NEW2020年08月07日

銀行の振込手数料 下がるの?

大手銀行が個人間の振り込み手数料の引き下げに向け、連携することになりました。少ない金額を送金するための、新たな仕組みづくりの検討に着手するということですが、本当に手数料は下がることになるのでしょうか。金融担当の梶原佐里記者、教えて!

そもそも銀行の振込手数料はどういう仕組みで決まっているの?

梶原記者

銀行間のお金のやり取りは、「全銀システム」と呼ばれるネットワークを使って行われています。

このシステムを使う場合、お金を振り込む側の銀行が、振り込まれる側の銀行に「銀行間振込手数料」を支払う必要があります。手数料は、3万円未満の場合、1件当たり117円、3万円以上の場合は162円です。

利用者が支払う「振込手数料」は、この「銀行間振込手数料」をもとに決められていて、例えば、インターネットバンキングで送金する場合、一般的に、3万円未満の場合は1件当たり税込み220円、3万円以上は1件当たり税込み440円です。

低金利で、利息が雀の涙ほどしかつかないだけに、この手数料は何とかならないものかと思ってしまいます。

梶原記者

利用者が負担する手数料のもとになっている「銀行間振込手数料」。少なくとも40年以上、変わっていないんです。この手数料の高止まりが、スマホのキャッシュレス決済など新しいサービスの普及を妨げていると指摘されていました。

このため政府は、ことしの「成長戦略」に銀行間の手数料の引き下げを明記し、銀行業界に対応を促したことで検討が本格化したんです。

大手銀行が検討に着手した新しい仕組みって、一体どういうものなんですか。

梶原記者

「全銀システム」とは全く別のシステムを活用することを想定しています。

具体的には、銀行のキャッシュカードを使って代金を支払うと、即座に口座から現金が引き落とされる「J-Debit」というシステムの基盤の活用を検討しています。

1000を超える金融機関が提供しているこのシステムを活用して、利用者が携帯電話の番号やメールアドレスなどを使って、より簡単に、低い手数料で送金できる仕組みを目指しています。

少額で回数の多い送金が対象となる見通しで、スマホのアプリを使うことで、例えば会食で「割り勘」をしたときに、記念写真やメッセージを同時に送るなど、新たなサービスの開発にもつながると期待されています。

国内の個人間の送金アプリは、いまはIT企業のサービスがほとんどです。大手銀行は、地方の金融機関やIT企業など幅広く参加を呼びかけ、異なるアプリの利用者どうしでも、お金やポイントをやり取りできるようにしたい考えです。

低コストで簡易なシステムを使って送金できるようになれば、利用者の負担も軽くなりそうですね。

梶原記者

ただ、実際に手数料がどれくらいの水準になるのか、また、いつから始まるのかといった具体的な検討はこれからです。独自のシステムで利用を広げてきたIT企業が、新しい仕組みに加わるかどうかも不透明です。

海外では、銀行が主導して個人送金のためのアプリの仕組みを立ち上げたケースもあって、手数料は無料というところもあります。

もっとも、無料にすることが可能なのは、海外では、口座を維持・管理する手数料を利用者から徴収することが一般的になっているからだという指摘もあります。

長引く低金利で、銀行は本業の貸し出しなどで収益をあげることが厳しくなっていますので、振込手数料の見直しと合わせて、口座を維持・管理するための手数料を含めて料金体系全体を見直す動きが広がる可能性もありそうです。