コロナ禍でも黒字確保のワケ

新型コロナウイルスが猛威を振るい、世界的に移動制限や外出自粛で経済活動が停滞したことで、深刻な打撃を受けた産業の1つが「自動車」です。日本の自動車メーカーのことし4月から6月までの第1四半期の業績が出そろいましたが、いずれも厳しい内容となりました。ただ、この先の業績予想をみてみると、厳しいながらも「黒字確保」を見込んでいるメーカーもあります。先行きをどう見ているの?黒字予想の背景は?自動車業界担当の大江麻衣子記者、教えて!
新型コロナウイルスの影響で車の販売が落ち込んでいるという話はよく聞くけれど、影響はどのくらい大きかったの?
大江記者
こちらをみてください。トヨタ自動車(ダイハツ、日野自動車を含む)、ホンダ、日産自動車、スズキ、マツダ、SUBARU、三菱自動車の主な7社の4月から6月の3か月間の決算をまとめました。

本業のもうけを示す営業損益では7社のうち、5社が赤字となりました。この時期には、世界で厳しい移動の制限や外出自粛が続きました。販売店の営業ができなかったり、客足が大きく減ったりしたほか、工場も稼働を一時停止。各社とも、とても大きな打撃を受けました。
実際、この期間の車の販売実績をみると…

去年の同じ時期と比べて3割から多いところで6割以上も落ち込んだんです。
とても厳しいですね。でも都市封鎖とか緊急事態宣言はもう解除されましたよね。この先はどう見ているんでしょう。
大江記者
「徐々に販売は回復していく」、これが各社共通の見方です。

来年3月までの今年度1年間の販売計画をみても、「未定」としているスズキを除いた6社の合計は前年の実績には届かないものの、マイナス12%まで持ち直すという見通しとなっています。
「感染拡大の影響の大きさ」そして「今後の販売の見通し」。ここまでは各社の事情や見方はほぼ同じです。しかし、「どれだけのもうけを見込んでいるか」という利益予想になると傾向が分かれます。

上の表をみてみると、黒字を見込むメーカーと、赤字を見込むメーカーに分かれていますよね。
こんな厳しい中でも黒字予想とは!どうしてなの?
大江記者
赤字を予想する日産自動車と三菱自動車はいずれも業績立て直しのまっただ中という事情がありますが、黒字を予想したトヨタ、ホンダ、SUBARUを取材してみるとそれぞれ個別の要因が見えてきました。
<トヨタ>
経費の削減を徹底したことに加えて、これまで10年ほどかけて「利益を出す体質」を目指し、原価=車をつくる際にかかるコストを低くしてきたことです。仕入れ先も含めたさまざまな生産現場で原材料をむだなく使うなどの「カイゼン」。これを積み重ね、利益が出る生産台数の水準はリーマンショックのころより200万台程度下がったとしています。こうした中、中国での販売が去年の実績を上回るペースとなっていることなどから、今年度の販売台数の見込みを20万台上方修正しました。販売台数の見通しが増えれば、その分コスト低減の効果が大きくなりますから、利益の増加につながります。
<ホンダ>

もうけの割合=「利益率」が車より高いとされるオートバイに強みがあります。今年度は1480万台もの販売を見込んでいます。また主力市場の中国で車の販売が回復していることも、業績の押し上げにつながるとしています。
<SUBARU>
販売台数のおよそ7割を占めるアメリカ市場で今後需要の回復が進むと見込まれるため、今年度1年間では営業黒字を確保できるとしています。
ふむ。それぞれ強み、特徴があるんですね。
大江記者
そうですね。しかし、いま国内でも新型コロナウイルスの感染が再び広がっています。世界をみてもアメリカ、ブラジル、インドなどでは感染拡大がおさまっていません。
黒字を見込むホンダやSUBARUも、第2波やロックダウンのような経済活動に深刻な影響を与えるような事態がない場合、という前提があっての予想だということを強調していました。
業績予想は対照的となりましたが、どのメーカーも経験したことがないくらい「先行きを見通すのがとても難しい」状況なんだと感じます。
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