあります。

デパートが営業再開に動くもう一つの理由として、「不公平感」もあげられます。

東京 銀座や新宿、渋谷などの繁華街では、数多くの路面店が大型連休中も営業していました。例えば東京都の示したリストだと、休業要請の対象外として衣料品、家具、家電など数多くの業種が列挙してあります。こうした業種の専門店は、例え売り場が1000平方メートルを超えていても営業を続けていました。

デパートの業界団体「日本百貨店協会」は、去年の緊急事態宣言による休業が続いた後、感染対策を徹底し、協会の調査でも店内でクラスターが生じたといった報告はないとしています。感染対策に協力するのは当然のことだが、デパートを狙い撃ちにするような休業要請に「納得いかない」とか「不公平」といった意見も根強くあるんです。

デパート各社は新型コロナによる休業や時短営業が続いた影響で、昨年度の決算は軒並み大幅な赤字に陥りました。政府や自治体は、緊急事態宣言によって感染をどう押さえ込むのかということに加え、経済・社会への打撃を最小限に抑えるためにも、たび重なる休業要請の費用と効果の検証が必要ではないでしょうか。