NEW2019年08月06日

為替操作国って何?

アメリカ政府は、中国が自国の輸出に有利になるよう人民元を意図的に安く誘導しているとして、「為替操作国」に認定したと発表しました。でも為替を操作するってどういうこと?なぜアメリカは、そんな認定ができるの?

「為替操作国」ということばをニュースで聞いて驚きました。どういう意味なんですか?

「為替操作国」とは、自国の輸出に有利になるように通貨安へと意図的に誘導している国のこと。

自国通貨を売って、ほかの国の通貨を買うことで、為替相場に介入しているか、中央銀行の金融政策をコントロールしているか、などが判断材料。G20サミットの首脳宣言にも、為替操作は「避けるべきだ」という文言は盛り込まれ、国際的にも問題視されている。

各国が通貨安を競い合うのは、望ましいことではない、というのはコンセンサス。ただ今回の認定は、アメリカが自分の国の法律に基づいて、アメリカ独自の判断で決めた。

突然、アメリカが認定を決めて、驚きが広がったけど、背景には、5日、中国・上海の外国為替市場で、およそ11年ぶりに1ドル=7人民元台の元安・ドル高水準をつけたことがありそう。

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中国では、中国人民銀行が通貨・人民元と外国通貨との取り引きの目安となるレートを、「基準値」として設定、発表している。アメリカ財務省は、中国が最近、自国の輸出に有利になるよう人民元を安く誘導し、為替操作はしないとする国際ルールを守っていないと、中国を批判している。

アメリカが中国を為替操作国に認定するのは1994年以来、25年ぶりのことなの。

アメリカは、どんな基準で認定しているんですか?

アメリカ政府は、アメリカの貿易相手国の為替政策を分析した報告書を年に2回、公表している。分析の結果、問題ある国を為替操作国に認定する仕組み。認定は主に次のような基準に照らし合わせて行われている。

▽アメリカに対する貿易黒字が200億ドル以上=日本円でおよそ2兆円以上の国であるかどうか。

▽一方的な為替介入による外貨の購入を1年間で6か月以上、繰り返し行い、この金額がGDP=国内総生産の2%以上となる国かどうか。

▽経常黒字がGDP比で2%以上の国に当たるかどうか。

このうち2つに該当すれば「監視リスト」の対象に、3つすべてに該当すれば「為替操作国」に認定される可能性がある。

アメリカ財務省がことし5月に公表した最新の報告書では、中国は日本などとともに「監視リスト」の対象になっていたけど、「為替操作国」ではなかったの。

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アメリカ財務省が今回、具体的にどのようなプロセスを経て為替操作国の認定に踏み切ったのかは明らかにしていない。

仕組み上、今後、アメリカ政府は、中国に、為替レートの透明性を高めるよう求め、改善が見られなければ、輸入品にかける関税を引き上げる措置をとったりすることができるの。

米中の対立がさらに深まるのではないかと心配です。この先の見通しはどうなっているんでしょうか。

トランプ大統領は今月1日に、中国からの輸入品に追加の関税をかけることを表明した。トランプ大統領は、中国が、これに対抗するため、自国の輸出に有利になる人民元安に誘導したという疑いを強めている。市場関係者の間でも、中国の当局は、輸出企業を下支えするために一定程度の元安を容認しているという見方も出ている。

これに対して中国は意図的に元安に誘導することはないと強く否定し、アメリカに反発している。両国の対立がさらに深まり、ますます解決が難しくなっていると、関係者に警戒が広がっているの。