NEW2019年05月31日

紙の通帳 なくなるの?

なじみ深い銀行の預金通帳の形も、変わっていきそうです。三菱UFJ銀行は、6月10日から、新規に口座を開設する際、原則として紙の預金通帳を発行せず、パソコンやスマホで使う「デジタル通帳」を利用してもらうことを決めました。紙の通帳には、意外に知られていない銀行の負担もあるようです。

携帯電話の料金明細などは、私も紙の郵送をやめてネット上で確認するようにしています。

同じようなイメージね。三菱UFJは、希望があれば紙の通帳をこれまでどおり無料で発行するけど、特に希望がなければ、「Eco通帳」と呼ぶネット上のデジタル通帳を利用してもらう。ネットバンキングが普及している上、10年分の入出金の記録を確認できるようにするなど、デジタル通帳の機能を強化していて、紙の通帳と比べても利便性は落ちないと考えたの。

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紙の通帳が減っていくと、銀行の負担も減るんですか。

実は紙の通帳を発行すると、1口座当たり毎年200円の印紙税がかかるの。預金者ではなく、銀行が支払う。三菱UFJの場合、個人や法人の顧客が3500万いて、毎年およそ80億円の税金を負担しているとのこと。国税庁によると、業界全体で支払っている印紙税は、毎年約700億円に上るそう。

利用者が紙の通帳を1冊持ち続けていると、銀行には毎年200円の費用が発生するんですか。知りませんでした。業界全体で700億円と聞くと、無視できない金額ですね。

長引く低金利で銀行の収益環境は厳しさを増すばかりだから、銀行にとってデジタル化によるコスト削減は欠かせない取り組み。三菱UFJ以外の銀行も、使い勝手を良くすることで、デジタル通帳への誘導を図っている。

そもそも欧米の銀行では、口座の維持管理手数料を取るのが一般的。日本の銀行の中にも、「口座の維持管理手数料を日本でも取れるか?」「通帳を有料にすることはできるか?」水面下でこんな研究をする動きはある。でも、まだ広く一般に受け入れられるとまで判断する銀行は出ていない。

最近の銀行は、店舗網を見直したり、ATMの共同化に動いたりと、時代への対応を迫られていますね。紙の通帳、いつかは姿を消すんでしょうか。

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否定はできないわね。日本経済が右肩上がりで成長していたころは、個人から預金を集められるだけ集めて企業に融資すれば利ざやが稼げたから、個人向けのサービスに少々コストがかかろうと、全く気にならなかった。ところが今は歴史的な金余りと低金利で、銀行にとって優良な貸し出し先を見つけたり、利ざやを稼いだりするのが苦労する状況。コストをかけてまでしゃにむに預金を集める時代ではなくなっている。

一方で銀行は、お金のやり取りの基盤を担う社会インフラとしての公的な側面も持っている。デジタルデータの取り扱いに不慣れな人もいるし、デジタル通帳だと相続の際などに不安を感じる人もいる。だからこそ、効率化一辺倒ではなく、安心・安全・便利なサービスの模索を今後も続けてほしいわね。