NEW2020年03月13日

中小事業者への草の根支援って?

新型コロナウイルスの感染拡大で飲食店など中小の事業者は客足が落ち込み、深刻な影響を受けています。先が見通せないなか、経営者の悩みは、当面の資金をどう確保するのかという問題です。政府はこうした事業者を対象にした資金繰り支援を強化していますが、草の根の支援の動きも広がっています。経済部の寺田麻美記者に聞きます。

草の根の支援ってどんなものですか。

寺田記者

インターネットを通じて資金を募る「クラウドファンディング」を活用した支援です。複数のIT企業がこうした支援策を打ち出しています。

このうち東京・渋谷区にあるIT企業「CAMPFIRE」は、2月下旬に、中小企業や個人事業者などを支援するための「クラウドファンディング」の仕組みを立ち上げました。イベントの中止や予約のキャンセルなどで売り上げが大きく減少している飲食店や宿泊施設、それにイベント事業者などが対象です。

どのようにして資金を集めるのですか。

寺田記者

審査に通った事業者は、クラウドファンディングの専用サイトに掲載されます。それを見た人たちが、サイトを通じて応援したいところに資金を提供します。ただ、これは寄付とは異なります。資金を提供してくれた人に返礼品を贈ることがこの仕組みを利用する条件となっているんです。例えば、飲食店だと割引券、イベント事業者だとイベント関連のグッズといったように何かをお返しすることになっています。

クラウドファンディングを運営するIT企業は、中小の事業者ができるだけ多くの資金を受け取ることができるよう今回は手数料をとっていないそうです。

利用したいという事業者、たくさんありそうですね。

寺田記者

この仕組みの申込期間は3月末までですが、3月12日の時点で200件を超える申し込みがあったということです。このうち、4割近くが飲食関係の中小事業者だということです。

川崎市で居酒屋を経営する会社は予約のキャンセルが4つの店舗で合わせて1400人分にのぼっているということで、当面の資金繰りなどに充てるためこの仕組みを利用したいと考えています。この会社では資金を提供してくれた人には後日、店で使える割引券などを渡すことにしています。

このほか臨時休校で学校給食の取りやめが相次いだことで販売が落ち込んでいる生乳の製造会社などからも申し込みがあったということです。

東日本大震災でも中小の事業者を支援する仕組みとしてクラウドファンディングが注目されましたが、今回も活用されているんですね。

寺田記者

そうなんです。草の根で中小の事業者を応援する仕組みはほかにもあります。いま一時的に売り上げが落ち込んで苦しんでいる事業者はたくさんありますが、お客さんの側からこうした事業者を支援する仕組みも始まっています。グルメ関連のアプリを運営する「キッチハイク」が始めた「#勝手に応援プロジェクト」という活動です。

専用のサイトで支援したい飲食店を選び、将来使える飲食チケットを買うことができます。さらに、お客さんの側から自分の行きつけの店などを「キッチハイク」に申請して、専用サイトに追加してもらうこともできます。いま外出や外食を控えている人もいると思いますが、未来のお客さんになることで、「将来必ずお店に行きますから、いまは頑張ってくださいね」とお店を応援することができます。飲食店にとっては、チケットを買ってくれれば、売り上げに反映され、資金面での不安も軽減されます。

こうした将来使える飲食チケットを買おうという取り組みは、福岡市のIT企業が始めているほか、熊本市のデザイン制作会社も近く始める予定です。

急激な環境の変化にとまどっているお店は多いと思いますが、草の根の取り組みが広がって、お店の人たちを勇気づけてほしいですね。

寺田記者

プロジェクトの主催者は、今の状況で、お店の側から「食べにきてください」と来店を呼びかけることは難しいのではないかとして、お客さん側から応援する仕組みを考えたといいます。一方、飲食店のなかには、新しいサービスを始めたところもあります。待っていてもなかなかお客が入らないということで、宅配サービスを始めた飲食店があるほか、料理人が自宅まで出向いて料理をふるまう出張シェフサービスをスタートしたところもあります。

新型コロナウイルスの影響がどこまで続くのか、不安はぬぐえませんが、出口は必ず見えてくるはずです。中小の事業者を支援し、勇気づける草の根の動きがさらに広がればと思います。