新築マンションが建てられない!ならばどうする?
首都圏で去年1年間に発売された新築マンションの戸数は、バブル崩壊直後の1992年以来、27年ぶりの少なさとなりました。「駅近」などの条件のいい土地は、ホテルやオフィス需要とも競合し、マンションを建設するための土地の取得は難しくなっているのです。建てたくても建てられない・・・。そこで今、注目が集まっているのが、もともと立地のいいところに建っている物件です。どういうことなのか、不動産や建設業界を取材している西園興起記者、教えて!
首都圏では、発売される新築マンションの戸数が大きく減っているのですね。
西園記者
そうなんです。
民間の調査会社「不動産経済研究所」によりますと、東京・神奈川・埼玉・千葉の1都3県で去年1年間に発売された新築マンションの戸数は、前の年より15.9%減って3万1238戸。バブル崩壊直後の1992年以来、27年ぶりの少なさとなりました。
一方、1戸あたりの平均価格は、人件費や資材価格の高騰もあり、前の年より1.9%上がって5980万円と、バブル期の1990年以来、29年ぶりの水準まで上昇しました。つまり、マンションはより価格が高く、手に入りにくくいものになっているのです。
それにしても発売戸数がそこまで落ち込んでいるとは驚きました。なぜ、そんなことに?
西園記者
背景には駅から近いなど、条件のいい土地が手に入りにくくなっていることがあります。みずほ総合研究所の宮嶋貴之主任エコノミストは、「不動産会社が利便性が高い土地を取得したくても、外国人旅行客を受け入れるホテルの需要やオフィス需要もあるので、マンションを建設するための土地の取得は難しくなっている」と指摘します。
近年、夫婦共働きの世帯が増加し、「駅近」など、利便性の高いところに住みたいという需要が高まっているのです。通勤時間をなるべく短縮して、育児や家事に時間を使いたいという気持ちもわかりますよね。
そうすると、都心の「駅近」のマンションは、よほどのお金も持ちじゃないと住めませんね。
西園記者
そこを何とかしようと、不動産会社はあの手この手で、消費者のニーズに応えようとしています。
「住友不動産販売」が、目をつけたのは中古マンション。中古物件は、比較的まだ土地が手に入れやすかった頃に建てられ、「駅近」など、いい立地にあることが多いからです。
去年、中古を専門に仲介する店舗を東京の新宿や麻布など人気の高いエリアに5つ開設し、1月からはさらに14店舗増やし、販売を強化しています。店舗には、全国から中古マンションに関する専門的な知識を持ったスタッフだけを集め、外からは見えない建物の構造や耐震性、それに周辺の環境や今後の修繕計画などを詳しく説明できるようにしています。丁寧に説明することで購入を検討している人の中古への心配を解消し、購入につなげようというわけです。
なるほど。中古マンションでも、今はリフォームすることで、見違えるほどきれいになりますものね。でもやはり、「中古」なんですね。
西園記者
それだけではないです。利便性の高い立地にある老朽化したマンションを高層の新築マンションに建て替えることで、発売戸数の増加を狙う動きも出ています。
「旭化成不動産レジデンス」では、1月から、東京・港区の白金高輪駅から徒歩3分の立地にある築39年のマンションの建て替えを進めています。他社が建設した7階建てのマンションを解体して、同じ敷地に23階建てのタワー型の新築マンションを建設し、増えた戸数分を販売するのです。
建て替えを実現するには、住民の同意が必要になりますよね。
西園記者
マンションの建て替えには法律で所有者の5分の4以上の合意が必要とされていますが、このマンションでも当初、住民からは、「費用負担が大きく建て替えたくない」という声もあったということです。このため、新たに部屋を販売することで得た収益の一部を建て替えの費用に充て、住民の出費を抑えることなどを提案し、最終的に住民全員の同意を得たといいます。
中古も含め、もともとある物件の活用は、今後も広がりそうですね。
西園記者
そうですね。新築マンションの価格は、今後も大きく下がらないという見方もあります。みずほ総合研究所の宮嶋主任エコノミストは、「用地の取得費用が高まり、人手不足で建設費も高まっていることから、不動産会社も、なかなか価格を下げられない。利便性の高いマンションに需要が集まる構図は急に変わるものではなく、東京オリンピック・パラリンピックのあと、大きく下がる可能性は低いだろう」と話しています。
共働きの夫婦が増えて利便性の高いところに住みたいというニーズは、今後も高まりそうですから、中古物件の活用や建て替えは、これからも注目ですね。
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