NEW2020年08月27日

日本メーカーでEV発表相次ぐ いよいよ本気?

大手自動車メーカーのホンダが、国内向けに初めてEV=電気自動車をことし10月に発売することを明らかにしました。今後ほかの日本メーカーからも相次いでEVの新型車が売り出される予定です。EVでは、先行するアメリカのテスラが存在感を高める中、いよいよ日本メーカーも本腰を入れ、普及が加速するのでしょうか?自動車業界を取材する佐々木悠介記者、教えて。

ホンダが国内でEVを発売すると聞きました。どんなEVを開発したんですか?

佐々木記者

ふだんの街乗りに使われることを想定した、コンパクトカーです。フル充電で走行できる距離は280キロで、テスラや日産自動車がすでに販売しているEVに比べると短いですが、ホンダでは近場への通勤や買い物など、街乗りを中心にする場合には十分だとしています。しかし、運転してみると、スポーツカーのような加速が備わっていることが印象的でした。

また最新の機能もふんだんに盛り込んでいます。スマートフォンを車にかざすだけで鍵をあけたり、起動できる機能を国産車として初めて搭載。サイドミラーの部分には鏡ではなく、カメラが取り付けられていて、車内のモニターで確認できる機能も標準装備しています。

EVはまだ割高なイメージがあります。価格はどうでしょう?

佐々木記者

451万円からです。国や自治体のEV向けの購入補助金を活用すれば、実質的に400万円前後になります。しかし、街乗りのコンパクトカーとして捉えると、ハイブリッド車などと比べて残念ながらまだ割高感があるかもしれません。年間の販売台数の目標は1000台で、大手メーカーとしては控えめな数字にとどまっています。

ホンダ以外の日本メーカーもEVを開発しているんですよね。

佐々木記者

はい。すでにEVを手がけている日産自動車は来年、SUVタイプの新型車を発売する計画です。フル充電で走れる距離は最大で610キロで、ガソリンエンジンの車と比べても遜色ありません。

トヨタ自動車は、年内に軽自動車より小さな2人乗りEVを発売するほか、来年(2021年)には高級ブランド「レクサス」にEVを導入する予定です。

マツダも今年度中にSUVタイプのEVを発売することを検討しています。

日本メーカーの多くが、同じようなタイミングでEVを発売するんですね。

佐々木記者

このタイミングで各社がEVに力を入れる背景には、世界的な環境規制の強化があります。ヨーロッパではことし(2020年)から走行距離1キロ当たりの二酸化炭素の排出量を、より厳しく規制する制度が始まっています。

日本メーカーは、充電もできる「プラグインハイブリッド車」や、水素から発電して走行する「燃料電池車」をすでに販売していますが、走行する際に全く二酸化炭素を出さないEVも売り出すことで、規制をクリアしたいというねらいがあります。

とは言え、やっぱりもう少し価格が下がらないと普及に弾みがつかないのでは?

佐々木記者

確かに、さらなる普及には価格の引き下げは欠かせません。新たな方式の電池を開発し、走行できる距離を伸ばすことも重要ですし、充電スタンドの整備なども必要でしょう。こうした点は、以前から指摘され続けてきたものですが、課題はそれだけではないように思います。

アメリカのテスラは、EVが割高になるのを逆手にとって、高級セダンやSUVタイプをいち早く開発し売り出すことで、EVメーカーとしてのブランド力を高めました。かつては赤字でしたが、販売台数が増えたこともあり最近では新型コロナウイルスの感染拡大の中でも、黒字を確保するほどになりました。

日本のメーカーは、技術力で負けているわけではないはずです。多くの人がほしいと思える「売れるEV」が登場すれば、おのずと普及も進むことにつながるのではないでしょうか。