NEW2019年08月02日

韓国優遇除外でどうなる?

日本と韓国の対立が深まっています。出口が全く見えないことに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。政府は2日の閣議で、輸出管理の優遇対象国から韓国を除外することを正式に決めました。これに韓国は強く反発しています。経済でも安全保障でも深いつながりがある日本と韓国。両国の関係はこの先どうなるのでしょうか。

今回の政府の決定を前にアメリカが日韓両国に関係改善を促す構えを示したと言われていましたが、それでも閣議決定で韓国を優遇対象国から除外した理由は何だったのでしょう。

ひと言でいうと韓国側の貿易管理の体制が信頼できなくなったということ。経済産業省は主に4つの理由を挙げている。

① 半導体などの原材料の管理で「不適切な事案」があったこと。

② 貿易管理の体制が不十分なこと。例えば担当職員の数が日本には 100人以上いるのに、経済産業省によると韓国側には十数人しかいない。

③ 通常兵器への転用を防ぐための規制がしっかりしていないこと。

④ 日韓当局間の対話が不十分なこと。

日本側が繰り返し対話の場を設けるよう呼びかけているのに韓国側が応じなかった。こうした問題がある以上、安全保障上必要な輸出管理の見直しだと説明している。

そしてもう1つ。優遇対象国から韓国を除外する政令を改正するにあたって、経済産業省が募集した一般からの意見が4万666件にのぼったんだけど「おおむね賛成」だとする意見が95%を超えた一方で「おおむね反対」だとする意見は1%だったんだ。この結果も閣議決定の判断につながったということ。

韓国は8月28日に優遇対象国から外れるんですね。実際に外れるとどうなるんですか?

これまでは、半導体製造装置や工作機械、炭素繊維など軍事転用のおそれが高いとして厳しく規制されている品目を韓国に輸出するときには、一度輸出許可を得れば3年間は個別の申請が免除されていた。それが原則として、輸出の契約ごとに個別の許可が必要となる。

このほか食料や木材などを除く幅広い品目についても、経済産業省が兵器に使われるおそれがあると判断した場合には、個別の許可が必要になる可能性があるとしているよ。

対象が広がると日本企業への影響が心配されるけど、どうなんですか?

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世耕経済産業大臣は、今回の措置が日本企業に与える影響について「基本的には発生しないと思っている。今回の措置で影響があるのであれば、(優遇対象ではない)台湾やASEAN諸国とのサプライチェーンも成立しないことになる」と述べている。実際、輸出管理の優遇対象国から韓国が除外されてもその影響は限定的だとみる企業も多い。

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三菱ケミカルホールディングスの伊達英文 常務は、「例えば炭素繊維は輸出管理の対象になるが、手続きのため出荷までの時間がかかることはあっても、大きな影響が出るとは思っていない」と述べている。

同じく炭素繊維を手がける帝人の園部芳久 専務は「炭素繊維は戦略物質に指定されており、もともと非常に厳格に最終ユーザーまで確認している。韓国に対する輸出も多くはないので、影響はないとみている」と話している。

また、半導体製造装置を扱う東京エレクトロンの笹川謙 経理部長は「優遇対象国から外れても、適正なプロセスを経て、これまで同様に出荷できると認識している。現実に、優遇対象ではない中国や台湾にもこれまで相当な量の装置を納期にあわせて納入してきたので、特に大きな懸念はない」としている。

そうは言っても製品を輸出する企業の中には作業の負担が増えるところもありそうですね。

その可能性はありそう。ただし、輸出管理を厳格に行っている企業向けには、例外として、個別ではなく包括的な許可で手続きを簡略化する制度がある。

優遇対象国から外れても韓国への輸出はアジアの他の国などとおおむね同じ扱いになるため、政府や企業の間では実際の貿易への影響は限定的だという見方もあるんだよ。

世耕経済産業大臣は、禁輸措置ではないと繰り返し説明している。一方、日本企業への影響としては韓国で日本企業の商品をボイコットする動きが出ているよね。現地で製品を販売している企業はこうした動きがどこまで広がるのか見守っている状況。

今回の措置について韓国は、太平洋戦争中の「徴用」をめぐる韓国最高裁判所の判決に対する報復だとして強く反発していますね。このまま関係悪化が長期化するとお互いにとってよくないはず。解決に向けて何が必要ですか?

世耕経済産業大臣は、信頼して対話できる環境を整える責任は韓国にあるとして、誠意ある対応を期待したいとしている。そして、7月12日の日韓の事務レベルの会合で、現場の当事者による合意に反して韓国側が発表したことをまず訂正すべきだとしている。

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これに対し、韓国のムン・ジェイン(文在寅)大統領は、今回の日本の措置について「事態をよりいっそう悪化させる非常に無謀な決定で、今後の事態の責任はすべて日本政府にあるという点を明確に警告する。加害者の日本がぬすっとたけだけしく大声をあげている状況を決して座視することはできない」と強く非難している。

このように日本と韓国の主張は政治や役所のレベルでは平行線をたどり折り合うことは難しいとみられている。ではどうすればよいのか。

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日韓関係に詳しい静岡県立大学の奥薗秀樹 准教授は、日韓の経済関係が相互に依存し合っていることをふまえ、「日韓双方の経済界が連携して共同でアクションを起こし、政治が動きやすい環境を作ることを期待したい」と述べている。

経済界には、今回の措置には理解を示しながらもなんとかして解決の糸口を見つけてほしいという声も多い。日韓の関係が正常化に向かうよう経済界の動きにも注目したいね。