NEW2019年07月01日

韓国への輸出規制って、どういうこと?

政府は、韓国に対する輸出の優遇措置を見直し、半導体の製造などに使われる原材料について輸出の規制を強化します。自由貿易の大切さを訴えていた日本の方針としては違和感のある政策ですね。

どうして韓国に厳しい対応をとることになったのでしょうか。

G20大阪サミットで各国首脳が「自由貿易の原則を確認できた」と合意して政府も成果を強調していましたけど、サミットが終わったあとに韓国への輸出の規制を強化するというのは驚きましたね。

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そうね。日本としては異例の措置となるけど、その背景には太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題などで日韓関係がぎくしゃくしていることがあると言われているよ。

この問題で日本政府は第三国を交えた仲裁委員会を開くよう求めているんだけど、韓国は応じていない。だけど、その対抗措置をとったわけではないし、自由貿易に逆行するものでもないというのが日本政府の立場。
でも、「日韓の信頼関係が著しく損なわれたと言わざるを得ない状況。信頼関係のもと、輸出管理に取り組むことが困難になっている」とも言っているの。さらに「韓国に関連する輸出管理をめぐり不適切な事案が発生した」とも。

この「不適切な事案」が何なのか政府は明らかにしていないけどだからこそ「徴用」をめぐる問題などが影響しているという見方もあるよ。

信頼関係が損なわれたというのは、ずいぶん厳しい表現ですね。そもそも規制の強化ってどんなことをするんですか?

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2つの規制が厳しくなる。

まず、韓国に対して、安全保障上の友好国に与えている輸出管理の優遇措置を見直すんだ。
日本が優遇措置を与えている国は「ホワイト国」と呼ばれている。外国為替法に基づいて、相手国との輸出が適切に管理できているとする国を経済産業省が政令で指定している。
「ホワイト国」は現在、アメリカやイギリスなど27か国にのぼっている。「ホワイト国」に指定されれば、安全保障上の脅威になるような先端技術などを輸出するときに優遇措置を受けて手続きが簡単になる。

韓国は2004年に指定されたんだけど、経済産業省は政令を改正して韓国を外す方針で7月24日まで一般に意見を募ることにしている。
日本はこれまでホワイト国の指定を見直したことはなく、韓国が除外されれば、初めてのケースとなるんだ。

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もう1つ、半導体や軍需物資の製造などに使われる3品目の原材料を輸出するときの規制が強化される。
半導体の基板の洗浄に使われる「フッ化水素」。テレビやスマートフォン向けの有機ELディスプレーなどに使われる「フッ化ポリイミド」。それに半導体の基板に塗る感光材「レジスト」の3品目。いずれも軍需物資の製造にも使うこともできる材料だ。

経済産業省は手続きを簡素化していた、これまでの韓国への優遇措置を改め、今月4日からは輸出ごとに申請が必要となる。

3品目はいずれも世界で日本企業のシェアが高く、中には9割にのぼるものもある。あのサムスン電子やLG電子など韓国の大手メーカーも使っているんだって。

輸出ごとに日本政府の審査や許可が必要になれば手続きに時間がかかることになるけど手続きには90日ほどかかるそうなんだ。韓国メーカーの生産に影響がおよぶことになりそうだね。

日韓の経済関係がさらに冷え込むことになるのでは?心配ですね。

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実際に韓国が「ホワイト国」から除外されると、今回の3品目だけでなく、工作機械や特殊な金属などほかの輸出品目にも規制強化の対象が広がることになる。
このため韓国企業を取り引きの相手としてきた日本の企業への影響も懸念されるんだ。
韓国への規制が長期化すれば、日本企業のビジネスの機会が縮小することにもなりかねないからね。

ただ、経済界には、韓国に対応を促すやむにやまれぬ措置だとして日本政府の対応に理解を示す声がでている。

日本商工会議所の三村会頭は「日韓関係がこう着するなかで、何とかよい方向に動かしたいという配慮から取られた措置だろう。これをきっかけに両国政府が話し合いを開始することを強く期待している」と話している。

発言の裏には日韓関係の正常化を一刻も早く実現してほしいという思いもあるのだと思う。

一方の韓国は「経済的な報復措置だ」と反発し、WTO=世界貿易機関への提訴も辞さない考えを明らかにしているんだ。

外交上の難しい問題を抱える両国だけど、これ以上事態が悪くならないようにしてほしい。多くの経済関係者がこう願っているよ。