どんな働き方をしたいですか?
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ニュースなどで“70歳定年”という見出しをよく見かけるようになりました。これって定年が70歳まで延びるってこと?人々の働き方や暮らしはどう変わっていくのでしょうか。経済部の池川陽介記者、教えて!
20代の僕にはまだ遠い話に感じますが、定年が70歳になったんですか?
池川記者
“70歳定年”といっても70歳での定年が「義務」になったわけではありません。今の制度では、企業は希望するすべての従業員を65歳まで雇用することが義務づけられています。4月に施行された「改正高年齢者雇用安定法」で、70歳まで就業機会を延長する「努力義務」が企業に課されるようになったんです。
具体的な方法として、法律では以下の5つをあげています。
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この中から、企業と従業員が話し合って決めるとしています。
このため、企業の中には定年を70歳にしたり、定年を廃止したりするところも出てくるかもしれません。
ベテラン社員の働き方が多様化するということですね。どうして変わったんですか?
池川記者
まず、年齢を重ねても元気に働ける人が増えていることが背景にあります。
実は戦後から1970年代にかけて、日本では55歳を定年とする企業が多くを占めていました。その後、1994年に高年齢者雇用安定法が改正され60歳未満の定年が認められなくなりましたが、それまでは50代後半で定年後の「余生」を迎える人も多かったといえます。
当時と比べると、今の50代、60代はずっとアクティブで、「余生」ということばがそぐわなくなっている感じがします。
また、「働く人の減少」も理由の一つです。
日本の生産年齢人口(15~64歳)は、1995年のおよそ8700万人をピークに減り続け、2019年には7500万人余りになりました。この傾向は今後も続くと見込まれています。
人脈や経験があり、働く意欲のあるシニアにより長い期間働いてもらうことは、企業の人手不足解消の一助になると考えられています。
働きたいシニアにとっては、活躍の期間が長くなるんですね。
池川記者
そうですね。ただ、誰もがやりがいをもって働けるかというと、課題もあります。
厚生労働省の調査(2021年1月「高年齢者の雇用状況」調査)で、65歳まで働ける制度がある全国の企業に、どんな仕組みで雇用しているか聞いたところ、次のような内容があげられました。
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再雇用は多くの場合、パートや嘱託、アルバイトなどでの雇用です。
シニアの働き方に詳しいニッセイ基礎研究所の金明中主任研究員は「多くの企業は人件費の増加を懸念して、パートなどの再雇用で対応している」と指摘しています。
2019年に行われた「60代の雇用・生活調査」(独立行政法人 労働政策研究・研修機構の調査)では、現在の仕事に対する満足度で、「満足」と答えた人は37%でした。
ニッセイ基礎研究所の金さんは、「仕事の内容が変わらないのに、再雇用で給料が減ってしまうのでは、モチベーションが下がるシニアもいて、満足度の低下につながっているのかしれません」と話しています。
一生で働く時間が今より長くなるとなると、やりがいは大切ですね。
池川記者
“定年”と“やりがい”の両立を図る企業の取り組みも始まっています。
<YKKグループ>
年齢に関係なく社員を適材適所で活用しようと、国内の事業会社で65歳だった定年を4月から廃止。65歳以上の社員には個別のスキルに応じて報酬を支払う。
<ノジマ(家電量販店)>
2020年7月から、65歳の定年後も本人が希望し健康の問題などが無ければ、再雇用などで原則80歳まで働ける制度を導入。年齢ではなく仕事に応じて給料が決まる「同一労働同一賃金」で、正社員でもシニア社員でも、仕事が同じなら原則同じ報酬を支払う。
僕自身は定年のこと、ちゃんと考えたことがありませんでした。でも、自分が60代になった時、働くにしても、セカンドライフを楽しむにしても、どんな生き方をしたいのか、早いうちから考えないといけませんね。
池川記者
そうですね。
働き方に詳しい三菱総合研究所の奥村隆一主席研究員は、「“70歳定年”をきっかけに、さまざまな働き方の課題が浮き彫りになっています。若いうちから『雇用は会社に与えられるものではなく、みずから考えていくもの』という意識をもってほしい」と話しています。
働き方改革は“生き方改革”。自分の働き方をもう一度見直し、これからどんな人生を歩んでいきたいのか、改めて考える機会にするのもいいかもしれません。
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