NEW2021年03月22日

セーフガードって何?

3月18日、政府は、アメリカ産牛肉に対して「セーフガード」という措置を発動しました。日本への輸入量が基準を超えたためです。この措置により、4月16日までアメリカ産牛肉の関税が引き上げられます。セーフガードって、どんなもの?私たちの暮らしにどう関係するの?教えて!

セーフガードってそもそもどういう制度なんですか?

セーフガードは、国内産業への影響を抑えるため、特定の品目の輸入量が一定の基準を超えると緊急的に関税を引き上げる措置です。

WTO=世界貿易機関のルールや、TPP=環太平洋パートナーシップ協定、EPA=経済連携協定などで決められています。

これらの協定では、日本は、牛肉や豚肉、乳製品、それに合板など幅広い品目にセーフガードを導入しています。

今回はアメリカ産の牛肉が対象になったんですね。

今回のセーフガードの発動は、去年、発効した日米貿易協定に基づく措置です。

日米貿易協定では、アメリカ産の牛肉、豚肉、それにオレンジなどに対して、セーフガードが導入されています。

このうち、牛肉は、今年度は25.8%の関税がかけられ、その後、段階的に引き下げられ、2033年度は9%となっています。

一方、毎年度、基準となる輸入量が設定され、それを超えるとセーフガードが発動されます。

今年度は、基準量が24万2000トンでしたが、去年4月からことし3月10日までの輸入量は24万2229トンとなりました。このため、3月18日から関税が38.5%に引き上げられました。期間は4月16日までの30日間です。

なぜアメリカ産の牛肉の輸入量が増えたのですか?

財務省によりますと、今年度、日本に輸入された牛肉の量は今月10日までで56万トン余り。新型コロナウイルスの感染拡大による外食需要の落ち込みなどで、前の年度の同じ期間と比べて5%減っています。

なかでも、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドなどTPPに参加している国からの輸入量は、31万トン余りと前の年度を10%下回っているのです。

これは、干ばつなどの影響を受けて最大の輸入元であるオーストラリアでの牛肉の生産量が減っているからです。

このため、輸入業者などがオーストラリア産からアメリカ産に切り替える動きが出て、アメリカ産牛肉の輸入量は、前の年度より3%増え、セーフガード発動の要因となりました。

関税が上がると私たちの暮らしにも影響が出るのでしょうか?

農林水産省は、小売価格への影響は限定的だとしています。2017年にWTOの協定に基いてセーフガードが発動されたときと比べて、関税が引き上げられる期間が短く、輸入業者なども事前に在庫を確保するなどの対応をしていると見られるからです。

セーフガードは30日間ということだけど、その後はどうなるの?

アンガス牛の放牧(アメリカ・カリフォルニア州)

日米貿易協定では、セーフガードが発動された場合、日本とアメリカは新年度以降の発動基準について、発動後10日以内に協議を始め、90日以内に終えることになっています。

今回のセーフガードの発動がアメリカ政府にとってどの程度のインパクトがあるのか、バイデン政権の発足直後ということもあって現時点では、はっきりと見えておらず、日本政府としては今後のアメリカの出方を見極めたいとしています。