あと100日で大丈夫?消費税率10%
「軽減税率にレジは対応していますか?」
小売店などに消費税率10%への引き上げの準備を呼びかける広告を、最近テレビで目にする機会が増えていませんか?それもそのはず、増税の実施まで残り100日を切っているのです。準備は間に合うのでしょうか。経済部で消費税の取材を担当している影圭太記者に聞いてみます。
今回の消費税率の引き上げは、小売店や飲食店の人たちの準備が大変だと聞くんですが。
そうですね。今までにはなかった新しい制度が導入されるから大変なんです。特に影響が大きいのが「軽減税率」と「キャッシュレス決済に対するポイント還元策」の2つ。
軽減税率は酒類以外の飲食料品の税率を8%に据え置く制度で、ポイント還元策はクレジットカードなど現金を使わない決済で中小店舗で買い物をした人に対し、あとで買い物に使えるポイントを還元するという制度です。
どちらも小売店や飲食店の人たちが、さまざまな準備を求められています。例えば8%と10%の両方の税率に対応できるレジに買い替えたり、クレジットカード用の決済端末を導入したりすることが必要で、手間やお金がかかるんです。
となると準備は進んでいないんですか?
準備万端!とは言えない状況だと思います。政府は、小売店などの負担を軽減するため、レジの買い替えにかかる費用を支援する補助金を用意しているんですが、5月末の時点で店側からの申請件数はおよそ10万7000件で、想定のおよそ35%にとどまっています。
これまで増税が2度延期されたこともあって「今回ももしかしたら?」とどこかで思ってしまい、準備を進められないという事業者もいまだに多いと言います。
制度への理解が進んでいるとも言えません。6月20日、神奈川県大和市などの4つの商工会議所がキャッシュレス決済の相談会を開きました。今の段階になっても、小売店から「どう対応していいかわからない」といった声が相次いでいたからなんです。
準備がもし間に合わないと、買い物する時にトラブルになることも?
ただでさえ軽減税率の制度は複雑ですから、準備が十分ではないと会計の際に何でこの商品がこの税率?と混乱が起こる可能性はあります。
影響はそれだけにとどまりません。キャッシュレスのポイント還元策は、増税による消費の落ち込みを抑えようというねらいがあるのですが、思ったほど効果が出ないという問題も出てきます。キャッシュレス決済ができる店が増えないとポイント還元を受けられる人も限られてしまうからです。
第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「政府は『今までにない景気対策を打っているから景気は大丈夫だ』としているが、店の準備が間に合わなければ効果が不十分になってしまう」と警鐘を鳴らしています。
あと3か月余りで政府はどうやって準備を促していくんでしょう?
軽減税率については、各地で業界団体や店を対象にした説明会を開いています。さらに6月下旬まで、全国8か所で「軽減税率・キャッシュレス対応推進フェア」と銘打った大規模なイベントを行っていて、レジや決済端末を展示して導入を呼びかけています。
10月1日まで残された時間は多くありません。政府は「リーマンショックのような事態が起こらないかぎり、10月に増税する」と繰り返し示していますが、延期が「2度あることは3度ある」と受け取られないようにするはどうすればいいのか。
もう一段、踏み込んで考えなくてはいけない時期にきているのではないでしょうか。
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