NEW2019年08月08日

先物取引の“聖地”大阪で、なぜゴタゴタ?

株式だけでなく、原油や金、トウモロコシなど、いろいろある先物取引。なんとなくニューヨークやシカゴ、ロンドンなどが先進地のようなイメージがあるかもしれませんが、実は世界で最初の先物取引が行われた場所はなんと大阪なんです。

その歴史ある大阪で、日本で唯一のコメの先物取引が行われていますが、なにやらゴタゴタしているようです。大阪放送局の太田朗記者に聞いてみます。

そもそもなぜ大阪が世界で最初の先物取引の場となったんですか?

太田記者

江戸時代、大阪は年貢米がたくさん集まる場所でした。年貢米は入札で仲買人に売却され、コメとの交換を約束する証券が盛んに売買されるようになりました。1730年に幕府が公認したこの市場は「堂島米市場」と呼ばれ、世界で最初の先物取引所とされているんです。米粒の形をした記念碑が今も大阪市内にありますよ。

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へー。大阪って歴史ある場所なんですね。でもコメの先物取引ってあまり聞かないけど?

太田記者

そこがゴタゴタの根本なんです。日本では、歴史を引き継いだ「大阪堂島商品取引所」というところが今も日本で唯一、取り引きを行っているんですが、試験上場といってテスト扱いなんです。テストだからというだけではないんだけれど、取引量がなかなか増えない=知名度が低いんですね。

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テストってどれぐらい続けているんですか?

太田記者

2011年からもう8年間もテスト生。取引所は「ちゃんとした取引所にしたい。認めて!」と所管官庁である農林水産省に訴えているのですが、政府側はなかなか認めない。8月7日にようやく2年間、テストでの取引をやっていいよとしぶしぶ認めたんです。

どうして農林水産省はちゃんとした取引を認めないんですか?

太田記者

十分な取引量が見込まれないことを理由にしています。背景には取引量が少ないと価格が乱高下してしまうのではないか。こういう懸念があるようなんですね。また、日本の主食であるコメの価格は、かつては米価といって法律によって国が決めていたんです。その後、価格の下落を防ぐために生産調整、いわゆる減反政策によって価格の安定を図ってきた歴史があり、コメの価格が不安定になるのは国としてはなんとしても避けたいということ。先物=投機だというイメージもあり、根強い反対があるのが実情なんです。

一方、取引所側は、ちゃんとした取引を認めてくれれば取引量は増えますよと反論しているんです。現在の試験上場はいつ終わるかわからない仮の市場だからと取り引きを見送っている生産者や流通業者が大勢いるとしています。

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う~ん。どちらの言っていることもそれなりに分がありそう。難しいですね。

太田記者

専門家に話を聞くと、コメの生産調整がなくなった今だからこそ、価格や生産のひとつのモノサシとして先物取引があってもいいのではないかといいます。また、コメの輸出も増えています。輸出する場合、コメの価格を海外で決められるようになるのはよくなく、日本国内でみんなが参考にする先物価格というのもあっていいというんですね。

なるほど。取引量が増えるとチャンスはありそうですが、テスト生扱い、ちょっと長すぎる気もしますが・・・。

太田記者

今回、テストでの取引を認めるにあたって、自民党から農林水産省に「これ以上の延長は行わない」という申し入れが行われました。この言葉どおりならこれからの2年が最後のチャンスというわけです。大阪堂島商品取引所は取引量の9割以上がコメの先物のため、ちゃんとした取引が認められるかどうかは死活問題です。ふだん、私たちの生活には縁遠いコメの先物価格ですが、コメの価格安定につながる市場になるのか、ちょっと知っておいていい話かなと思います。